流行なんて分からないオレは、適当に商品を手にとっては値札を見ていた。薄給の身では、毎年買い換える余裕はないし、長く着られそうな無難な形に目がいってしまう。 「いらっしゃいませ。」 後ろで声がかかるが、振り向くのは躊躇した。 何故なら、店員にいろいろと説明されると、なんとなく断れず買う羽目になりそうだったから.....。 「彼女、一緒じゃないんですね！？」 オレの後ろで店員に言われ、ハッとした。 この声どこかで・・・・・・ ゆっくり振り返ると、目を疑った。 -　どうした・・・その頭。 「こんにちは。お久しぶりです。」 頭を下げた店員は、ゆっくり顔を上げるとオレを見て微笑む。 「ヨシヒサ、くん？！」 目の前の彼は、黒髪を茶色に染めて、ところどころ金色になっている部分もあって、あのヨシヒサくんとは思えない程ハデな服装をしていた。 「ここで、バイトしてるのか？」目を剥きながらも思わず聞いてしまう。 「うん、たまにね。知り合いの店だから、人がいないときの店番。・・・内田さんは？デートじゃなさそうだね。ひとり？」 「あ、ああ・・・一人で悪かったな。」 ちょっとムッとしてしまった。年下にバカにされたような気がして・・・ 「タッパあるしモテそうなのにね。意外とオクテなんだ？」 「お前ねぇ・・・」と、言いかけたが、店の中だと気づいて止めた。 こんな所で年下にからかわれ、余計に惨めな気持ちになる。