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第101話 酷いな...

 布団をめくったその時、うつ伏せになっていたミクのシャツが一緒にめくれ上がり、背中の傷が露わになった。 「ぁ」 思わず声が洩れる。 白い背中には無数の変色した傷痕があって、皮膚の一部が引きつれているようなところもあった。 「・・・・・」 声が出ずにそのまま凝視してしまうオレに「気持ち悪いでしょ?」 ミクがポツリと言う。 「気持ち悪い事は無い。ただ・・・ヒドイな。火傷してるところもある。」 オレは思わず背中に手を伸ばした。 「これは、熱湯を掛けられた時の・・・。母さんの様子がおかしいって気づいた隆哉さんが、ここへ来たときだった。この家の事とかを話している時、急に興奮した母さんが俺の背中にやかんを投げつけたんだ。」 「・・・」掛ける言葉もなかった。ぐっと唇を噛みしめて俯くオレ。 「ふふふ・・・っ。こんな背中を見せられて、エッチな気分になんてなれないよね?!俺が、絶対服を脱ぎたくない理由が分かったでしょ!」 ミクがおどけて言えば、余計に可哀そうに思える。 相手を意識すればするほど、身体は見られたくないと思ってしまうんだろう。 .......可哀そうなミク。 オレは、ミクの背中に指を這わせると、そっと唇を押しあてる。 傷の一つひとつに気持ちを込めて、ミクが背負った心の傷も消えるように何度も触れた。 同情や憐みなのかを考えるより、本能がそうさせていたんだ。

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