41 / 153
第41話 引かないでよ、って・・
- コレの事か。
シャンプーを泡立てながら、ゴシゴシと頭を擦ってやるが、時々背中にも目が行く。
古い傷。事故で出来たのかな・・・?
考えながら洗っていると、不意にヨシヒサくんが言った。
「背中、気持ち悪いでしょ?!」
「・・・え?・・・や、別に・・・。」
見ていた事に気付かれて焦ったが、そういうしかなくて、曖昧な返事をする。
オレに「引かないでよ」と言った意味が分かった。
これは、女の子が見たらちょっとショックかもな、と思えるほどの傷で・・・
どうして怪我をしたのか聞くのも躊躇する程だった。
「かゆいところあったら言って。」
「大丈夫、凄くキモチイイ。3日ぶりに頭洗えた。」
そう言って、ヨシヒサくんはうつむいたまま髪の毛の滴を片手で絞った。
オレは、時間が来たのでバスタオルでざっと拭いてやるが、その後はカレに渡して風呂場から出る。
中途半端で悪いと思ったが、これ以上時間は取れないし、会社に戻らないといけない。
ついでにシャワーを浴びると言ったヨシヒサくんをおいて、オレは藤谷家を後にした。
住宅街を抜けて広い道に出ると、ゆっくりと車を走らせたが、目に焼き付いた背中の傷が思い出されて胸がざわざわしてくる。
・・・・アイツには、会うたびに驚かされる事ばかりだな・・・・
ともだちにシェアしよう!