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第5話

     薬局に出掛けとあるものを購入した山茶花は、それらをレジに出した時の「吸血鬼がなんでこんなもの買ってるんだ」と言わんばかりのヒトの顔を忘れはしないと心に決めながら、番を部屋へ呼び出した。 「お呼びですか、山茶花さま」 「麻生。早速で悪いが、上の服を脱いでくれるか?」 「上の服を、ですか?」 「ああ、脱いでくれるか?」   ニコニコと笑いながら言えば、番は恥ずかしそうに頬を染めつつ、服を脱ぐ。  番の服は毎朝山茶花が選んでおり、今日の服はチャイナだ。首元の留め具にもたつきながらも半裸になった番はてれてれと恥ずかしそうだ。 「さ、こっちにおいで麻生」  ぽむぽむとソファの座面を叩き番を促す。山茶花の言うことには素直に従う番は何をされるかなど全く考えることなく大人しくソファに腰掛けた。  薬局の袋から山茶花が取り出したのは絆創膏で、番はこてんっと首を傾げた。  造血鬼の体液には治癒の効果があるため日常的に造血鬼の血を摂取する吸血鬼には怪我や病気は皆無だ。だが造血鬼は表面的な怪我は己の体液で治すことはできるが体内の疾患などを治癒することができない。 「山茶花さま、それは何に使うのですか? 怪我をなされたのですか?」 「いいや。これはな、怪我に使う以外にも用途があるんだよ」  ネットが言うには。  山茶花は箱から取り出した一枚の絆創膏を持ちニンマリと笑った。 「今日から麻生のこの可愛い乳首を開発していこうと思う」 「……ちくびを、かいはつ……?」  思考停止。  固まった番をよそに山茶花はにまぁと笑い絆創膏のガーゼを露出させ、それを番の乳首にあてた。 「え、え、えっ?」 「こら、じっとしてろ麻生」 「は、はい」  ぺたり、と乳首を覆う絆創膏。  口をかぱっと開けたまま貼られた絆創膏を凝視する番。続いてもう一枚。 「風呂に入る前にはとってやる。でも、自分でとることは許さない。いいな? 麻生」 「は、はい……」  すでにムズムズとした感じがしているのか番は何かを我慢するような顔をしながら、従順に頷いた。  だがやはりムズムズとするのか、自分の乳首に指を這わせ、カリカリと引っ掻き始めた。山茶花は笑いながらその手を優しく握り「引っ掻いたらダメだろう?」と諭す。 「でも、なんだか……違和感があります」 「いいんだよ、それで。大丈夫、悪いことはしない」  絆創膏の、ガーゼの上からふにと番の乳首を押し、山茶花はニマニマと笑った。     * * * *     「サンザカ、うちの息子に何してるの」 「口の軽い番ですこと」  電話の向こう、珍しく怒ったような響きの声音の彩入に山茶花は詫びれる様子はない。 「可愛い番を、俺好みにしているだけですよ」 「――サンザカはあの子を伴侶にしたいのかい?」  彩入の淡々とした問いに山茶花は口角をあげる。 「したい、と言ったら……彩入さんはあの子を俺にくれますか?」 「…………」  山茶花は番を伴侶にする気だ、するつもりしかない。こうして彩入に訊いてはいるが、断られても伴侶にする。  番だからなのか、初恋の個の子どもだからか、そこまではっきりとしてはいないが、山茶花は番を手放す気はなかった。 「あの子を大切にしてくれるのであれば、許容するよ」 「このうえなく。ぬかりなく」 「……はぁ―……」  遠くから魚月の「彩入さん?」という声が聞こえる。大きなため息の通り、彩入は項垂れたのかもしれない。 「――もしもし、山茶花さん?」 「ああ、サカナ。彩入さんにも言ったけど、麻生は伴侶にするから」 「――はぁ? ちょ、は? 山茶花さ」  魚月は彩入以上に面倒くさそうだ、さっさと電話を切る。  誕生日祝いに欲しいものは何かと問われ番は携帯端末と答えた。それを買い与えたはいいが、すぐに親に報告されてはかなわない。 控えていた従者に麻生を呼ぶように頼んだ。    

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