22 / 84
第22話 桜林祭 2日目
この日康太は午前中は暇で、あっちこっちのブースに顔を出していた
柔道部のJDB48(柔道部48)喫茶室 の、ブースでお茶を飲んでいた
「何か…ホラーハウスやん…このブース」
珈琲を持って来るウェイトレス姿が、怖い
「康太…それは禁句だぜ」
一生は、気にせず珈琲を飲む
四宮は、逃走
一条は、飲めれば何でも…飲むだろうな…
ホラー並の気色悪さに、身震いしてたら
康太の横に誰かが立ち止まって、康太を凝視していた
一条が、そいつに睨みを効かす
「飛鳥井…康太
たいした顔じゃないのに…」
そう言った奴は、背中に薔薇でも背負ってる様に優雅に、キラキラしていた
一生は、その姿を見てケッと吐き捨てた
「一生の知り合いかよ?」
康太は問い掛けた
一生は「冗談は止めろ!」と唸った
「そいつは1年の生徒会役員で……
榊原のお手付きだ…」
榊原のお手付き…そう言う事か……
「何か用か?」
康太が聞くと、一条は康太の前に出て康太を庇う様に立った
「四悪童なら、目立たなく影にいれば良いんだよ!
お前なんか、伊織様も直ぐに飽きる!
遊ばれて捨てられれば良いんだ!お前なんか!」
康太は一条を押し退け、立ち上がった
身長は少し康太が高い
「お前、そう言う苦情は榊原に言え!
オレに来るのは、御門違いだろ?
一生、榊原を呼べ!
隼人、そいつを押さえろ!」
康太が指示すると、二人は指示通り寸分違わすに動いた
「貴様、僕を誰だと思ってるんだ!」
キラキラの後輩が吠えた
「知らねぇ?
オレは生徒会には縁がねぇし
1コ下の奴に喧嘩を吹っ掛けられる謂れはねぇんだよ!
オレは躾のなってねぇクソガキが、この世で一番でぇ嫌いなんだよ!」
康太はさらっと言った
「覚えてろ…お前ら纏めて仕返ししてやる」
康太は面白そうに笑って、目の前のテーブルを2つに折り畳んだ
「待っててやんよ!
オレが本気で怒る方が早いか?
お前が仕返し出来る方が早いか?
試して見るかよ?」
康太が指を絡ませポキポキ鳴らし、キラキラに近寄った
康太の唇が瓜を描き、嗤う
キラキラの側の護衛の為に着いて来た奴等が、恐れをなして逃げていった
「さぁ…どうする?お前がオレを倒すか」
キラキラは顔色をなくした
「オレが、お前を倒すか…
さぁかかって来いよ?」
実力がないのに、四悪童は名乗らない
実力が伴ってこその、驚異なのだから…
「康太…!」
榊原は、一生に呼ばれて走って来た
目の前には、テーブルを二つに折って嗤う康太と……
生徒会役員がいた
榊原が、手を出した生徒だ
「榊原伊織!」
康太が榊原をフルネームで呼んだ
「お前が手を出した奴なんだよな?
だったらお前が何とかしろよ!
金輪際、オレの所へ越させるな!
次はない!覚えておけ!」
康太の瞳は怒りで燃えていた
康太が次はないと言ったら…次は絶対にない
榊原の背中に冷たい汗が流れた
「次は潰す!
退学?上等だ!」
康太は吐き捨てると、背中を向けた
一条は押さえていた、キラキラの腕を離した
キラキラ…こと、城田聡(きださとし)はその場に崩れ落ちた
榊原は、まさかこんな風に康太に喧嘩を売る奴が出て来るとは思ってもいなかった
手を出したのは……榊原だ
榊原が、全て悪い
全ての原因は榊原にある
だから、康太は一生に榊原を呼びに行かせた
「何でこんな無謀な事をした!」
榊原は語気を荒げて叱咤した
「弱いって思ったんだ……
あんな弱い奴等が四悪童なんて言われて恐れられてるなんて……笑えた」
「四悪童で一番腕が立つのは、飛鳥井康太です
あれに勝てると思ったのですか?」
城田は頷いた
「うちの学園が、何故他校に襲撃されないか、知ってるますか?」
城田は首をふった
「降りかかる火の粉は全て払うからです
頭脳と策略と行動力と腕っぷしの四悪童でなくば……この学園は……目を付けられ大変な目に遭っていました
彼らに叶う奴はいない…
僕は康太を愛しています
君には本当に……申し訳のないことをしました
許してください……
僕は君を愛せません……」
榊原は深々と頭を下げた
そしてその口で、康太を愛してると臆面もなく言った
叶わないと城田は思った…
ちゃほゃされて有頂天になってたのは自分だ
「伊織様…御幸せに…」
城田は頭を下げて走って行った
「康太…お前さぁ備品を壊す必要はなかったんじゃねぇかよ」
一生が、べし折れた机に文句を言った
「あぁしねぇと、怖がらんもんよー
怖がらせなきゃ……
本気で殴っちまうじゃねぇかよ……」
「珍しい…康太が本気で怒ってる…」
一生が不思議に感じる…
康太はトドメ刺さない奴だから…
「別に怒ってねぇし
榊原は遊んでたかんな
何時か来る奴いるかも…思ってたし…」
康太が悲しげに笑う
「偽物もんは本物にはなれねぇからな…」
一生は康太の気持ちが痛い程解った
康太は気を取り直して、隼人を見た
すると……何だか隼人が臭かった……
「隼人!女装の前に餃子食いやがったな…」
康太が唸った
康太と一生の会話に着いて行けず、一条は餃子を食っていた
ニンニクの匂いがプンプンする
「大丈夫…ブレスケアするし」
「匂ったら…」
康太が一条に詰め寄る
「匂ったらぁ…?」
一条の、声が裏返る
「キスすんかんな!
舌入れて激しいのカマしてやる!」
康太はケラケラ笑った
一条は青褪めた…
康太とディープキスは……したくねぇ
一条はフルフル顔をふった
康太は失礼な!と、怒った
「時に一生、聡一郎は…最近、どうしたんだ?」
やはり…核心を突いて来たな…と一生は苦笑しあ
この男には隠し事は出来ない
最近の四宮は別行動が多い
何かに怯え、何かを隠している
「………今、リサーチ中だ…」
一生の微妙な言葉の遅れに、一生は何かを知っている…と、康太は察知したが、追求はしなかった
「一生、オレはお前らの為なら、何を捨てても構わない」
康太の瞳が一生を貫いた
そんな事…一生は身をもって知っている
「解ってる…オレがお前を甘く見た事が一度でもあるか?」
「胸騒ぎがすんだよ…」
「康太の勘は当たるからな…
明日の朝、オレの所へ来てくれ
それまでには全てを用意する…」
康太は何も言わなかった
一生がそう言うのであれば約束は必ずなのだと解っているから‥‥
康太は立ち向かう
何者にも立ち向かう
その命尽きる瞬間まで、この男は闘うだろう
一生は、だから、康太と共に生きようと決めたのだ……
逃げ道は用意しない康太の生き様に共に……逝くと覚悟を決めたのだ……
一条は、康太の為なら…己の命すら差し出してやる…つもりだった
四宮も気持ちは同じなのだ…
なのに何故…
保健室に行くと、既に篠宮は来ていた
「聡一郎…」
康太が名前を呼ぶと、四宮の背中がピクンと震える
「さぁ気合を込めて入塗りたくるかんな!
気合い入れろや聡一郎!」
「あぁ…解ってます
絶対に失敗出来ない……」
四宮は普通に振る舞おうと冷静を装っていた
康太は見なかったフリして、ふざけて振る舞った
「清家の為…三年生の為、生徒会の為
そしてオレ等が楽しむ為に!頑張るぞ!」
康太が気合いを入れる
其々がモチベーションを上げ、女装する
清家が保健室に来た時には、既に四人は出来上がっていた
「気合い入ってますね」
清家が四人を見て感心していた
「オレ等は四悪童だかんな!」
康太の言葉は重い
舞台は幕を上げられた
逃げ出せる場所はない
女装大会のエントリーは総勢100人に上った
JDB48は全員エントリーしていた
康太が壇上で見つけ、まぢかよ~と声を上げると……
壇上の化け物…いや…生徒はピースを出した
似合ってる奴もいれば、とんでもない奴もいて
客席からはヤジが飛んだりした
一般の部の優勝は3年A組の田中智也と、言う生徒の頭上に耀いた
四悪童と、清家の人気投票は、後夜祭の前に発表される
各自、好みの名前を書く
康太は生徒会の奴からマイクを取り上げ、司会を買って出ていた
「皆、泣いても笑っても、あと数時間で桜林祭は終わるぞ~」
体育館が歓声で畝る
「JDB48の諸君、君達の勇気を讃えて……」
会場がシーンと、静まり返った
「後夜祭までには、君達、着替えなさい!」
と、言った
会場か笑いに包まれた
「さてと、集計が出たな!どれどれ」
康太は榊原の手の中の、優勝者の名前を覗いた
「えーっ、まぢかよ」
榊原に振った
「生徒の総意です」
「じゃあ、お前が言えよ」
康太は榊原にマイクを押し付けた
マイクを通さない声が「それで許してやんよ」と、言う
榊原は、マイクを掴むと
「第一回 女装コンテストの優勝者は…」
「一条隼人!」
一条の名前を告げた
一条はスポットライトの中心に行き微笑んだ
康太はもう一本マイクを要求する
「なぁ皆ぁ~オレが優勝だと思っていたぞ!」
と、ボヤいた
「鬼の執行部部長、君、オレの敗因を聴いて来なさい」
榊原が自分を指差す
康太は頷いた
榊原は仕方なく敗因を聞くべく口を開いた
「一条君に投票した方、手を上げて下さい!」
榊原が問い掛けるとかなりの生徒が手を上げた
榊原は壇上から下りて近くの生徒に
「一条君を選んだのは何故ですか?」
と、マイクを向けた
「一条は、夜のお供に最適でした!
本当に艶っぽくって…堪りません!
後は眺めているだけで、胸一杯でした」
壇上の康太は腹を抱えて笑い転げた
パンツが見えるってば!
榊原は、壇上に上がると康太を隠した
「隼人はセクシーだかんなー」
榊原は優勝者の頭にクラウンを乗せると、
一条はヤケクソで、うふ~ん♪と、投げキッスを投げ付けた
マリリンモンロー宜しく脚線美を見せて、出血大サービス
「皆、後夜祭に突入だぜ!外に出ろ!」
盛り上がったまま、後夜祭に突入し、キャンプファイヤーの回りに生徒は輪になった
熱気冷めやらぬ夜7時
「皆、今日は楽しかった
皆が一人一人作った桜林祭だ
最後まで盛り上がって、皆の心に何時までも残れば良い
オレ達は、まだまだ高みに登れる
また来年頑張ろうぜ!
今日はお疲れさん!解散」
康太は、マイクを清家に渡した
四悪童は、すっーと光の中から消えた
この年の桜林祭は、後に伝説になる
康太の弟の悠太が、入学しても、衰えることのない…伝説になる
ともだちにシェアしよう!