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第118話 人肌の温もり
部屋に残されたオレとミクは、来ていたジャケットを脱ぐと壁に掛かったハンガーに掛けて着替えを始めた。
「どっちの布団で寝る?」と聞かれ、「入口の方でいい。」と答えた。
特に意味はないけど、なんとなく・・・
オレはいつものスウェットの上下を着ると布団にもぐり込む。
横たわったままミクの方に目が行くと、大きめのシャツに袖を通していた。それからズボンを脱ぐとそのまま布団に潜り込む。
「ミク・・・」
「・・・ん?」
「そんな恰好で寒くないのか?」
オレはいつも気になっていたから聞いてみた。
「うん。これが気持ちいいんだよ。」
ミクが言うから「そうか」とだけ言ってオレは瞼を閉じた。
ここまでの道のりを運転してきて疲れていたのか、すぐに眠りについたようで。
- - -
これは夢なんだろうか、暗闇の中で向こうの方に一筋の光が見える。
そこに手を伸ばすが届かなくて、ゆっくり光の方へ歩いて行くと、おでこに当たる感触で上を見上げた。その瞬間、線香の香りが鼻を突き、誰かの足先がオレの目の前でゆれる。
そこで、オレはハッとして目を覚ました。
あの足は・・・
ふと違和感を覚えて下を向くと、鼻先に微かな線香の香りがして.......。
気づくと、ミクがオレの身体に抱きつくように眠っていた。
オレの胸に顔を埋めたせいで、線香の移り香がする髪の毛が鼻先に当たっていたんだ。
ホッとして、片方の手で自分の額を撫でると、ミクの髪を指でとかす。
「子供みたいだな.....」ミクの寝顔を見ながら心の中で呟いた。
淋しくなったのか、悲しくて眠れなかったのか・・・オレに抱きつく事で安心出来るんならそれでいいかと思った。
人肌の温度が心を温かくしてくれる。
一時でも、淋しさを紛らわせる事は出来るだろう。
オレは、ミクの華奢な背中に腕を回すと、寒くない様に布団を掛け直し、ミクの体温を感じながらまた深い眠りに落ちてしまったようだった。
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