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第2話

「ミスN高の候補に俺を投票したのは、蓮だろっ」  生徒会の集まりが終わり、幼馴染で家がすぐ近くの俺と蓮は一緒に帰っていた。 「知らねーよ。俺はそんなことしてない」 「嘘だ。あんなふざけたことをするのは、蓮しかいない」  噛みつく俺に、蓮はあくまでも否定する。 「知らねーったら、知らねーよ」 「嘘ばっかり。大体、蓮には前科があるだろ。俺の意見も聞かず、勝手に風紀委員に選んだのは誰だよ?」  そう、目立たない俺が生徒会の役員なんかやっているのは、一年生の頃から既に生徒会長を務めていた蓮の推薦があったからに他ならない。  ……まあ、それは別に良かったっていうか、蓮と一緒にいれる時間が増えたから純粋にうれしかったのだが、今度ばかりは、周りは冗談として楽しめても、俺にとっては屈辱でしかない。 「あれとこれじゃ全く次元が違うだろ、綾人(あやと)。俺は本当に知らない」 「信じらんない」 「あのなー、綾――」  蓮が続けて何かを言いかけたとき、後ろから女子生徒たちのかしましい声に呼び止められた。 「武藤(むとう)くん、瀬名くん」  女子生徒たちは見知らぬ子たちだったが、相手はこちらのことをよく知っているようだった。  まあ、蓮は学校でも一番人気で有名だから、そのおまけとして俺の存在も知ってるってわけだろう。  蓮は当然のごとく女の子にモテる。  だが、モテすぎて、よりどりみどりに女の子を選べる環境にいるせいか、その態度はどこまでも冷たく素っ気ない。  このときも、蓮が女の子たちを無視するので、しかたなく俺が対応することになった。  女の子たちは演劇部で、例のミスN高のナース服を作る係なのだという。  そして何を思ったのか、俺のスリーサイズを聞いて来る。 「なんで、そんなこと聞くの?」  俺に話しかけながらも、視線はちらちらと蓮を追っている女の子たちにムカつきながら聞き返すと、とんでもない返事が返って来た。 「だって、ミスN高に選ばれるのは瀬名くんだとあたしたち確信してるから。早いうちに型紙とか作っておきたいし」 「……あのね、俺は男なんだけど」 「でも、十人の中で一番の美少女だもの」  ……美少女って……。  がっくりと脱力していると、蓮が俺の肩を抱いて女の子たちに背を向けて歩き出す。 「悪い、俺たち、急ぐから」  切って捨てるような言い方は蓮がかなり機嫌が悪いことを表している。  蓮の切れ長の鋭い目に一瞥され、女の子たちはさすがに臆したようでそれ以上は話しかけて来ない。

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