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第8話 そして現在

 一週間前、事務所で電話を受けた相談員の服部さんが、切なそうな顔で依頼の内容を話してくれた。 叔父と甥の二人暮らしの家庭。 叔父は余命宣告され、妹が暮らす田舎の終末医療の病院に移るという事だった。 他に家族もいるらしかったが、依頼は妹がしてきたという。 一緒に暮らす甥が、離れたがらない場合は、車に同乗させて連れてきても良いとの事。 その言葉通り、甥であるヨシヒサくんは、叔父さんの手を握り締めたまま離さなかったので同乗してもらった。 あの日、母親の顔をじっと見ていた目で、今は自分の叔父さんを見つめている。 前に感じた違和感の様なものが、オレの中にまたふつふつと湧いてきた。 やせ細り見る影は無いが、あの日見た男性は、オレと10歳も離れていなかっただろう。なのにこうしてみると、老人の様にも見える。 病気が人の姿を変えるのだろうか。実年齢より20歳ぐらいは老けて見える。

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