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第95話 可愛いな。

 ......バカだな、ふざけて云ってるだけなのに、動揺するだなんて。 「その角でいいよ。ありがと。」と言われ、ユタカを交差点の先で降ろすと、オレは向きを変えてミクの待つ家へと戻って行った。  ブロロロロ・・・ 駐車スペースに車を停めて、オレはいつもの様に勝手口から家の中へ入って行く。 なんとなく、この家の玄関は苦手だった。冷たい石の床は、オレの記憶の中であまりいい印象が無くて・・・ どうしてもミクの母親を思い出してしまう。 「おかえり。ユタカの家分かった?」 オレが台所へ行くと、ミクが普段通りの顔で立っていた。 「ああ、近くの交差点で降ろした。・・・いいのか?」 オレがミクに聞くと、「何が?」と逆に聞き返されて返事に困る。 - ヤメヤメ。 おせっかいは止めよう。 自分に言い聞かせると、冷蔵庫に入れておいた料理を取り出す。 「食うか?」と聞けば、「うん」と一言だけ。 レンジで温めるとダイニングルームに行き、座って待つミクの前に出してやった。 少しだけはにかむ様に微笑んだミクは、箸を持つと急いで食べ始める。 「うまいか?」と聞けば、「うん、うまい。」と笑い、膨らんだ頬が子供みたいに可愛いくて、やっぱりオレは父親の様な目でミクを見ていると思った。 ユタカが言った言葉は、何処かに引っかかっているんだけど・・・・ 「ノンケ」であるオレが、何をどうすればコイツらの気持ちを分かるっていうんだ? オレが同性を好きだと思う気持ちと、コイツらの好きはどう違うんだろう。 そんなことを考えながら、目の前でおいしそうに俺の飯を食うミクを眺めていた。

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