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第7話

「……入って、綾人」 「お邪魔します……」  どうしてだろう。なんとなく気まずい雰囲気を感じるのは俺だけ? 「蓮、具合はどう? ちゃんとご飯食べて薬飲んでる?」 「もう平気だよ。熱は平熱にまで下がったし、おまえが買ってきておいてくれたお粥も食ってちゃんと薬も飲んでるから」  微妙に視線を逸らしながら、蓮が答える。  ……どうして蓮は俺の方を見ないんだろ?  なんだか避けられてるみたいな感じが否めなくて不安になって来る。 「蓮、あのさ」 「綾人、昨日」  俺と蓮の言葉が重なった。 「なに?」  また二人の言葉が重なる。  蓮が俺に先に話すよう促してくれるが、こちらにしてみれば蓮の言葉の続きがすごく気になる。 「俺の話はいいから、蓮はなにを言おうとしてたの?」  問いかけに、蓮は切れ長の目を伏せる。  そして。 「ごめん」  なぜか謝られた。 「え?」  訳が分からず、首を傾げる俺に、蓮は言い放った……俺の心を一瞬で砕くような言葉を。 「昨日、俺が言ったこと、全て忘れて」 「……え……?」 「……おまえのこと友達として見れないとか言っただろ。あれ全部忘れて欲しい。おまえは俺にとって大切な親友で幼馴染だから」 「――――」  時間が凍ったような気がした。  蓮も俺と同じ種類の思いを抱いてくれているって、昨夜はうれしくて一睡もできなかった自分がバカみたいに思えてくる。 「……だから、これからも傍に……っ……」  蓮に最後まで言わせず、俺は持っていた鞄や演劇部の女の子たちに渡されたナース服入り紙袋を彼に投げつける。

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