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第116話 最期の姿
シンと静まり返った建物の中へ入って行くと、明子さんが分かる様に出迎えてくれて、オレは又挨拶を交わした。
「本当にありがとうございます。内田さんもお疲れでしょうに。」
「いいえ、大丈夫ですから。それより、お顔を拝見してもいいんでしょうか?オレ部外者ですけど・・・」
気になって聞いてみると、明子さんは少しだけ微笑んだ。
「あの家に暮らして頂けて、感謝しています。もう、身内の様なもんですよ。」
明子さんはオレに言うと、隣のミクの背中に手をあてて廊下の向こうへと促してくれた。
部屋の中は自宅の様な感じで、ここで最後まで穏やかに過ごせたんだろうなと思った。
ベッドに眠る隆哉さんがとても安らかな寝顔をしていて、最後に目にしたのがこんなに安らかな表情で良かった。オレが最後に見た死に顔は、自分の父親のだったから・・・・
「隆哉さん・・・・」
ミクは堪えていた涙をぽろぽろとこぼしながら、ベッドの脇に跪き隆哉さんの手をにぎった。その姿をじっと見守る明子さんとオレ。
ミクにとっては、隆哉さんと二人で過ごした思い出が、これからの宝物になる。
ずっと消えない思い出。
オレはミクの肩に手を置くと、ゆっくり撫でてやった。
今夜だけは、子供の頃に戻ってもいいんだから。ゆっくりと隆哉さんの側にいさせてやりたかった。
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