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第12話 厳しい言葉

 拳を強く握り締めると、彼は唇を噛みしめる。 少し、空気が変わった気がした。この叔父さんは独身ではなかったんだ?! 初めて知る家族の内情。 病院への搬送を聞いてはいたが、そこで待つ家族がいる事は知らなかった。 オレたちの仕事は、時として家族が世間に隠していることを知ってしまう場合もある。 もちろん、守秘義務があるから口外はしないが・・・ この人たちの関係も複雑な気がした。 「そろそろ病院の方へ向かいますか?時間が近づいてきましたから。」 長野さんがそう言って、ストレッチャーを移動しようとした。 「待って!!・・・隆哉さん・・・僕・・・・」 駆け寄るヨシヒサくんを見て、オレと長野さんに緊張が走る。 まさか、ここで騒動を起こす気じゃないかと.........。 「ミクツ!! ここで待ちなさいツ。病院にはボクの奥さんと子供が待ってるんだ。きみはこの人たちが迎えに来るまで明子の所で待つんだ。・・・いいね?!」 「・・・・・」 まるで最後の別れを告げるように、厳しい口調で言われたヨシヒサくんは言葉を返せずにいた。 オレと長野さんは、この人たちの関係性も分からないままストレッチャーに手をかけて呆気にとられるが、病院へ連絡した到着時刻が近づいてくるから焦ってしまう。 それは、時間を守るのもオレたちに課せられた仕事だったから.....。

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