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第4話
桜花学園の高等部二年の時だ。
私は高等部の生徒会長として、中等部の卒業式に出席し卒業を祝う挨拶をした。
壇上にあがり、中等部の卒業生を見渡した。
そして、その中にいた「彼」と目が合った。
私は決して神とか運命とかを信じたりはしない人間だ。
しかし、「彼」こそが私の番だと、顔を見ただけなのに、はっきり確信した。
もちろんその時は卒業式の真っ最中で、「彼」に話しかけたりすることはできなかったが、私は安心しきっていた。
桜花学園はエスカレーター式で、中等部の生徒のほとんどは高等部に進む。
入学して来たらまた会えるのだと、そう思っていたから。
しかし高等部の入学式に「彼」の姿はなかった。
そして、名前も知らぬまま、12年が過ぎた。
私は皇グループの経営するホテルグループ、エンパイアホテルグループの総責任者になっていた。
交際した人もいたけが……どうして考えてしまう。
この人は「彼」じゃない、と、誰と過ごしていてもそう考えてしまうのだ。
番の相手だと、彼を見た瞬間そう直感したその事を、忘れることが出来なかった。
そんな中、ブライダル部門で、エンパイアホテルグループで挙式を予定している複数組のカップルに、関連誌への広告として取材や当日の撮影をお願いしていた。
その中の一つのカップル、前川達樹さんと木崎美紀さんの二人の挙式当日、私は視察するため披露宴会場を訪れた。
なぜ彼らを選んだかと言われても、大きな理由があったわけではない。
敢えて言えば、新婦の経歴の中に桜花学園中等部、高等部卒業と書いていたからかもしれない。
そんな、ちょっとした気持ちだったのだ。
しかしスチール写真を撮影している新郎新婦を見つめていた時に、私はわずかな甘い匂いに気付いた。
私は誘われるようにゆっくり匂いをたどって歩き出した。
そして……私は視線の先に彼の姿を発見した。
12年前とは違う、大人になった彼を。
私はその後を追った。
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