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第55話 レベルが違う
黒い大きな瞳で上目遣いに見られると、オレの中でくすぶる何かがザワつく。
「そんな目で見るな。・・・オレはこんな広い所に住む気はないし、今のボロアパートですら家賃が厳しいんだ。金持ちの坊ちゃんに合わせられる生活レベルじゃないんだよ。」
本当の事だった。
貰った給料から家賃と食費、そのほかに奨学金も返さなきゃならない。
車の維持費やら保険代やら、社会人になって初めて知る出費の多い事。オレは、身寄りがいない分すべて自分で賄わないといけない。
こんな広い家の、たとえ一間にしろ、ボロアパートより高そうなところに住めるわけが無かった。
「悪いな、大学の坊ちゃん仲間とかいるだろ?そいつらに頼んでみろよ。」
オレはそういうと、足をスッと引いて掴んだ手から逃れた。そうして、ティーカップを手にすると、台所まで持っていく。
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