88 / 153
第88話 気になる男
ミクの隣でオレを見る男は、短髪でオシャレに気を使っているような感じだった。
オレとは真逆のタイプ。
「こんな所で会うって初めてだね。」
「ああ、今日は早く帰れたから……。」
ミクと話す間も、オレの事を見ているから気になる。そんなにガン見しないでくれよ、と思いつつ「じゃあな。」と言ってその場を離れようとした。
「内田さん帰るんなら乗せて帰ってよ!俺たち家で飲もうと思ってたんだ。よかったら内田さんも一緒に飲む?」
そう言われると、乗せて帰らない訳にもいかない。
「まあ、乗せては帰るけど、酒は遠慮しとくよ。」
「えー、飲めないんだっけ。」
ミクは驚いたように言うと、オレのカゴの中を覗きこむ。
「食べ物だけだね。お酒は入ってないや。」
拍子抜けした顔でオレを見ると言う。
「会社の飲み会なら行くけど、家で一人で酒を飲むなんてしないな。」
オレは他の人の邪魔になってはいけないと思い、歩きながら話した。
-主婦の立ち話じゃないんだから、こんな所で突っ立ってたら迷惑だろう。
他に買うものを見繕ってカゴに入れると、レジへ並んだが、その間もミクはオレにくっつきながらしゃべっていた。
隣の男は、慣れているのか口を挟んでは来ないが、表情は完全に面白くなさそうだ。
「ミク、そっちの友達に軽自動車だって言っといてくれよ!期待されたら困るからな。」
支払を済ませてから駐車場でそういうと、ミクがプツと吹き出す。
ともだちにシェアしよう!