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第88話 気になる男

 ミクの隣でオレを見る男は、短髪でオシャレに気を使っているような感じだった。 オレとは真逆のタイプ。 「こんな所で会うって初めてだね。」 「ああ、今日は早く帰れたから……。」 ミクと話す間も、オレの事を見ているから気になる。そんなにガン見しないでくれよ、と思いつつ「じゃあな。」と言ってその場を離れようとした。 「内田さん帰るんなら乗せて帰ってよ!俺たち家で飲もうと思ってたんだ。よかったら内田さんも一緒に飲む?」 そう言われると、乗せて帰らない訳にもいかない。 「まあ、乗せては帰るけど、酒は遠慮しとくよ。」 「えー、飲めないんだっけ。」 ミクは驚いたように言うと、オレのカゴの中を覗きこむ。 「食べ物だけだね。お酒は入ってないや。」 拍子抜けした顔でオレを見ると言う。 「会社の飲み会なら行くけど、家で一人で酒を飲むなんてしないな。」 オレは他の人の邪魔になってはいけないと思い、歩きながら話した。 -主婦の立ち話じゃないんだから、こんな所で突っ立ってたら迷惑だろう。 他に買うものを見繕ってカゴに入れると、レジへ並んだが、その間もミクはオレにくっつきながらしゃべっていた。 隣の男は、慣れているのか口を挟んでは来ないが、表情は完全に面白くなさそうだ。 「ミク、そっちの友達に軽自動車だって言っといてくれよ!期待されたら困るからな。」 支払を済ませてから駐車場でそういうと、ミクがプツと吹き出す。

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