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第49話 素直なのか?

 オレは、勝手にヨシヒサくんを暗い子だと決めつけていた。 彼の纏う空気は、オレに昔の出来事を思い出させる。だから、余計にそう感じたのかも。 「こっち、・・・これに乗ってきたんだ。悪いな、軽自動車で。」 そう言ってカギを解除すると車に乗り込んだ。 「へ、ぇ・・・。てっきり身体が大きいから、デカイ車に乗ってるんだと思ってた。」 助手席に乗り込んで、ヨシヒサくんが言う。 オレの頭が天井に届きそうなので、クスッと笑いを堪えるが、オレと目が合えばついに堪えきれずに吹き出した。 「おいおい、失礼だろ・・・。」オレが言えば「ごめんなさい」と謝る。 案外、彼は素直な性格なのかもしれない。 というか、どこか大人になりきれていないんだろうな。 「ところで、本当に店の方は大丈夫なのか?ちゃんと他の店員に頼まなくてよかった?」 「大丈夫だよ。本当はもう一人いたんだ。奥に入ってただけで・・・」 「あ、そうなのか!・・・よかった、無人になったんじゃなくて。」ホッと胸を撫でおろしたオレ。それにしても、こんなに好き勝手に働いていて大丈夫なのか、と思った。 隣で屈託のない笑顔の彼を見ると、この前聞いた江口さんの言葉がウソのように思える。 確かに傷は負っていたんだけど、今の彼にはそんな事を感じさせる要素はなかった。 何処にでもいる、ごく普通の大学生。 少し違うのは、ちょっと顔が綺麗すぎるって事だけだ。 ほんの短い時間を過ごしただけなのに、オレはすっかりヨシヒサくんのペースに巻き込まれてしまったようだった。

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