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第70話 買いかぶり

 二人で初めてする食事が、こんな簡単なもので申し訳ないが、オレは少し嬉しくなった。 「初めてだな、こうして飯を食うのは。もう一週間たつのにさ。」と言えば、 「そっか、一週間たつんだねぇ・・・あんまり顔見てなかったから、気付かなかったよ。内田さん仕事忙しそうなのに、自分でちゃんとご飯作ってて偉いよね。」 ミクがオレの作った納豆チャーハンをすくい乍ら言った。 「偉いって言われるのも、変な感じだな・・・オレは高校卒業してからずっと自炊してたから、これが普通だと思ってたんだけど。」 「へぇ、そうなんだ・・・・実家が遠いの? そう言えば内田さんの事何にも知らなかったっけ。」 今更ながらにミクが言うから可笑しくなった。 「そうだよ、普通は赤の他人とひとつ屋根の下で住むとか無いもんな。もし、オレが変な奴だったらどうするんだ?」と、聞いてみる。 氏素性も知れない者を簡単に同居人にしてしまうんだから、ミクは無謀なんだよ。 「う~ん、、、まあそうだけど、内田さんは隆哉さんが見込んだ人だから・・・内田さんになら付いて行っていいよって・・・。」 「・・・え・・・?」 隆哉さんの名前が出て、少し前の記憶をさかのぼる。確かに、オレにミクを気にかけてやってくれと言った。でも、それはあの後少しの間って事なんだろう。まさか一生なんてことは思ってない筈。 「そんな事を?・・・買いかぶり過ぎだな。オレはそんなに出来た人間じゃない。」 スープをすすりながら、目の前で嬉しそうに食べるミクの顔を見ていると、少し照れてしまう。 「隆哉さんの言う事は絶対なんだ。俺は隆哉さんのいうとおりにするの。内田さんが恐縮することは無いんだからね?!」 「・・・ああ。」 なぜか分からないけれど、そんな事を言われても自分の中で納得がいくはずもない。 - 言われた通りにするって・・・なんなんだよ。

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