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第90話 不機嫌な男
なんだか楽しそうなミクの横で、ユタカという男は不愛想な顔をする。
「飲むって、ここで?」と聞くと、「うん。」というミク。
「オレ、今から夕飯作るんだけど、なんか作っとこうか?飲んだ後でも食えるようなヤツ。」
そう言って、材料を切り始める。
「えっ、いいの?やったー、」
少し跳ねるように喜ぶと、オレの手元を覗きこむ。
オレも、まんざらでもない素振りだったんだろう、ついに横に居たユタカがキレた。
「ミク!飲むならここじゃなくたっていいだろ?この人飲まないって言ったじゃん!」
オレを”この人”と呼んで、機嫌が悪そうだ。
「ああ、そうだな。作ったらここに置いておくから、居間で飲んでれば?」
一応ユタカの言い分も分かる。オレにくっついてばかりで、自分がないがしろにされているような気になったんだろう。
「なんで~・・・ここで見ながら飲んだっていいじゃん。ユタカもお腹減ったって言ってただろ?!ちょっとつまみ食いしようよ。」
甘えるように言ったミクだけど、ユタカの顔色は戻らなかった。
「俺は、あっちで飲むから。」というと、缶ビールを片手に持って行ってしまう。
「お~い・・・。なに怒ってんだよ!」
ミクは、仕方なくつまみの袋を持つと、自分の缶チューハイを持って後を追った。
「内田さん、ごめんね。」と振り返ってオレに言うが、こっちの方こそゴメンって気持ちになる。
あの二人は付き合う事になったんじゃないのか?
なのにオレが邪魔しちゃったもんだから・・・
別に二人の邪魔をしたかった訳じゃないけど、ミクに懐かれて嬉しいのも事実。
アイツが嬉しそうな顔をするんなら、それでいい。ご飯でも何でも作ってやるし、ユタカが好きなら応援するって。
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