101 / 153
第101話 酷いな...
布団をめくったその時、うつ伏せになっていたミクのシャツが一緒にめくれ上がり、背中の傷が露わになった。
「ぁ」
思わず声が洩れる。
白い背中には無数の変色した傷痕があって、皮膚の一部が引きつれているようなところもあった。
「・・・・・」
声が出ずにそのまま凝視してしまうオレに「気持ち悪いでしょ?」
ミクがポツリと言う。
「気持ち悪い事は無い。ただ・・・ヒドイな。火傷してるところもある。」
オレは思わず背中に手を伸ばした。
「これは、熱湯を掛けられた時の・・・。母さんの様子がおかしいって気づいた隆哉さんが、ここへ来たときだった。この家の事とかを話している時、急に興奮した母さんが俺の背中にやかんを投げつけたんだ。」
「・・・」掛ける言葉もなかった。ぐっと唇を噛みしめて俯くオレ。
「ふふふ・・・っ。こんな背中を見せられて、エッチな気分になんてなれないよね?!俺が、絶対服を脱ぎたくない理由が分かったでしょ!」
ミクがおどけて言えば、余計に可哀そうに思える。
相手を意識すればするほど、身体は見られたくないと思ってしまうんだろう。
.......可哀そうなミク。
オレは、ミクの背中に指を這わせると、そっと唇を押しあてる。
傷の一つひとつに気持ちを込めて、ミクが背負った心の傷も消えるように何度も触れた。
同情や憐みなのかを考えるより、本能がそうさせていたんだ。
ともだちにシェアしよう!