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第9話
「……っ……そんなことあるわけないっ。だって、俺もっ……」
目尻にたまっていた涙が頬を伝う。
「俺も、何? 聞かせて……綾人」
「あ……、お、俺も……蓮が……す、……好き」
ようやく伝えることができた思いに、新たな涙が溢れた。
「綾人……」
涙に濡れる頬に蓮の唇が触れる。
「……蓮……っ、唇が熱い。まだ熱があるんじゃ……」
「違うよ。熱いのは綾人の所為……」
蓮の唇が俺の首筋に移動し、そこを強く吸い上げられる。
「っあ……」
ゾクッとする快感が体の深い部分から込み上げ、立ってられなくて目の前の体にすがりつくと、俺を腕に抱いたまま蓮が聞いて来た。
「綾人……、あそこに転がってるの、もしかして、おまえが文化祭に着る予定のナース服?」
「……そうみたい。昨日決まったばかりなのに、もう出来てるなんて……すごいね……」
「よくサイズ分かったな。おまえ、女の子たちに教えたんじゃないだろうな? 俺に内緒で」
鋭い目でにらまれ、咎めるように再び強く首筋を吸われた。
「……っ……そんなはずないだろ」
「綾人、あのナース服着てみてくれないか?」
「え? ええ?」
「だって結局、文化祭であの姿を披露するんだろ、おまえ。俺はその前に……誰よりも前に、おまえのナース姿を見たいから」
蓮はそう言うと、投げ出されたままの紙袋の方へ歩いて行く。
「結構いい出来じゃん……って、あれ? ナース服ともう一枚なにか入ってるけど」
「え?」
俺も蓮の傍に行き、一緒に紙袋の中を改めると、ナース服の他に医師が着る白衣が入っていた。
これも手作りのようで、女の子たちのスキルの高さに感心する。
「蓮、俺、こっちの白衣の方が着たい」
「いやいやいや。どう考えても、この白衣は俺用だろ。おまえが着ると、ぶかぶかじゃん」
蓮はそう言うと服の上から白衣を羽織った。
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