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第145話 寂しいアルバム
江口さんと別れて車を走らせると、オレはコンビニへ立ち寄った。
適当に食べるものと飲み物をカゴに入れると、会計を済ませて家路へと急ぐ。
時計の針は9時をまわったところ。ミクは今夜もバイトで遅いのかもしれないなと思いつつ、何も食べていなかったらと思って買い込んでしまった。
- こういう所がお母さんぽいと言われるのかもしれないな。
家に着くと、勝手口から入って行く。
そのまま冷蔵庫に食料を仕舞いこむと、居間の方へ顔を出した。
電気が点いているから帰っているんだと思うが、どこにも見当たらなくて。
「ミク・・・・帰ってる?」と声をかける。
だが返事はなかった。
変だな・・・と思いながらも自分の部屋へと行く途中、不意に使っていない部屋の電気が点いていたから気になって覗いてみる。と、中に居たのは小さく背を丸めて椅子に腰掛けるミクだった。
「・・・ここに居たんだ?!」
部屋にいたミクに声を掛ける。
「ああ、おかえりなさい。」
「ただいま・・・」
挨拶を交わし、ミクの手元を見てみれば、アルバムみたいなものを手にしていた。
「それ、アルバム?かなり古そうだけど・・。」
古い家族の集合写真の様なものがあって、それを食い入るように見ているミクは少し悲しそうな表情をする。
「こういうの、俺の時にはなかったな・・・・」
そう言って見ていたのは、多分子供の七五三か何かの時に撮った写真。
ミクが映り込むには、年代が古い。きっとお母さんの子供の頃に映したものなんだろうと思った。
「いいな・・・。こういうのって、後から見返すと懐かしい物なんでしょ?」
写真を指でなぞるようにして言う。
「ああ、そうだな。一応はこういう時代もあったのに、ってオチがつくけどさ。懐かしいのは事実だな。」
「何?片付けでもするのか?そしたら今週の土曜日に出来るけど。」
慌てていうオレに、プツと拭きだすミク。
「いいよ、俺がひとりで少しづつやるから。」そういうとアルバムをその辺に置いてしまった。
「飯、食べた?」と聞くと、「うん、オーナーがご馳走してくれたから、俺とユタカと3人で食べに行ったんだ。
「ああ、そうか・・・」
又、ユタカの名前が出ると、いい気持ちにはなれないでいた。
気持ちのどこかではユタカを応援していたけど、本当はあんまり近づいてほしくないな、と思っている。どうしてかと聞かれても、答えは出ないけれど.......。
さっき、江口さんの娘さんが話していたように、男同士でも恋愛が出来るんだろうか、と首を傾げてしまい、現実の世界とは違う様な気さえしてくる。
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