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第58話 長野さんの情報
「そういえば、内田くん藤谷さんとこに間借りしてるんだって?」
山岡さんが不思議そうに聞いてくる。
「そうなんです。変な巡り合わせっていうか、たまたま出会ったらそういう話になって。」
「人の縁なんて、どこでどうなるか分からないな。あの少年が、もう大学生で、お前の大家さんになるなんてさ!あの時は、思ってもみなかったよな。」
ひとり感慨深く言う山岡さんに、オレも「本当ですね。」と大きく頷いた。
段ボール箱10個ほどの荷物を持って、オレが藤谷家へ引っ越したのは一週間前。
あまりの荷物の少なさに、ヨシヒサくんがキョトンとしていた。
あ、・・・そうだった。あの日から、彼の事を名前で呼ぶときは、「ミク」と呼ぶように言われていたんだった。
どうしても、「ヨシヒサくん」と言われるのがキモイらしい。
「あそこって、あの辺一帯の土地を所有してるんだろ?確か、長野くんが言ってた。」
「・・・長野さん、どこからそういう情報を得るんですかねぇ?オレはそういうの知らなくて、互いの親の話とか全くしませんからね。分からないです。」
「そうなのか?・・・まあ、長野くんの話は半分ぐらいに聞いておこう。あの子が元気ならそれでいいし。」
山岡さんはそう言って自分の机に戻ると、今日の人員の配置を見直し始めた。
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