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第80話 意識不明。
そろそろ頭がぼ~っとしてきた。
出るタイミングを完全に逃してしまい、ミクが出ると言うまで浸かっているつもりだったけれど、この辺で湯船から出ないとマズイな、と思う。
「もう、上がるから。」と言って、今度こそ浴槽の淵を持ってからだを起こす。
ザブンツ と、大きく波打ったお湯がミクにかかるが、それを気にする余裕がない。
目の前がぼんやりして、足がふらつくのを必死でこらえるとなんとか扉の所まで行ったが、そのまま膝から崩れ落ちた。
...........冷たい.........
口の中に流し込まれたのは水なのか、意識をしなくても、それが口から溢れる前にオレは自然と呑み込んでいく。
何度かそれが繰り返されると、ようやく意識がはっきりしてきて目が開いた。
「・・・」
「気が付いた?良かった~」
オレの目の前にペットボトルを片手に持ったミクの顔があって、すぐには言葉が出てこなかったが、助けられたのだと思った。
ここは風呂場の入口で、オレは床に横たわっていたが、さっき口にしたのはこの水か、と思って見る。でも、自分で飲めるはずはなくて・・・
「大丈夫?もう少し飲む?」
そういうと、ミクは自分でペットボトルの水を口に含んだ。
- あっ..............。
オレは一瞬で、ミクが口移しで飲ませてくれたことを悟る。
「ヤ、、、、大丈夫、自分で飲める・・・から。」
慌ててミクに手をかざすとそう言った。
ゴクリ、と喉を鳴らして呑み込むと「そう、じゃあ、はい。」と、手渡される水のボトル。オレは上体を起こすと、それをガブガブと飲み干す。
「ビックリしたよ。のぼせちゃったんだね?!」
背中に当てた手を離すと言うから「ああ、そうだな・・・」と答えた。
「それにしても、さすがだね!内田さん、怪我しない様に頭を庇いながら倒れてったよ!」
「・・・まぁ、本能で頭は庇ったんだろうな・・・」
「やっぱり仕事がら、かなぁ・・・」
「や、関係ないだろ。・・・・」
オレとミクの会話はそこで終わり、ゆっくり立ち上がると脱衣所へ行って座り込む。
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