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第72話 草刈りか…

 オレは別に男が好きな人種じゃないし、今まで全く気にもしてこなかったってのに、ミクが近くにいるだけで意識してしまう。かといって、別にあいつに何かしたい訳じゃない。 ただ、5年前に出会った少年が、謎の多い美青年になってオレの前に現れた。 偶然なのか、お互いに家族には恵まれず、何処か冷めた目で世の中を見ているような気がする。そこに興味を持っただけなのか、背中の傷を知ってしまったから、憐みの目で見てしまうのか分からないが.......。 畳の上に敷いた布団に躰を預けると、天井を見ながら考えた。 「入るよ!!」と言って、勢いよくふすまを開けて、荷物を手にしたミクが入って来る。 返事をする間も無いが、まあ、いいかと思い布団の上で躰を起こす。 あぐらをかいて座るオレの膝の上に、ミクが持ってきた荷物を乗せた。 「何?・・・」と聞くと 「明日、庭の草取りお願いします。これはツナギ。服が汚れたら悪いし、結構草の匂いも残るからね。コレ着てもらったらいいかと思ってさ。」 屈託のない目で、オレを見つめながら言うが、結局明日草刈りをしろって事だな・・・ その服を受け取ると、枕もとに置いて「わかった、ありがとう。適当な時間にするから、裏庭の入口に必要な道具とか置いといてくれよ。」と言った。 「9時にしようよ。二人で刈ったら早いと思うし、俺も手伝うからさ。」 ミクが言うので、「ああ。そうだな。」 オレは、ミクもやる気になったのかと嬉しくなる。あんなに気にも留めていなかった庭の雑草をオレと刈る気になったんだと......。 「一応サイズは185センチにしてもらったんだけど、合うよねえ。」 そう言ったから、枕もとのツナギを手に取ると立ち上がって体に当ててみる。 「ああ、大丈夫だ。もし小さくてもなんとかなるさ。わざわざ用意してくれて悪かったな。」 「いいって、ソレ知り合いから譲ってもらったやつだし。未使用だけどね。じゃあ、朝起こしてよね。おやすみ。」 「ああ、おやすみ。」 部屋を出るミクの姿を目で追いながら、少しだけ明日が楽しみになったオレは、もう一度ツナギを当ててみた。

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