4 / 6

第4話

 桜花学園の高等部二年の時だ。  私は高等部の生徒会長として、中等部の卒業式に出席し卒業を祝う挨拶をした。  壇上にあがり、中等部の卒業生を見渡した。  そして、その中にいた「彼」と目が合った。  私は決して神とか運命とかを信じたりはしない人間だ。  しかし、「彼」こそが私の番だと、顔を見ただけなのに、はっきり確信した。  もちろんその時は卒業式の真っ最中で、「彼」に話しかけたりすることはできなかったが、私は安心しきっていた。  桜花学園はエスカレーター式で、中等部の生徒のほとんどは高等部に進む。  入学して来たらまた会えるのだと、そう思っていたから。  しかし高等部の入学式に「彼」の姿はなかった。  そして、名前も知らぬまま、12年が過ぎた。  私は皇グループの経営するホテルグループ、エンパイアホテルグループの総責任者になっていた。  交際した人もいたけが……どうして考えてしまう。  この人は「彼」じゃない、と、誰と過ごしていてもそう考えてしまうのだ。  番の相手だと、彼を見た瞬間そう直感したその事を、忘れることが出来なかった。  そんな中、ブライダル部門で、エンパイアホテルグループで挙式を予定している複数組のカップルに、関連誌への広告として取材や当日の撮影をお願いしていた。  その中の一つのカップル、前川達樹さんと木崎美紀さんの二人の挙式当日、私は視察するため披露宴会場を訪れた。  なぜ彼らを選んだかと言われても、大きな理由があったわけではない。  敢えて言えば、新婦の経歴の中に桜花学園中等部、高等部卒業と書いていたからかもしれない。  そんな、ちょっとした気持ちだったのだ。  しかしスチール写真を撮影している新郎新婦を見つめていた時に、私はわずかな甘い匂いに気付いた。  私は誘われるようにゆっくり匂いをたどって歩き出した。  そして……私は視線の先に彼の姿を発見した。  12年前とは違う、大人になった彼を。  私はその後を追った。

ともだちにシェアしよう!