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第44話 不憫だな。

  虐待と聞かされてなんとなく分かった気がした。 「それがわかって、叔父さんは自分の姉さんを病院へ入れなきゃって思ったんだよ。甥っ子が殺されでもしたら大変だもんな。」 「・・・はぁ・・・・そうだったんですか。・・・ビックリ、ですね・・・。」 それしか言いようがない。虐待って言葉、オレは施設にいた頃イヤと言う程耳にしていた。 あそこは、ワケあって親と引き離された子供が多かったから。 職員が陰で話しているのを聞いた事がある。実の子供をケガさせる親がいるって事を始めて知ったオレは、周りの子供が不憫でならなかったけれど、どうする事も出来なかった。 あのヨシヒサくんがそんな目にあっていただなんて・・・ 「ここだけの話、内田くんは口が堅くて有名だから言ったんだ。長野くんには言うなよ?!」と、オレの肩をポンポンと叩くと、「じゃあ。」と言って帰っていった。 「あ、お疲れ様でした・・・・」 その姿を見ながら、またまた複雑な感情がオレの中に芽生える。 ヨシヒサくんにとっての叔父さんは、命の恩人だったのかな・・・。 あの日、母親の事をじっと見つめた瞳には何が映っていたんだろう。 自分を虐待していた母が、車いすに縛られてうめく姿をどんな気持ちで見ていたんだろうか・・・ そう思ったら、さっき目にした背中の傷が、瞼に浮かんできた。

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