44 / 153
第44話 不憫だな。
虐待と聞かされてなんとなく分かった気がした。
「それがわかって、叔父さんは自分の姉さんを病院へ入れなきゃって思ったんだよ。甥っ子が殺されでもしたら大変だもんな。」
「・・・はぁ・・・・そうだったんですか。・・・ビックリ、ですね・・・。」
それしか言いようがない。虐待って言葉、オレは施設にいた頃イヤと言う程耳にしていた。
あそこは、ワケあって親と引き離された子供が多かったから。
職員が陰で話しているのを聞いた事がある。実の子供をケガさせる親がいるって事を始めて知ったオレは、周りの子供が不憫でならなかったけれど、どうする事も出来なかった。
あのヨシヒサくんがそんな目にあっていただなんて・・・
「ここだけの話、内田くんは口が堅くて有名だから言ったんだ。長野くんには言うなよ?!」と、オレの肩をポンポンと叩くと、「じゃあ。」と言って帰っていった。
「あ、お疲れ様でした・・・・」
その姿を見ながら、またまた複雑な感情がオレの中に芽生える。
ヨシヒサくんにとっての叔父さんは、命の恩人だったのかな・・・。
あの日、母親の事をじっと見つめた瞳には何が映っていたんだろう。
自分を虐待していた母が、車いすに縛られてうめく姿をどんな気持ちで見ていたんだろうか・・・
そう思ったら、さっき目にした背中の傷が、瞼に浮かんできた。
ともだちにシェアしよう!