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第83話 初恋、か・・・

 オレは、明子さんの所で隆哉さんと離れるとき、ミクが頬にキスをした事を鮮明に覚えていて、なんとなく予感はあったのかも。今聞いた言葉がなんとなくしっくりときた。 「子供の頃にはそういうのあるだろ。近い人にあこがれとか、恋心を持ったりさ。」 「そうなのかな・・・・。」 ミクが不思議そうに言うから、「そうだよ。よく、従姉に恋したりするって聞くだろ!」 昔友達に聞いた事を言ってやったが、実はオレには経験が無くて分からなかった。 それでも、「ああ、そうなのかな・・・」と、ミクは納得したようだ。 「昔さ、まだ隆哉さんが元気なころ、男の隆哉さんが初恋の人になったから、僕はおかしくなったんだって言っちゃったんだよね。・・・すごく困った顔されたっけ・・・。」 「そりゃあ、困るだろうな。」 なんとなく、そう言っているミクの姿が目に浮かぶ。きっと駄々をこねるように言ったんだろう。 「はあぁ・・・ホント、なんでこんな話してるんだろ。ごめんね、内田さんには関係ないのにさ。」 「いや、いいよ。何でも話してくれ。オレなんかが聞き役で申し訳ないけどな。」 「うん、ありがとう。・・・夕飯、もし作ってくれるんならテーブルに置いといて。少し寝てくるから、起きたら勝手に食べるし。」 「ああ、分かった。ラップして置いておくよ。」 オレがそう言って立ち上がると、ミクも同じように立ち上がって自分の部屋へと戻って行った。二人の距離が少しずつ近づくと、互いの深い部分が掘り起こされそうになる。でも、それが何を意味するのか、今はまだ分からなかった。

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