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第11話

◆侵略者 ヨアンは、ふと妙な気配を感じて目を開けた。まだ夜明け前で辺りは暗い。耳を澄ましてみたが、変わった物音は特にしなかった。だが――先ほど感じた気配はまだ消えない。 侵入者だろうか?そんな気がして寝台から降りた。しかし、値打ちのあるものは何も無いこの北の塔をわざわざ襲う盗賊などいないはずだ。まさか――スクアードが戻った?一瞬そんなことを思ったが、ありえないと頭を振り、ヨアンは隣にある主の寝室をあらためた。セルテスはいつも通り穏やかな寝息を立てている。ややほっとして、念の為外を見ておこうとヨアンは扉を開けて庭園へ出た。 辺りは静かで、特に変わった様子は無い。やはり気のせいだったかと思いながら、ヨアンは続いて、石壁に開く穴から下を見下ろした。いつも塔の根元にいる見張り役の兵が、地面に長々と横たわっている。また居眠りかと思ったのだが――どうもなにかがおかしい。 薄暗い中で暫く目を凝らしていたヨアンは、急にはっとなって向きを変えると、セルテスの部屋へ走ろうとした。なにがおかしかったのか気付いたからだった。横たわったその兵には――首が無かった。 その時。居室の扉が乱暴に外から蹴破られ、ヨアンは思わず動きを止めた。 開いた扉の外に、異様な姿の男達がいた。つけている甲冑に獣の骨を寄せ集めたいびつな装飾を施している。その彼らを押しのけるようにして――ひと際背の高い男が現れた。鈍く光る黒い甲冑、そして地に着くほどに長く、真っ黒な外套(マント)。それには不気味な白い髑髏が染め抜かれていた。 男がいきなり、顔を覆っている兜に片手をかけて脱ぎ捨てた。その下から現れたのは――真っ白な肌に漆黒の髪と瞳。赤く薄い唇には、残虐そうな微笑が浮かんでいる。彼は次いで、まとっている長い外套をぱっと後ろへ撥ね退けた。そうして露わになったもう一方の手に提げられていた物を見て――ヨアンは我が目を疑った。 それは――首級だった。胴体から切り離された――后と現王であるその息子の、二つの生首だったのだ。 息を飲むヨアンの目の前で――男は高らかに叫んだ。 「セルテスはどこにいる?共に呪われた腹違いの兄が、黄泉から亡者どもを引き連れて帰還したぞ!」

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