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第107話 おまじない?

 なんとか一日を過ごし、帰途に着いたオレは途中のコンビニで菓子類と飲み物を買い込んだ。普段、菓子は食べないし飲み物はお茶ばかりで、何を買ったらいいのか分からなかったが、自然とミクの好きそうなものを選んでいた。 「ただいま・・・」 普段は言わないのに、今日は声を掛け乍ら勝手口から入る。 もちろん、オレの声がミクに聞こえるはずも無い。離れた場所にいるし、ここの音は居間にいても聞こえなかったから。 「おかえり。」 ふいに声がして、オレは一瞬ドキッとしながらも振り返った。 台所の入口に立つミクの姿を目にすると、少しホッとする。 「ただいま。足、どうだ?」 「血は止まったみたい。まだ疼くけど大丈夫だよ。」 そう言うミクが片足をつま先立ちにしながらオレに近寄ると、袋の中を覗きこんだ。 「すごいね、誰がこんなに食べるのさ。内田さん間食しないじゃん。」 「ああ、・・・ミクが食べたいモノあったら持ってってくれ。飲み物は冷蔵庫に入れておくから好きに飲むといい。」 「うん、ありがとう。・・・」 言いながらオレの顔を見ると、言葉が途切れた。それからオレの顔に手を伸ばし、頬を掴むと「どうしたの?口のとこ切れてるし・・・・腫れてるよ?!」と言う。 「仕事で、ちょっとな。大したこと無いよ。」 ミクの手が離れないからオレは固まってしまうが、目を合わせない様に下を向く。 目が合うとなんだか変な気分になりそうで.........。 それでも、なかなか手が離れないから、ついにミクの目を見てしまった。 すると、ミクの顔がオレの顔面に迫ってくる。 瞬きもせずじっとしていると、オレの唇にふわっとした感触が伝わった。 一瞬オレの瞼が大きく開く。 ミクはオレの唇の傷にそっと口づけをしたが、突然の事に何の反応も出来ないオレは突っ立ったまま。 「傷が治るおまじない。・・・内田さんも俺の背中にしたでしょ?」 「ぁ・・・・・」 呆然とするオレを笑いながら、アイスティーの入ったペットボトルを取り出すと、ミクは自分の部屋へと戻って行った。

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