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第89話 思い出した...

 自虐ネタじゃないけれど、男3人でこの車はキツイ。 おまけに買い物袋が四つもあるし、ミクが助手席でクスクス笑うが、オレは笑えなかった。 家にたどり着き、買い物袋の中身を冷蔵庫へと詰め込む。 缶ビールや酎ハイを冷蔵庫に入れていたミクが、突然思い出したように、隣の男の腕を掴んでオレの前に突きだすと「こいつは、ユタカ。俺のバイト仲間だから紹介しとくね。」と言う。 「・・・ユタカ、って・・・どこかで聞いたような、」と言って、思い出した。 オレが扉の隙間から見たときの、あの男だ。 ユタ・・・って言ってたし。 あの光景が瞼に蘇ると、心臓がドクッと音をたてて、その後カァ~ツと首から上が熱くなってきた。 「よ、よろしく。内田です。」と言ってごまかし、残りの食材を流し台の方に運ぶ。 「よろしく。」一言だけ言葉を発したユタカは、ミクにお酒を手渡していった。 こんなに恥ずかしいと思ったのは初めてだ。 相手はあの日オレが見ていたことを知らない。まさかのぞき見されていたなんて、な。 せっかくミクの事を父親の様な目線で見れたってのに、またオレのドキドキが始まる。

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