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第130話 大人気ない先輩
「おはようっ!」
駐車場に止めた車から出ると、オレの後ろで声がかかる。
振りかえれば山岡さん。
手には、どこかに旅行でもしてきたのか、いかにも土産物屋の紙袋を下げていた。
「おはようございます。何処かに行かれたんですか?」
オレが袋に目をやりながら聞くと「おお、久々の連休だろ?!子供と野球観戦ついでの旅行をしてきたんだ。」と嬉しそうに話してくれる。
「そういえば、阪神ファンでしたっけね。東京生まれなのに!」
「まあな、でも親父が神戸の出身でさ、親父譲りの阪神ファンなんだよ。」
そう言うと、袋から何か取り出しオレの目の前に差し出した。
「なんですか?」
「良かったら使って。フェイスタオル。」
「阪神のですか?」
「そう、虎のイラスト入り、可愛いんだよ。」
「・・・ありがとうございます。」
「じゃあな、」
山岡さんは更衣室には行かず事務所に行ってしまった。
なんだか足取りが軽やかで、確か試合は負けたはずなのに・・・
やっぱり息子さんと居られたのが嬉しかったんだろうな。
手渡されたお土産のタオルをリュックにしまうと、更衣室で着替えを済ませる。
白の制服に袖を通し、気持ちを切り替えて事務所へと向かった。
「内田くんおはよう。」
オレの顔を見るなり高木さんが近寄ってくる。
「おはようございます。」
「山岡さんのお土産もらった?」
口に手をかざして小さな声で言うが、あまり喜んではいなさそうで・・・。
「はい、トラのタオル....ですね。」
思わず口元が緩んでしまうが、「これ、あたしの分。内田くんにあげるから。」
そう言ってタオルをオレに差し出した。
「・・・ああ、頂きます。すいません。」
高木さんはアンチ阪神。きっと山岡さんは知っていてわざと渡したんだと思う。
・・・なんて言うか・・・大人げない。
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