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第111話 嫉妬?
ミクはいつも布団から足を出しているが、今日はその足が3本見える。男の足だ。
- ユタカを泊めたのか?
あんなに拒んでいたのに・・・・
オレの胸がキュッと締め付けられる。
何処かで、ミクは誰もここへは泊めないんだと決めつけていた。
しばらく立ち尽くしていると、やがてゴソゴソと布団がうごめいて、中から腕が伸びてきた。
華奢な手の平はミクのものだった。
「・・・あ、・・・」
オレと目が合って、少し眠そうな目を擦る。それから布団の中の男に合図を送ると、ベッドから蹴落とすみたいに転がした。
ドスッと床に転がった男は、意外にも服を着たままで、ちょっとオレの想像とは違った事に胸を撫でおろす。
いや、ホッとするとか変なんだけど.......。
「痛いなぁ、落とさなくてもいいだろ。・・・・あ。」
男がオレを見て口を開けた。ユタカではない別の男だった。
「おはよう。もう昼なんだけど。」と言ってやる。
「あ、ああ、おはようございます。」
焦っているのか、慌てて靴下を履きだしたが、その姿を眠そうな目で見るミクは大きなあくびをした。
「ミク、いつまで寝てるんだ。昼飯置いてあるから・・・そっちの彼も食べるならどうぞ。」
二人の関係性を聞かないまま、オレはダイニングルームへと戻って行った。
廊下を歩きながら自分の胸の奥がチクチクする事に気づき、テーブルに着く頃にはそれが嫉妬の様な感情なのだと確信する。
もしあれがユタカで、二人が裸でベッドに入っていたら、オレは間違いなく怒りを覚えただろう。
頭ではわかっているつもりでも、ミクが誰かに懐くのは気持ちのいいもんじゃない。
オレに向ける微笑みは、オレだけのものだ。.........なんて、訳の分からない事を考えてしまった。
・・・・・頭が痛いな・・・・・。
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