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第42話 ナンバーワン?
車を置いて事務所に着くと、ドアの前で帰宅する高木さんと入れ違いになった。
「お疲れ様です。」
「あ、お疲れ!・・・うちのナンバーワンになってよ!?」
また変な事を口走りながら、ドアをくぐると嬉しそうに帰って行く。
- お疲れ様でした。。。。
高木さんの後ろ姿に心で声を掛けると、首をすくめて事務所に入る。
「おぅ、お疲れさん!どうだった腕の怪我は。」
そう言ったのは、ベテランで今は指導係をしている江口さんだった。
「はい、全治2か月らしいです。医者がオレにも伝えるもんだから・・・なんか身内だと思ったらしくって。」
「へえ、そうなんだ?!」
「あの、仕事で付き添ってますって、伝えてもいいんですよね?」
気になったから江口さんに聞いてみたが、少し思案しながら「いいんじゃない?もしダメなら先に言ってくれると思うよ。たまに恥ずかしいっていう人がいるけどさ。」
「そうですか。だったら、先に患者さんには聞いてみた方がいいですね。もしかしたら身内の様に思われたい人もいるかもしれないし・・・」
お年寄りの人は、たまにだけど、オレの事を「孫」と紹介する人もいて、きっと願望なんだろうと思う。本当は、身内の誰かに付き添ってもらいたいんだ。でも出来なくて.......。
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