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第11話 彼らの関係性

 カーブを切りながらどんどんと坂道を登って行く。すると目の前には高原が広がり、そこに咲く一面の花ばなを目にした途端、重苦しい車内の空気も吹き飛んでしまった様で。 「あの丘の向こうに建っているのが、妹さんのお宅ですか?ステキな白いおうちですね。」 そう言ったのは、運転をする長野さん。 そんなに田舎ではないんだけれど、景色を見る限りでは心が洗われるような感動を覚えた。 色とりどりの花に囲まれて建つ白いおうち。 それだけで、ドラマに出てきそうだった。 「先に妹さんのお宅に寄って、そのあと病院へ参りますから。」 「はい、お願いします。」 長野さんの言葉に、頭を傾けて答える男性。その横では、ヨシヒサくんが無言のままだった。 家の前に着くと、一旦ストレッチャーを外へと降ろす。 玄関前で待っていたのは、まだ2~3歳の子供を抱いた小柄な女性で、腕に抱かれた子供は活発そうに足をぶらんぶらんとさせていた。 「こんにちは。」と挨拶をすると、 「ご苦労様です。」 頭を下げて女性がこちらに微笑んだ。子供も同じように、笑いながら細い目を三日月の様にしている。 妹さんはストレッチャーに乗せられた兄に、 「疲れたんじゃない?大丈夫?!」と声をかける。 男性は、ううん、と首を振っていた。 こうして並んで見ると、二人は背格好や鼻筋の通ったところが似ている。 亡くなった長女だけが、二重瞼のはっきりした顔だちで、今のヨシヒサくんに似ていた気がする。 「こんにちは、ここまで有難うね。 疲れなかった?」と、妹さんがヨシヒサくんに話しかけると抱いていた子供を下ろしたが、その途端 「にぃに!」と、子供がヨシヒサくんの足にしがみつき抱っこをせがんだ。 オレは少し眺める。彼はちゃんと子供を抱きかかえてやり、そんな事でヨシヒサくんの気持ちが落ち着けばいいんだが、と思った。 「僕は大丈夫です。隆哉さんは・・・・」 そう言って叔父さんの顔を見る。 「明子さん、僕も一緒に病院へ行きますから。」 子供をまた彼女に預けると、ヨシヒサくんが言う。 「・・・それは・・・困る。」 「どうして?!僕だって家族だよ!なんで僕だけ家に戻されるんだ!あんなとこ・・・」 「ミク・・・・お願い、分かって!兄さんの奥さんと子供が、こっちで最後を看取りたいって。ミクはずっと兄さんを独り占めしてきたでしょう?」 「・・・・・・・・」

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