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第87話 親ってなんだ?
帰りの車の中で、先ほどの家族の事を長野さんと話すが、ふぅっと大きなため息をつきながら「内田君は優しいなぁ・・・まあ、俺もちょっと可哀想だなって思うけどさ、あの人たちは正直なだけだよ。」といって苦笑いをした。
「正直?」
「そう、・・・親ってさぁ、自分が頼りたい時にそこにいてくれればいいんだよ。自分が大人になって、一人で何もかもできるようになったら、もう面倒臭いだけ。あれこれ口出しされて、いつまでも親の威厳をかざしてくる。・・・ほっといてくれってなるわけさ。」
「・・・そんなもんですかね?・・・なんか・・・・」
オレは言葉に詰まる。確実に弱っている親に、労りの言葉を掛けるどころか、自分の都合ばかりを優先させるなんて。
でも、子供の時に親を失ったオレには、一生分からない事なのかもしれない。
この日は、会社に戻るまでの道のりがものすごく重く感じられ、やっと帰宅の途に就いたオレは近くのスーパーに立ち寄った。
気持ちを入れ替えて、しばらく使えそうな食材をカゴに詰めていくと、ふと立ち止まった。
視線の先、少し離れたお酒のコーナーの所にミクがいるのが見えた。
ミクの隣には同じ年ぐらいの男がいて、手に持ったカゴの中にはビールやカクテル、焼酎なんかと一緒につまみらしいものが入れられていた。
- 同級生かな・・・・
あまりじっと見つめても変だし、オレは顔を会わせない様に別の棚の方へ行く。
「あれっ、内田さん!」
背中に声が掛かり、仕方がないから振り返った。
「おう、・・・」とだけ言って軽く会釈をするが、ミクの隣の男がオレをすごく険しい顔で見ている。
オレは、得体のしれない感情を覚えながらも、その男から目が離せないでいた。
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