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第3話

 俺はというと、蓮との距離が近くてドキドキしていた。  幼い頃はどこへ行くのも一緒だったし、幼稚園の行き帰りはいつも手を繋いでいたのに。  自分の気持ちに気づいたのは思春期のとき。周りが女の子の話題で騒いでも、妙に俺の心は冷めていて。  そして決定的だったのは、蓮に淫らなことをされる夢を見て夢精してしまったときだ。  それからは罪悪感との戦いだった。  淡白な質ではあるが、それでも全く自慰をしないというわけではない。その数少ない自慰のときに思い浮かべるのは、いけないと思いながらも、いつも蓮で……。 「綾人? なに緊張してるんだ? おまえ。同じ方の手と足が出てるぞ」  蓮が俺に優しく笑いかける。  その笑顔が眩しくて、その夜もまた蓮を思って自分を慰めてしまった。  そんな罪深い行為の罰が当たったのだろうか、後日行われた投票で、俺は他の九人の美少女たちを差し置いてミスN高に選ばれてしまった。  多分ほとんどの生徒がシャレで俺に入れたのだろうが、選ばれた俺にしてみればシャレにも何もならない。  こんなことになったのは、俺なんかを候補に投票した蓮のせいだと文句を言おうにも、蓮は休みだった。生徒会長のくせに蓮はよく学校をサボるのだ。  しかたないので、ラインで文句を言ってやる。 『俺がミスN高になってしまった』 『蓮の所為だ』  ラインはすぐに既読になったが、返事のラインは来ない。  蓮のやつ既読スルーするつもりだなとふくれていると、放課後になって電話がかかって来た。 〈綾人? マジで選ばれたのか?〉  蓮の声は掠れてガラガラで、文句を言おうとする腹立ちが、一転心配に変わる。 「蓮? どうしたの? 風邪引いた?」 〈ああ。ちょっとな。でも大したことない〉  話しながらも時々咳き込んでいる。  蓮は今一人暮らしだ。  おばさんがおじさんの転勤について行ってしまったため、広い家でたった一人で暮らしているのである。 「俺、今から見舞いに行くよ」 〈いいって。綾人に風邪うつしたくないから〉 「ううん。今から行く」  電話を切るやいなや、俺は走り出した。

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