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第3話:拒絶されたαの男アツヤ
「アツヤ……」
自分の後ろ側になるようにヨシカズをかばう。
「エイジ、ヨシカズを返せよ」
「返す?そもそもヨシカズはおまえのものじゃないだろ」
「どこまで聞いた?俺とヨシカズが番だって話も聞いたか?」
「おまえと番になった覚えはない!」
ヨシカズが後ろから反論する。
「そんなこと言うんだ?」
アツヤは自分たちに近づき、怯えるヨシカズの顔を覗き込んだ。背中に非常灯の明かりを浴びて表情のわからなかったアツヤが、目の前まで来て、にやにやと笑っているのがわかった。
「俺には、おまえがどこにいても匂いでわかるって言っただろ?」
「うるさい!」
「昼間あんなにヤッたのに、もうフェロモンがだだ漏れ……ヨシカズは本当に淫乱だなぁ?ほら、収めてやるから来いよ」
アツヤがヨシカズの腕を掴もうと延ばした手を、自分が振り払った。
「痛ぇな……おまえに関係ねーだろ」
「嫌がってるだろ。わかんないのか?」
自分の後ろのヨシカズが震えているのを背中に感じる。
「全部聞いたんだろ?βのおまえに何ができるんだよ。番になれないくせに、でしゃばってくんな」
「だからって無理やりしていいことでもないだろ」
思ったよりも冷静に受け答えできていることに驚く。
「へぇ、じゃおまえが慰めてやれるの?こいつマジでそのへんの女よりも淫乱だからな?」
「少なくともヨシカズはおまえとしたくないと言ってる」
「なぁ、わかってる?おまえじゃ何もできねぇっつーの」
「行こう」
背中で小さくなったヨシカズの肩を抱き、立ち上がる。ヨシカズは肩でハァハァと息をしていた。
「エイジ、おまえが焦らすからヨシカズ苦しそうじゃねーか。そいつさ、俺とヤリたくて体が疼いてんだよ」
ヨシカズは首を横に振るが、自分でも気づいている。アツヤがここに来た途端、ヨシカズが興奮し始めたことに。
「歩ける?」
「……ん」
アツヤを無視して、ヨシカズの身体を支えるようにして、歩き出す。
「おまえを助けることができるのは俺だけだ!こいつに頼ったところで何もならねぇ」
ヨシカズは、アツヤの声を拒絶するかのように顏を背けている。
「エイジ、おまえも目を覚ましたほうがいいぞ。俺とヨシカズは結ばれる運命なんだ。βのおまえにその権利はない」
「いいから、俺たちのことはほっといてくれ」
「俺たち?長い付き合いだか知らねぇが、おまえにヨシカズは支えられないんだよ!」
背中にアツヤの声を聞きながら、ヨシカズと一緒にその場を離れた。
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