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第6話
一睡もできずに迎えた次の日の朝。
俺は何度も文面を考え、消しては打ち直してを繰り返して、結局、『熱は下がった?』という愛想も何もない文面だけを蓮にメールした。
返事はすぐに来て、『微熱にまで下がったけど、もう一日休む』とこちらもまた用件のみのメールだった。
なんだか昨日、告白されたことが、俺の見た夢だったような気になって来て、ちょっぴり不安になる。
授業を受けていても、一日中落ち着かなかった。
ラインが入れば蓮からかと過剰に反応し、休み時間の度にメールを確認して。
でも結局、蓮からの連絡はなかった。
放課後になって、『今から行くから』『何か欲しいものある?』というラインを送ると、すぐに既読が付き、『待ってる』とだけ返事が来た。
校門を出て、蓮の家の方角へと急いでいると、後ろからかしましい女の子たちに呼び止められる。
なんかデジャブを感じて振り返ると、そこに立っていたのは以前俺と蓮に話しかけて来た演劇部の女子生徒たち。
「今日は一人なんだね、瀬名くん」
女の子たちがニコニコと声を掛けて来る。彼女たちが、蓮が今日休んでいることを知っているのかどうかは分からないが、こちらからわざわざ教えることもないだろう。
「……なにか用? 俺、急いでるんだけど」
俺の愛想のない返事にもめげずに、女の子たちは「せーの」と声を合わせ、俺に向かって、大きな紙袋を差し出してきた。
「これ、思ったより早くできたから。サイズは適当に作ったけど、きっと合うと思う。直しが必要ならいつでも言ってね。じゃ」
それだけ言うと、女の子たちはキャッキャッと騒ぎながら立ち去ってしまう。
紙袋に視線を投じると、中には白い服のようなものが入っている。
これって、もしかして……ナース服?
あの子たち、本当に作ってたのかよ。
半ば呆れ、半ば感心しつつ紙袋を見つめていたが、急いでいたことを思い出し、俺は蓮の家へと走って行った。
インターホンを鳴らすと、前日はパジャマ姿だった蓮が今日はもうパーカーとジーンズという格好で出て来た。顔から熱っぽさも取れ、元気そうだが、なぜか俺と目を合わそうとしない。
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