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第147話 ひとりじゃないよ
少しの沈黙がミクの驚きを表わしているんだろう、それでもゆっくりオレの方を振り返ると「内田さんは強いね。」と言った。
「え?」
「だって、ひねくれてないもん。」
「そうかな、十分ひねくれて育ったよ、オレ。遠い親戚には見放されて、ひとり施設で暮らしていたんだ。まあ、他にもたくさんの子供たちがいたから、オレだけが辛い訳じゃ無いって思ったけどな。」
オレの話を聞いて、少しだけミクの表情が和らいだ。
「ふうん、そうなんだ・・・。」というと、立ち上がってオレの側へ近寄る。
何かと思えば、オレの身体に腕を回し抱きついてきた。
「あ、・・」と焦るオレに、「こうしてると、一人じゃないって分かるね?!」
ミクがオレの胸に顔を埋めながら言った。
「そうだな・・・一人じゃないな。」
ミクの背中にオレの腕を回せば、胸にすっぽりはまり込むから尚更愛おしく感じる。
「今夜、一緒に寝てもいい?」
ふいに聞かれて、戸惑っていると
「もう、襲ったりしないから。」という。
「分かった。・・・オレは襲われたのか?」と聞いてみる。
「そうだよ、内田さん普通に女の人好きでしょ?俺との事は事故にあったと思えばいいよ。」
オレにしがみ付きながら言うミクが可愛くて、回した腕に力がこもると、額にかかった髪の毛を縫っておでこにキスを落とした。
一瞬ミクの身体が硬直したように思えたが、すぐにオレの背中に手を回すとしっかりと抱きついて来て、二人のいるこの空間だけが今は別世界の様に思えた。
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