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第4話:欲望に従った二人の夜

 二人で暗い廊下を歩く。  これからどうするか、なんて考えてなかった。ヨシカズはまだ興奮状態が続いていて、このまま部屋に戻るわけにはいかないということだけはわかっていた。 「エイジ、あそこ…」  ヨシカズが指をさしたのは、廊下沿いにある身障者用トイレだった。なんとなくの目的を察した自分は、ヨシカズを支えながらトイレの扉を開いた。  少し広めのスペースに薄暗い明かりが点灯する。中から鍵をかけて、ヨシカズを便座に座らせる。大きく開いた股の中心は、黒いボクサーパンツの布が大きく隆起しており、じっとりと濃い染みが出来ていた。その股の前に立ち膝で座り、ヨシカズを見上げた。 「出すの手伝う?」  頷いたヨシカズの口はだらしなく開いていて、今まで見たこともないくらいに妖艶な顏をしていた。その顏に、今度は自分の中心がどくんと疼いた。 ――ダメだ…これじゃアツヤと同じじゃないか。  ヨシカズのことは好きでも、その存在を性の対象と考えるのだけはしないと決めていた。友達として接してくれているヨシカズを裏切ってしまう気がするからだ。 「お願い……エイジにしか、頼めない…」  ヨシカズは浴衣をめくり、自分のボクサーパンツを引き下ろす。張り詰めた中心は、ぶるりと天を向けて勢いよく飛び出し、その先端からは透明な液が滴っていた。 「ちょっと…待っ…」  ヨシカズは後ろを向いて両手で尻たぶを割り開き、その奥の蕾が見えるように突き出した。 「ここに、エイジの…入れて…」  自分にはセックスの経験がないが原理は理解しているし、男同士のそれもわかっている。求められているとはいえ、女のそれのように、いきなり突き立ててもいいのだろうか。 「はやく…ちょうだ、い」  肩越しに蕩けるような目線で誘われ、自分の理性は音をたてて弾けた気がした。  自分も同じように浴衣をめくって下着を脱ぎ、すでに興奮状態にあるそれを、その場所を確かめるように先端を蕾に押し当てた。 「……本当に、俺でいいの?」  耳元で囁く。それだけは絶対に確かめたかった。求められたからだとしても、後からヨシカズが後悔するのだけは嫌だった。 「エイジなら、いいよ…」  たっぷりと甘味を含んだその声に導かれるようにして、自分の腰を押し出しながら、自身を埋めていく。思ったよりもスムーズに飲み込んでいくその場所は、中もどろどろとして、まるで受け入れるために最初からそこにあったかのようだ。 「うあっ……ああっ…」 「やばい…」  絡め取られていくように内壁が波打つ動きに、一気に絶頂まで引っ張り揚げられそうになる。持っていかれないようにと必死で集中しているのに、ヨシカズは容赦なく自らの腰を動かす。 「もっとっ……」 「イッ……」  寸前で引き抜くと、バランスを崩したヨシカズは壁に打ち付けられる。 「大丈夫かっ……」 「抜いちゃやだぁ……中に、出して…」 「中って…」 「いっぱい、全部、出して?」  汗と涙でぐずぐずになったヨシカズは両手で自分の両頬を挟み、自分の唇を重ねた。自分にとってはこれが初めてのキスだった。そのままヨシカズの舌は自分の口内をねっとりと掻き回した。 ――頭が、ぼぅっとする。  まるでヨシカズに媚薬でも注入されたかのように、自分までも性の欲望に囚われてしまう。もう繋がって吐き出すことしか考えられない。  手を引かれ便座に座らされて、そのままヨシカズが上に跨り、繋がったまま激しく揺さぶられ、再びその高みへと引き上げられていく。肌と肌がぶつかる音といやらしい水音が、ヨシカズの乱れた喘ぎ声と一緒に耳を犯す。 「も……出る…」 「出してっ……エイジのちょうだい…!」  ヨシカズの身体を、自分の欲望を吐き出すためだけに揺さぶって、その最奥に叩きつけるようにそれを吐き出した。  ぎゅっと抱きしめながら、自分までも涙を流していた。その瞬間はそのことしか考えられなかったくせに、足を伝い降りていく液体が現実を呼び戻し、体の熱が冷めていくにつれ目の前が真っ暗になっていく。 「ごめん、エイジ……」 「なんで謝るの?」 「まだ足らない…もっと…欲しい…」  自分のそれを締め付けているその場所はねだるように、まるで意志を持っているかのようにひくひくと動く。 「大丈夫…俺もしたい…」    二人は再び唇を重ね、その後、何度も体を繋げた。それは朝方まで続いたと思う。  朝になって大浴場が使えるようになり、汗を流して部屋に戻った。ヨシカズは周囲に気づかれないように自分の手を繋いで、安心したように眠った。

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