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第143話 募る不安
「気になっているのは事実です・・・。」
オレが江口さんの目を見て答えると、
「気になる・・・か。そうだな、いつだったか5年前の依頼の事、気にしていたもんな。あと、彼の傷の事とかさ。」
江口さんは、腑に落ちたような顔でオレに言った。
「・・・そうでしたね。聞きましたよね。それで虐待があったって聞いて・・・」
「内田くん、5年前のあの時、ヨシヒサくんを搬送車に一緒に乗せてあげたでしょ。自分が側にいるからって言って・・・君たちは不思議な縁で繋がっているような気がするんだ。今の状況も含めてね。」
江口さんは、オレにそういうとまた顔を拭きだした。
確かに、はじめて彼を見たときの強烈な印象が忘れられなかったのは事実だ。
それからまた5年後。今度は叔父さんへの執着というか、そういうものを感じて気になった。
思えば、オレはかなり前からミクに惹かれていたのかもしれない。
だから誘いにも乗ってしまったんだろうか。また分からなくなる。
しばらくすると、鍋の材料が運ばれてきたので話は中断し、オレたちは美味しい鍋をつつき始める。
食べながらも、ミクの事が気になるオレ。
オレのとった態度は、アイツを傷付けてしまったんじゃないのかと不安になった。
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