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第2話

 俺よりずっと広い背中を睨みつける。いそいそと悪びれもせず遅刻した幼馴染は自分の席へ座った。  遅刻の理由はなんだろう、それはこのクラスの皆が思っていることだった。どう見ても作り話の遅刻理由をいつからか皆が面白がるようになった。悔しいことに、俺もその一人だ。  何でもできるくせに、笑いのセンスまであるこいつが憎い。腕か、足か、脳みそか。どこを食ったらその能力奪えるんだよ。 「ちゃんと遅刻しないように家を出たんですけどね? 玄関のドア開けたら知らない人がいて……なんか新しい宗教の勧誘みたいで、何か辛いことはないかって聞くんですよ。母さんみたいな年齢の女性を邪険になんて出来ないでしょう?」  そこは邪険にしろよ。ってかお前そういうタイプじゃないじゃん。  人当たりよく見えるけど、昔っから乱暴だし嫌いなものはとことん排除すんじゃん。宗教の勧誘なんて恐ろしいもの、まともに話し聞いてんじゃないよって、これどこからどこまでが本当だ……?  クラスの皆が聞き入って、先生の顔には同情の色すら見える。そりゃ宗教の勧誘は怖いけど、多分かなり嘘が含まれてる。真実なんて爪の欠片程度だぞ。可哀想がるな、こいつはとんだペテン師だ。 「だから少し話をして、そしたら今度はその人の話を聞くことになって……泣き出すから本当に大変で。駅まで送ってあげましたよ、帰り際に宗教のパンフレットゴミ箱に捨てて俺に電話番号聞いてきたんで怖くなって逃げてきたんですけど……」 「そう、それは大変だったわね。本当に危ない時は警察を呼ばなくちゃだめよ。もう、今月本当に遅刻が多いわよ。明日はちゃんと来ること、もう見過ごせないんだから」  先生その言葉はもう今月に入って五回目です。もうだめ、もう無理って何回繰り返すんですか。賄賂でも受け取ってるんですか。  ただでさえ遅れていたホームルームは一時間目に食い込んでいる。こいつの遅刻うんぬんで授業の時間が十分も消えてなくなった。授業が少しでも減るのは俺だって嬉しいけれど、こいつがこうやってワガママを通すのは一時間目が担任の日だけだって誰も気づいてないのが腹立つ。  遅刻することだってきっと何も悪いと思ってないだろう、人の授業時間を奪うことだって。  相手を選んで好き放題やってるところが気に入らない。俺っていう地味な幼馴染がいることだってきっと優しい自分アピールのひとつに過ぎない。

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