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第117話 鈍い痛み

 どのぐらいの時間を過ごしたのか、ミクの気がすむまでここに居ようと思ったが、もう0時を回ってしまい明子さんにも迷惑だろうと思った。 オレはミクの背中をそっと支えると「明日もあるから、そろそろ・・・」と言う。 その言葉でミクは立ち上がり、頬の涙をぬぐうと明子さんの方に目をやった。 「うちに来なさい。ゆっくり休んで・・・。内田さんも。」と言われ、オレは頭を下げた。部外者のオレまで泊めてもらって申し訳ない。 ただ、今夜はミクを一人に出来ない様な気がした。 気丈なようでも時折見せる儚げな表情は、オレの胸の奥で鈍い痛みを感じさせる。 昔、親父の気持ちに気づけなかった自分が悔しくて、表面の姿しか見ていなかった事を後悔した。もう、あんな気持ちになるのは嫌だ。 「申し訳ないけど、同じ部屋に布団を敷かせてもらったから。他に広い部屋が無くってね。」明子さんが車のキーを出しながら言うから「泊めてもらえるだけで有難いです。」と言っておく。実際オレみたいな図体のデカイ奴は立っていても邪魔になるんだ。寝る場所となったら・・・もうホント、申し訳なさでいっぱいだった。 それぞれの車に乗って明子さんの家に着くと、ご主人が出迎えてくれて、そこでもひとしきり挨拶を交わしたが、もう遅いという事でオレとミクは部屋に案内される。 8畳間に並べられた布団がなんとなく気恥ずかしい。 「じゃあ、ゆっくり休んでくださいね。明日の朝は起こしに来るから、それまでは寝ていて下さい。おやすみなさい。」 「はい、おやすみなさい。」「おやすみ・・・」

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