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テレビを見ながらソファで待ってるとブリュレと紅茶を渡された。そして、久慈が隣に座ってパソコンで仕事をやり始めた。
「なんで隣に座るんだよ。あっち座れよ」
出来だけソファの端っこまで避けて、足で腰辺りを蹴るがどんなに蹴っても無反応だった。しかし、無言のままじゃ気まずいから蹴るのはやめて、気になっていた事を口にしていた。
「なぁ、聞きたいことあるんだけど、俺とあんたってどんな関係だったんだ?兄さんが好きなのになんで俺と番になろうと思ったんだ?」
手元にあるクッションを抱いて顔を埋めた。視線だけ向けると久慈は手を止め、背凭れに体を預けてると困ったような顔をした。
「何か思い出したのか?」
「さっき自分の日記見つけて読んだ。そこに久慈とか兄さんのこと色々書いてあった」
「へぇ…お前が日記を書いたのか?」
恐らく久慈もよく日記を書けたなって思ったんだろうな。
「そうだよ!早く質問に答えろ!あんたは兄さんのことどう思ってんの!」
「あいつのことは好きだったよ。気持ちを伝えたらゴメンって振られた。お前に背中を押されなかったらずっとウジウジしたままで告白なんて出来なかっただろうな。その時に男気ある雨に惹かれた」
顧みるように話す久慈に胸が高鳴った。視線を逸らし、続けて静かに聞いた。
「お前と再会してから運命の番っていうこともあって拒否出来ない部分もあったが身体の関係はあった。曖昧な関係を明白にしたいと思って番の話をした。でもあっさり断られた。しばらくしてやっとチャンスがきたと思ったら今度は覚えてなくて……さ…」
久慈は言葉を詰まらせ、なぜか俺は胸が苦しくなった。
物寂しげに手を伸ばし雨の頬に掠める。触れたところから痺れが広まり、体を強張らせる。徐々に下に下りて噛まれた首筋をなぞる。
「雨はいつも俺を期待させて落とす。
…ずっと片思いままだ。
どうしたらお前は思い出す?」
急にαの匂いを放ち、後頭部を掴んで強引に引き寄せ、唇が重なった。
「なにすんっ…んぅっ、んんんっ!」
また塞がれ、深く絡めとる。
抗うが身体中痺れて抵抗できなかった。
「んんっ…いきがっ…んぅ…」
ソファから落ちないように足を引っ張られて、そのまま後ろに押し倒された。
「なぁ、思い出せよ…身体は覚えるだろ?」
「やっ、やめろ…!気持ち悪ぃっ…んっ…どけよっ…!!」
噛まれた跡に沿って首筋を舐めて、服の中に手が入ってくる。
「やっ、クソっ…」
「前の雨は可愛いく鳴くのに…」
「はぁっ!?ふざけんぅ…んんっ…」
言葉を塞ぐように唇を奪い、服が脱がされていく。
触られたところが全て敏感に感じ、このまま流されてもいいと思わされる。運命の番というだけで
もっと見て欲しい。
もっと触れて欲しい。
もっと求めて欲しい。
と思ってしまう。キスだけで火照ってしまい、流されたくないし、抵抗したいのに感じて反応してしまうΩの身体に苛立つ。
「気持ちいいだろ?」
「んっ…はぁっ、やっだっ、んんんっ」
隙を見て少し離れた瞬間、久慈の唇を思いっきり噛んだ。
「…っ!」
痛みで体を引き、手の甲で唇を拭って見ると真っ赤な血が付いていた。
「いってぇ…お前はっ…、
……えっ、泣いてんの…?」
久慈にこんな姿を見られたくなくて腕で目を隠すが頬に雫が伝う。
「…っ悪かった。なっ、泣くな」
腕を引き、雨を起き上がらせた。
服も整えてたが一向に泣き止む気配がない。唇を噛んで声を出さず泣く雨に戸惑いながらそっとくしゃくしゃと頭を撫でた。
「…っ!さわんなっ!!」
手を払うとフラフラした足取りで玄関の方へ走っていった。
外に出てエレベーターのボタンを押すが全く動かなかった。このままじゃ追いつかれると思い、右の方を見ると非常階段を見つけ、階段を下った。しかし、途中に鉄格子があり行き止まりになっていた。
「くそっ…」
格子を蹴り、その場に座り込んだ。
後ろから足音が聞こえて振り返ると久慈が立っていた。
「危ないだろ。帰るぞ」
「やだっ…」
涼しい顔で追いかけてきて、近づくほどαの匂いに当てられてクラクラする。
「もう、何もしない。ほら、立て」
腕を掴まれ、立たされた。そのまま腕を引いてさっき下りた階段を上っていく。
「さわんなっ…離せっ…」
「…わかった。離すけど逃げるなよ」
手が離れて、久慈の背中を見ながら一段、一段、上っていく。たま後ろを振り向き、付いてきているか見る。
しかし、目を離した時、フラフラだった雨はバランスを崩し、階段の下に落下した。大きな音がした方を向くと雨は踊り場で横たわっていた。
「おい、大丈夫か!?」
体を揺するが意識は無く、全く目覚めない。久慈は雨を抱え、急いで部屋に運んだ。ベットに寝かせ、医者に連絡したあと早くと願いながら来るのを待った。
その間、ずっと雨の名前を呼び続けていた。
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