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第50話 4度目の訪問

 「良かったらお茶でもどうですか?送ってもらったお礼に。」 藤谷家の前で車を停めたとき、ヨシヒサくんがそう言った。 ・・・オレはしばらく考える。ここで別れたら、もう会うことは無いだろうな、と思った。 元々、オレの仕事は特定の人としか関わらない。仕事以外で交友関係の薄いオレには、普段会って話すような友人も少ないし、ましてや、彼の様な若い青年と話す機会なんて皆無に等しかった。 「少しなら。」 そう言って車を駐車スペースへと移動させる。 4度目の訪問。 「内田さんはコーヒーですか?それとも紅茶?」 初めて通された居間には、立派な床の間があって、大きな花瓶や絵皿が飾られていた。 旧家の佇まいは、オレなんかがいる所じゃない様な気がするが、今さら帰る事も出来ない。 「コーヒーは・・・ゴメン、苦手で。」 と言ったオレに、「あっ、そうだった。あの時、俺にお茶を渡しちゃって困ってたよね。缶コーヒー手に持って呆然としちゃってたもん。」と言って笑う。 「・・・そう、あの時はマイッタ。」 「じゃあ、紅茶を入れます。少しお待ちください。あ、そこの障子開けると、中庭が見えるんだけど、雑草ぼうぼうで・・・開けないでね!」 「ああ、・・・」 わざわざ言わなくたって勝手に開けたりしないのに、と思ったが、そう云われてしまうと尚更気になってしまう。

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