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第66話 帰れない・・・

 会社からの帰り道、特別用事もないのにコンビニへ寄ったオレは、雑誌をペラペラと立ち読みしながら時間をつぶしていた。 本当は腹も減っているし、この際何か食べて帰ろうかとも思ったが、食費を切り詰めていたから我慢する。 昼は、どうしても外食かコンビニ弁当になってしまい食費がかかる。 だから、晩ご飯だけは自炊していたが、今日に限っては帰るのを躊躇していた。 オレが見ていた事をミクは知らないけど、瞼に焼き付いたアイツのこじんまりとした尻の形が忘れられなくて、顔を見たら絶対変な態度をとってしまいそうだ。 それにあんな声で・・・・・ - そうだ、もしかしたらあの男と出掛けたかも・・・・ と思いつつ、オレは雑誌を元の位置に戻すと、朝のパンとスープの素を買ってコンビニを後にした。  重い足取りで玄関の前まで来ると、一旦足を止めゆっくりと深呼吸をした。 一応の決まりとして、カギは開けたら必ず閉める事になっているし、お互いに声は掛けないから戻っているのかどうかも分からない。 食事も自分の時間に合わせて食べるから一緒にすることもなかったし、言ってみたら一人暮らしと何も変わっていなかった。 それでも、そっとカギを開けて中に入ると、静かに廊下を歩き自分の部屋へ向かう。 家には誰もいない様で、耳を澄ましても物音がしない事にホッと胸を撫でおろした。 オレの中で、一つの家に住むという事は合宿の様な生活を想像していたんだけど・・・ 炊事係を決めたり、夜は一緒にテレビを見たりしゃべったり・・・ でも、俺たちの場合は全く違った。 ミクにとってのオレは、家の管理を手伝ってくれるだけの人間で、別に他の事を頼んだりはしてこない。オレが働いているし、時間的なすれ違いがあるからだとは思うが。

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