134 / 153

第134話 優しくなんてない

「どうしたの?何か辛い事でもあった?内田さんらしくないな・・・そんな不安な顔して。」 ミクが言うから、オレは少しだけ腕を緩めて「そうかな・・・」と答えた。 オレらしいって、どういうのがオレらしいんだろう・・・ 「そういえば、同僚の人におやじクサイって言われた。・・・オレって、そんなにオヤジ?」 「はは、まさか・・・落ち着いてるんだよ。おやじクサイなんて思ったことないよ、俺。」とミクが言ってくれて、少しだけホッとした。 「まあ、お父さんの風格というか、どっしり構えてる感じはするけどね!オヤジとは違うよ。むしろお母さんみたいなんじゃない?俺にはよく分からないんだけどさ、優しいじゃん。」 「優しいかな・・・・?オレは出来るだけ、仕事以外では人と関わらない様にしてきたんだけどな。」 「そうなの?最初からそんな風には見えなかったよ。昔、俺の手をギュって握りしめてくれたろ?すごく優しい人なんだなって思ったし、誠実な人だって、今も思ってる。」 「ミク・・・・買いかぶり過ぎだよ。隆哉さんもお前も、オレの事何にも知らないのに・・・・・・」 縁側で、二人抱き合ったままの姿で話しているのは、はたから見たら滑稽だろうな。 でも、なぜか気持ちが休まるっていうか・・・ これが女性とだったら違った感じになっていたんだろうか。同じように心休まる時を過ごせるんだろうか・・・。 「内田さん、お湯に浸かったらきっと楽になるんじゃない?この間から疲れる事ばかりで、俺の為に隆哉さんのところまで行かせてしまったし。今から浴槽にお湯を貯めてくるから、着替えて来たらいいよ。何か食べる?」 「ありがとう。なんか気イ使わせちゃってるな、オレ。」 「いいって、今日ぐらいは。」 そう言ってオレの腕からすり抜けると、ミクは風呂場の方へ歩いて行った。

ともだちにシェアしよう!