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第119話 華奢な背中に
「ゆっくり眠れたかしら?」
明子さんがみそ汁をよそいながら聞いてくれるので、「はい。」と答えたが、起こされるまで気づかないで、ミクとくっついて寝ていたのを目撃されてしまい焦った。
「ミクは?食べないの?」
「いらない・・・」
明子さんに返事をして、居間の方で子供と遊ぶミクは少しやつれているようだった。
気持ちが沈んで食欲が無いんだろう。
「ミク、みそ汁だけでも飲んどけよ。」
オレは声を掛けるが、ううん、と首を振って来ようとはしない。
「おにぎり置いておくから、後でお腹が減ったら食べなさい。」
そう言うと明子さんは仕度をして出かけて行った。
隆哉さんのお通夜の準備があるので、明子さんとご主人は朝から忙しそうで、オレとミクが家で子供の面倒を見る事になった。
残り少ない命だったと、気持ちの中で整理はついているんだろうけど、実際に顔を見てしまったらいろんな思いが込み上げてくる。後悔もあるのかもしれない。
「にぃに、こぇであちょぶ?」
明子さんの息子の夏樹くんは、屈託のない笑顔でミクにおもちゃを差し出した。
それを受け取ると、微笑みながら一緒に遊んでやるミク。
そんな姿を見ていると、オレの方が切なくなってきた。
ミクの周りから大事な人がいなくなり、どんどん孤独になっていく華奢な背中を見るたびに、オレは抱き締めたい衝動にかられる。
力強く抱きしめて、ひな鳥を抱く母の様に大きな羽で包み込んでやりたい。
そんなことを考えるオレは、おかしいんだろうか・・・・
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