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第29話 堕ちる

あんまり今が幸せだと 堕ちてくみたいで 突然不安になんだよ… そう言い康太は…悲しげに笑った この日、四悪童は、一条の写真撮影に着いて来ていた フラッシュの前に立つ一条隼人は格好良かった ポーズを作り、微笑む モデルの出だけあって、然り気無いポーズも決まってる 一条の撮影が終わると、週末を楽しむ為に久々の外食に行き、オールナイトでホラー映画を見る 康太は大反対したが……多数決でホラーと決まった 榊原も誘ったが用事が入ってて、一緒には来られなかった 撮影を終えた隼人が着替えるのを待ち帰る 撮影所は繁華街にあった おしゃれな街の繁華街には、おしゃれなカフェも多く出店していた 撮影所から降りて行くと、1階のカフェに見慣れた姿を見付け、康太は足を止めた 最初は見間違いかと想い、目を擦った だが…何度見ても…それは変わらなく カフェの窓際には、用事だと言った榊原が……… 綺麗な大人の女性と迎え合わせで座ってた 足を止めた康太が動く気配がせず、全員が康太の視線を辿った 一生はオートフォーカスで、二人の写真を撮った 言い逃れなどさせるか!と言う気持ちで一生は証拠を撮影した 康太のショックは大きい だが、今日は久々に、楽しい週末にする予定だったから… 康太は今のシーンを、頭から消した そして口止めをさせた 「今日の事は絶対に榊原には言うなよ!」…と! どうせ聞くなら本人の口からが良い… その後の康太は平静を装っていた だが……皆は解っていた…… 康太が叫び出すホラーを、ボーッと見る筈などないから…… 四宮と一生と一条は…… 康太が心配だった 裏切るなら……覚悟しときなさい! 四宮はホラーを見てるのに涙が止まらなかった…… 一生も一条も……康太が心配すぎて…… 何を見てるか解らなかった…… 翌朝、寮に帰ると部屋には榊原がいた 榊原は、何も変わっていなかった 何も変わらず接してくる そして…何も話してはくれなかった 康太は…榊原の口から聞きたかった 真実を聞きたかった だから、何も聞かなかった 足元が救われるって… きっとこんな感じなんだな… って…一生に、漏らした声は儚かった 康太は気晴らしに、一人で街まで出ていた 滅多に一人にはならないが、気晴らしがしたから…三人をまいて街まで来た カフェでアイスコーヒーを飲んでいると 康太の前の席に…勝手に座る男がいた その男は椅子に座るなり、康太に声をかけた 「お前ぇーは何で今日は一人なんだよ?」 当然の顔をして同じものを頼む 「何で貴方が、此処にいるんですか?」 「お前ぇが、シケたツラして座ってるからだよ」 その男は不敵に嗤った 「オレ…生徒会長の、あんたと相席は嫌なんですけど…兵藤貴史サン」 桜林学園 生徒会 執行部のトップ 現生徒会長 兵藤貴史が、康太の前で当然の顔をして珈琲を飲んでいた 「俺は、来年違う大学に行く! お前ぇとこうしていられる時間も残り少ない」 「あんたは、その頭脳を駆使して日本を変えろ!」 「あぁ変えてやんよ でもな康太、俺と過ごす時間を少し作りやがれ!」 「あんたと過ごす時間ない! あんたはオレを切り捨てた人間だ」 「あぁ…それだけが、俺の学園生活の心残りだ お前ぇが放った言葉が俺の心臓を貫いてる 俺はこのままじゃ…進めねぇ」 康太は悩んだ この男は、執拗な性格なのだ 中等部の頃までは、二人は仲が良かった この男は康太が榊原に恋してるのも見破った男だ だが生徒会に入る為に、兵藤は康太を切り捨てた 『お前と、付き合うと、評価が下がる! 今後一切話しかけるな』……と 「オレを越えて行く奴に、かける声はねぇよ!」 康太は吐き捨てた だが、兵藤は切り捨てて行った康太が何時も気になった… こんなに可愛くなって… 「康太…俺にまる1日時間をくれ」 真摯な瞳で、康太を見る兵藤の瞳に……逃げられない想いを感じて…… それに返す言葉に窮していた 「それで…あんたが、オレを越えて行けるなら…」 兵藤は康太の手を取り…口付けた 「俺の桜林の心残りだ… 明日、お前の時間を1日くれ」 「あぁ…やんよ!」 康太は目を閉じた これで…自分も同罪だと… 兵藤が去っても康太は動けずにいた その椅子の前に、一生と四宮と、一条が座る 「お前…後悔するなら…断れば良かったんだ!」 一生の図星を突いた一撃 「あの人も傷付いていたんだな…あの時…」 「それでも、進んだのはアイツだ! 時間なんざくれてやる必要はねぇ」 言っても康太は、アイツに時間を割くのを知っていて言った 乗り越えて逝けるなら……と、康太は自分を殺すのを知っていた この夜、康太は一条の部屋に泊まった 見兼ねた一生も四宮も、泊まる 一条は、何だか楽しそう 「康太、榊原の旦那とは話をしたのかよ?」 一生は問い掛けた 「いや……話さなかった…」 一生は、思わず天を仰いだ これじゃあ、康太と榊原の間には大きな溝が出来てしまう 「何だろ…幸せ過ぎて… 目が醒めたら、ボロボロ世界が崩れる瞬間みたいで… 怖くて聞けねぇんだ… オレって凄い臆病者だって気付いた… 怖いんだよオレは……」 「康太…」 「明日は着いてくるな!絶対にだ!」 康太は一条のベットに潜り込み、一条に抱き着いた 一条は、康太を優しく抱き締めた 眠りに堕ちるまで…優しく四宮は康太の頭を撫でた 翌朝、寮の外に出ると兵藤が立っていた 兵藤は、康太へ手を差し伸べる 康太は…兵藤の手を取り…歩き出した その風景を康太を探して歩いていた榊原は、偶然目撃した 榊原は…何が起こったのか解らずパニックになった 康太は最近、榊原を避けてるかのように部屋に戻って来ない… 榊原はこの忙しさが一段落したから、康太を探して話をせねば…と想っていたら、この光景を目にする事となった 相手は…現生徒会長、兵藤貴史 何故…あんな大物と… 榊原がフリーズしてると、後ろから蹴り飛ばされた 振り向くとそこには不機嫌な、3人がいた 「顔貸せよ、旦那」 一生が言う 「アイツにはGPSが着けてある! だから黙って着いて来い!」 一生は有無を謂わせず態度で榊原に言い放った 何も着けずに、康太を一人で出す筈はないと… 榊原は、素直に従い着いて行った 行き先は、一条の部屋 ソファーに座った榊原の前の席に3人は立っていた スッと、差し出される写真 榊原は、その写真を見て…驚愕した 「どうして…これを?」 「この写真を撮った時、俺等はそのカフェの上のスタジオにいた 階段を下りたら、そこのカフェにお前がいた… 用事があると断ったお前が女といた……康太の心中が解るか? 帰ってもお前に聞くことすら出来なかった康太の気持ちが解るか? お前はこの日用があると断った その用がこれなら…誰だって勘繰るぜ、違うか榊原伊織?」 榊原の目の前には、仲睦まじく話す男女の写真が、3枚 1枚目は、同じものを覗き込む姿 2枚目は、手を握り合ってる様にしか見えない写真 3枚目は、隣に座って親密そうな写真 これだけ見たら…カップルだ 康太はこれを見た? そして何も言わなかった…? 「榊原…この女がお前の彼女であろうと 違おうと、嘘を言ってこの場所に居たら 康太は捨てられると思って当然だ あれはもう寮には戻らねぇ… 兵藤と別れた後、実家に帰って… もう此処へは帰って来ねぇ気だ お前が康太を追い詰めたんだ」 榊原は言葉が出なかった… 康太を無くす… 奈落の底に堕ちてく… 「康太はな、幸せ過ぎて目が醒めたら、ボロボロ世界が崩れて行くみたいで聞けなかった…って言ってた 康太を奈落の底に突き落としたのは、てめぇだ榊原伊織!」 言葉が出ないとは…この事だった 康太を失う恐怖 「この女は誰だ?」 一生が訪ねた 「テレビ局のAD…決して疚しい関係ではない 僕には康太だけ!誓って言います」 テレビ局のAD…また突飛な… 「仕事が貯まってしまったんですよ 一生君の救出作戦で、自分の仕事を貯めてしまった… で、手直しをカフェでやらされた… 愛の囁きは康太しかしません! こんな年増では勃起もしません 康太しか勃起しません!」 偉そうに断言する榊原に、一生は話が見えねぇ!…と、怒鳴った そう言うと榊原は観念したのか、事情を説明し出した 榊原は放送作家と、脚本家の仕事をしていて、名前は「幸田 飛鳥」 だと白状した 榊原は役者にはなれなかったが 役者を見抜く目は誰よりも確かで ドラマや番組を造るのが上手かった 切っ掛けは清家の舞台の脚本を脚色をした事に始まる 予想以上に反響を呼んで、名が売れた 以来、仕事は舞い込んで来るようになり 何とか粉して来たが… 一生の失踪事件の時に使ったノートPCに原稿が入っていたが…… 康太の憔悴ぶりに、一生を探さねば…と、原稿を消してしまい その日はカフェで打ち合わせだった…と。 榊原は、全て話した 一生は、自分にも一旦はあったのかよ…と、落ち込んだ だが一条は引かなかった あんな悲しげに自分に掴まる康太は見たくないのだ 「然もありなん! 幸田 (康太) 飛鳥(飛鳥井) 飛鳥井康太じゃんか! 言えば良かったのだ! 言ってやれば良かった! もう、康太はやんねぇ! 絶対ぇやらないのだ!」 一条が吠えた 一条の気持ちは痛いほど解る…  四悪童の気持ちは何時も一緒だから でも康太にはこの男しかいないのだ 「隼人 それは康太の決める事だ!」 一生が嗜めると一条は泣き出した 「だって…康太を泣かすんだもん」 一生は、お前も泣いてるな…と、頭を撫でた 「緑川…何故康太を行かせたんですか?」 榊原は生徒会を統括する生徒会長が何故康太を連れて行ったのか…と言う想いが強かった 「康太と兵藤は、幼馴染みだ 兵藤は、康太への想いを断ち切る為に…… 康太を切った… もう口も聞くなとトドメを刺した… だが…あの男は執拗だ 時間を寄越せと、言うなら、寄越すまでつきまとう…蛇のような男だ」 「僕は彼の表面しか知りませんが、気を抜けない男です…彼は康太を今も…?」 「胸に刺さった棘…だそうだ アイツは康太を愛してる ずっと‥‥ずーっとだ だが、切り捨てて逃げた…今更だろ 康太はモテるんだよ 狙ってる奴は生徒だけじゃない 教師もだ 気を抜くと持ってかれるぜ?旦那」 榊原は嫌と言う程に康太へのラブレターを処分して……人気があるのは知っていた 「康太を確実に掴まえるなら…やっぱ実家でしょうか?」 「康太はどんだけ辛くても耐えるが、やっぱし最後は瑛太さんに甘える あの人も康太には厳しいのに激甘だ 傷を癒すならあの場所は最適だ 幾つになっても康太は溺愛される その分、悠太は割り食ってんな…」 「僕は飛鳥井で康太を待ちます… 泣かせた償いはします 大学に入ったら彼と住むマンションを買おうと…つい無理して仕事を入れました エンゲージリングは買いました でも…康太を泣かせたら…意味がないですね」 「兵藤は俺等が後をつける、お前は康太を待て…」 一生は、どっちみち兵藤には勝ち目かねぇしな…と、笑った 兵藤と昔……連んでいた時みたいに…… そして時々恋人…みたいに歩いた 映画見に行き……手を繋いだ そのまま手を繫いでショッピングを楽しみ 夜になると山下公園に出向き、海を見ていた 「康太…俺と来ないか?」 と、兵藤が康太を誘った 「行かねぇよ! お前の果てにオレはいねぇ…」 「お前をずっと愛してた…」 「戯れ言だ…貴史…」 「お前は本当に昔から変わらないな…」 「貴史…ずっと見ていてやんよ だから、お前の果てをオレに見せろ!」 兵藤が意表を突いたような顔をした 「俺を見ててくれるのか?」 「おう!オレの果てにはお前はいねぇ オレ等は恋人にはなれねぇ…… でもな貴史、オレはお前を見ててやんよ お前の果てを見届ける人間になってやる だから迷ったり、行く道が解らなくなったら…… オレの場所に来いよ オレがお前を導いてやんよ だから、逝け! お前の道を逝け! 何時かお前は世の中を変える男になる オレはそれを見届けてやる!」 兵藤は、康太を見た 「それが、お前の真贋か?」 康太は目を反らすことなく 「あぁ、そうだ!」と答えた 兵藤は、康太に手を伸ばし引き寄せた 「お前を愛する気持ちを断ち切らないと…… 俺は前には進めなかった あの時、諦めなかったら…… お前は手に入ったのか?」 「あの時も、今も…これからも… オレはお前に着いては行かねぇ お前とオレの道は、重ならねぇんだよ オレはお前を見る事しか出来ねぇ だから貴史…オレの見える場所に来い! それがお前の運命だ オレはお前の息が止まる瞬間まで見ていてやんよ だから、逝け…もう止まるな!」 兵藤は、康太に接吻した 激しい、絡み合う舌が康太を絡める 康太は応えてやった 最期の接吻だから…… 唇を離すと、最後に兵藤は康太を抱き締めた 「行けよ!榊原の所へ」 兵藤は、背を向けた 康太は歩き出した 兵藤と離れる為に… それを見守る影が3つ 兵藤は、影に近寄った 「やはり、いたか…」 兵藤が、ごちると 一生は当たり前だ…と返した 「俺等はアレと共にある!」 兵藤は、納得し…少しだけ恨み言を言った 「榊原伊織では、太刀打ち出来ない アレはずっと榊原なんだな…」 苦笑する 「でも誰のものにもなってない時期はあった 本当に欲しいなら動けば良かった」 「俺はこの世の中を変える 政治家になる身だ、俺は アレを日陰の身に置きたくはない それが、俺の総てだから…な」 「胸の棘は…取れたのか?」 兵藤は、首をふって清々しく笑った 「更に深く刺さったな…… この棘は刺したまま、俺は生きて行く それがアイツへの唯一無二の愛の証だ」 「わざわざ…蕀の道を…」 一生は胸を押さえた 兵藤の愛は本気だ なのに…心を棘を刺したまま、愛する心を置き去りに…… 前へ進むと言うのだ これからの人生で愛は必要ないと… ばかりに… 兵藤と別れて、康太は実家に向かって走るタクシーの中にいた 寮へは戻れない 今すぐ榊原を平気な顔で見れない… ………要は、怖いのだ 立っていられない位…足元が覚束ない タクシーの中で、康太は口を無造作に拭いた カードで支払い、タクシーから下りた 飛鳥井家に着いてドアを開けると瑛太がそこに立っていた 「瑛兄…」 靴を履いたまま、瑛太に抱き着いた この弟は幾つになっても手がかかる 瑛太は子供でも抱くように、腕に康太を抱上げた 横で見ていた悠太に、康太の靴を脱がさせ部屋へと運んだ 康太は瑛太の首から離れない 「康太…今日は君のブルガリじゃない… 良い薫りに包まれて、何して来たんですか?」 康太の体は兵藤の匂いがしていた 「貴史に逢ってた……」 「貴史って兵藤ん所の息子?」 「そう!アイツはオレを連れて行くつもりだった」 「………」 だったら兵藤の想いは断たれたのか… 人は…康太を欲する この弟は人の心に根付くからだ 康太を片手で抱き止め、瑛太は康太のドアをノックした すると中から榊原が出て来て、康太の方へ手を差し伸べた 康太は瑛太の首に巻き付いて、榊原の方へ行かなかった 「康太…無くしても良いなら、伊織君には引き取ってもらおう 但し、今後一切康太を引き合わせる気はないと申し告げておくが、お前はそれで良いのか?」 瑛太は心を鬼にして言った 「今日は瑛兄に甘えに来たのに…」 するりと、瑛太の首から手が離れた 瑛太は榊原の手の中に、康太を乗せた 「この部屋は防音になってる だから、安心して下さい!」 瑛太は笑って、その場を立ち去った 榊原は康太を腕に抱き、ドアを閉め鍵をかけた 「下ろせ!伊織」 「下ろして差し上げても良いが… この馨りは?君のじゃないですよね?」 「貴史のだ!」 貴史…って言われても、榊原には解りかねた 「兵藤…?」 「そう!兵藤貴史」 「お知り合いなんですか…?」 「幼馴染みだ うちの裏にある、あの馬鹿デカい家があんだろ?あれがアイツんちだ」 「兵藤は、何しに貴方を?」 「共に歩め…と オレを連れて行くつもりだった」 榊原は息を飲んだ 榊原は康太をベットの上に静に下ろして、康太の前へ跪ずいた 「康太…聞いて…お願いだから…」 哀願する姿に……康太は観念した 康太は、「あぁ…聞いてやんよ…」と言い 榊原にベットに座るように言った 榊原は、全てを話した アレは彼女でもなんでもない事… 榊原は脚本や放送作家の仕事をしている事… 全てを話した 榊原の潔白は明かだ 担当の、あの女性にも近いうちに会わせる とまで約束してくれた でも…康太は何も言わなかった… 「康太…ねっ康太…」 榊原の腕が康太を抱こうとするが…康太は避けた 構わず康太を抱くと… 現生徒会長、兵藤貴史の匂いがした 匂いが乗り移る程近くに接していなければ ……移り香はない… 「兵藤さんと、どんな話をしたの? 教えて康太…」 榊原が康太の胸に頭を凭れさせ祈るように言う 「貴史とは、昔の様に一日過ごした 夜に山下公園で海を眺めてたら…… 着いて来い…と、誘われた だが、オレは断った アイツの道はオレとは決して交われねぇから… そしたらアイツ…オレを抱き締めキスしやがった ただそれだけだ それでオレは帰って来た どの道、あの場には3人も来ていた」 榊原は、そっと康太を抱き締めた 「僕は…君を傷付けた? もう、僕の事は要らない?」 「聞けば良かったんだよ… ……でも……オレは怖くて聞けなかった」 康太の頬を涙が流れた 「オレはお前をなくしたくない そう思えば思う程に…オレはお前を避けた… 足元がグラグラ音を立てて崩れるみたいに…立っていられなくなり… オレは逃げた 伊織をなくしたくない気持ちが… オレに何も見えなくさせた……」 榊原は康太を強く抱き締めた 「康太…泣かないで 仕事ばかりして康太を放っておいた僕の所為ですから…泣かないで」 榊原が康太の頬から流れる涙を拭った 「愛してます…康太だけを! 他の誰かは要りません!」 康太が愛する男の顔を触った 愛する男のぬくもりが康太の体躯に伝わってきた 「ショックだった… その日は用事かあるって言ってたのに… 伊織の前にはオレ以外の女がいた… 帰ったら…別れ話を切り出されるのか…と思ったら…… 伊織の側にいられなくなった…怖くて…」 「康太…許して下さい… もう君に隠し事はしません …て言うか、話すつもりでした 仕事が忙しくなって来たから、話そうと考えていたんです…」 榊原は康太の体を持ち上げ、膝に乗せた 「君はずっと僕の側にいてくれますか?」 康太は榊原の首に腕を巻き付けた 「伊織の側しかいたくない…… 伊織の側にいられなくなるかと思ったら…怖かった…」 榊原は康太の服を脱がした 本当は…康太の御実家では…避けて来たが… 最近康太に触ってなかった現実を想い知る 康太の素肌は愛撫の形跡はなく…綺麗なままだった 「康太の薫りが違ったから…少し焦りました」 康太の素肌に愛撫の跡を着けた 「伊織以外に抱かれたくない…」 康太は榊原の服を脱がした 「僕だけ?」 「伊織だけ…伊織しか要らない オレ、黒帯だかんよー投げ飛ばす」 舌を榊原の舌に絡ませ誘う。 康太の唇が下に下がる… 榊原の鎖骨の窪みに舌を這わす 康太の誘惑は、淫靡だ 康太の顔を上げて、接吻する 指が康太を覚えてて素肌を滑る 性感帯を執拗に弄る 康太の唇に指を差し込むと、丹念に指を舐めた その指を唇から引き抜き、康太の秘肛に挿し込み掻き回す 蠢く肉壁を押し分け指を締め付け、腰をくねった 康太の抱え挿入ると、中が締め付け蠢いた 榊原の体躯に搦まれた腕 腰に絡まる康太の脚 離れたくない想いが、求める気持ちに拍車をかけた 「康太…離れないで…」 康太のポイントを突いて掻き回した 康太は魘された様に 「離れない…」 と、榊原を掻き抱いた 一つに交わる瞬間が…  永遠と続けば良いのに… こんに愛していても… 1つにならない体躯 想いは溢れているのに… 幸せすぎて… 周りが見えなくなる 愛ゆえの不安 愛ゆえの…戸惑い… 愛するが故に互いを欲するのに… 熱が冷めて康太の上にいる榊原は、優しく康太に口吻けた 「康太の御実家で…犯らないつもりでしたが…」 「激しかったから…声出たし…」 榊原は康太を抱き締めたまま、くるん…と、ひっくり返り康太を胸の上に乗せた 「余裕がなかったんです……」 一度出しても静まらず、抜けなかった 挿入したまま二度…果てるまで康太を離さなかった 「伊織…オレは幸せすぎて不安だったんだ… こんなに幸せだから… 目が繰らんで何も考えられなかった… 聞けば良かったのに…この温もりをなくす恐怖が正常な判断を狂わせた…」 「僕達は、間違っても正しながら、話し合い生きていきましょうね 康太の真贋には、僕と君の未來が交じって見えますか?」 康太は榊原に口付けた 「見えるよ! 不安に思う事なんかなかったのに… オレは無くす不安で、更に不安になってた…伊織が忙し過ぎたのも …いけないんだ」 「僕はこのまま、大学にあがります 康太と共に上に上がります だから、大学の近くにマンションを買おうと思って、少しだけ仕事を増やしました それにこれを康太に贈りたかったのです」 榊原は枕元に置いておいた箱を康太に渡した 「これは?」 「ペアピアスとリング」 空けてみて…と、言われ開けてみると…使い方が解らないモノが… 康太が戸惑うと 「使い方が知りたい?」 康太は頷いた 「もう一回終わったら教えてあげます…」 榊原の性器は力を蓄え、上に乗せた康太の孔を狙っていた 榊原は、上に乗せた康太の脚を開くと…体を押さえ一気に貫いた 「ぁっ…あぁ…んっ…」 体を熱いマグマで焼き尽くされそうな熱に魘される 二人だけしか味わえない…世界に酔う 避けていた時間を埋め尽くす様に、求めあった 康太の部屋に備え付けられたシャワー室で、体の汚れを落としベットに戻った シーツを変え、ベットの上でキス 康太は榊原の膝の上に乗り、榊原の贈ってくれたプレゼントを見た 「これは…何?」 「これは康太の足首に嵌めるアンクレットです 僕のモノだと言う証です! 一度嵌めると絶対に外せません だから一度しか見えません 中を見て下さい康太…」 康太はリングの中を覗き込む 『Eternal love is promised. from Iori』 と書いてあった 「伊織…」 「君に永遠の愛を誓います これは一度嵌めると、切らない限り絶対に取れないですが、良いですか?」 康太は頷いた 榊原は康太の足首にアンクレットを嵌めた そして爪先に口吻けを落とした 次はピアス 「これはペアで着けます 何処に着けるか知ってますか?」 康太は首をふった 「ヘソですよ 痛いから嫌ですか? 僕もやります! 指輪とか僕らは目立つものは嵌められない…でも君は僕のモノです 誓いと証が康太には必要なんだと用意しました」 「良いよ!嵌めても…」 「康太のは僕がやります 僕のは康太がやって下さい」 「出来るかな…」 「やるんです! 僕は君以外のモノにはなりたくない 君のモノにするんです 僕は君を誰にも渡したくはない だから、僕のモノにする!」 榊原は器具を康太の手に持たせた そしてスマホを渡し、こんな感じでやりなさい!と、指示した 榊原は準備万端、消毒液まで用意していた 「康太には乳首にも入れあげます!」 康太はふるふる首をふった 「君は誰のモノですか?」 「伊織の…」 「だったら不安にならない位愛してあげます 僕のモノだと、証を刻んであげます 大丈夫です 最高級のを選びました 君の中で、君の一部になります 僕も君のモノになります ペアなんですよ?これは!」 狂気を孕んだ榊原の瞳が康太を射抜いた 康太は榊原の臍を消毒すると、ピアッサーを当てた 臍の肉を摘まみピアッサーの引き金を引く 「……っ…ぅ…」 伊織の顔が苦痛に歪む… 「オレ…間違えた?」 「いいえ、間違ってません 見て康太 僕は君の一部になった証です これは康太の誕生石です 康太の方に僕の誕生石が入ります」 新しいピアッサーを榊原が持つ 康太の臍と左乳首を消毒を始めると 指が康太の乳首を弄んだ ツンと立ち上がった乳首に、榊原はピアッサーで撃ち抜いた ヘソも……… 一気に…少しでも痛みを軽減するかの様に、手際よく撃ち抜いた 「……ぅっ…」 康太の口から呻き声が漏れた その口に接吻を落とす 「僕達は互いがいないと、生きてはいけない だから互いを縛り付け束縛しあい生きていきましょうね」 榊原の執着は果てを知らない 一人では生きてはいけないなら…    互いを縛り付け生きていこう… 二人は互いを束縛しあうため… 深い眠りに落ちた 翌朝何時もより早く起き、学校に向かうべく食事を取った ガツガツ、ポリポリ、今日も康太は元気だった 悠太は、康太の食欲に押され気味 飛鳥井玲香は、微笑みながら家族を見ていた 榊原はお行儀良く食事の最中だ 「悠太、一緒に行こうぜ!」 康太が頬にご飯粒を着けながら言う 榊原は康太のご飯粒を顔を近付け食べた 悠太は、赤面 榊原は知らん顔 「悠太、早く食え!」 藪蛇だぁ…とばかりにご飯を駆け込んだ 「あっそうだ! オレもうすぐ修学旅行だかんな 母ちゃん、何欲しい?」 「康太が元気で帰って来るなら、我は何もいらぬ!」 康太は嬉しそうに笑った 「伊織君、また泊まりにいらっしゃい」 母に見送られ、悠太と一緒に登校した 「寮に戻って着替えないと…制服ないやん」 悠太と橋の所で別れ寮に戻って着替えて登校した 学校へ歩いていくと… 高等部の校門に生徒会長 兵藤貴史が、立っていた 康太は何も言わずに横を通った 横を通る瞬間、兵藤は見た 満面の笑顔を兵藤に向けた笑顔を…… 振り向くと…もう康太はいなった 風の様な掴めない 掴めないから…欲するのか…… 兵藤は、目を瞑った 今の笑顔を焼き付けるように 君が見ていてくれるから 歩いていこう 躓いたら…君に逢いにいこう 君に人生の指針を置こう 君のいるこの場所に自分もいた 時を刻めた お前が見える場所に行こう お前に見える仕事をしょう お前がいるから…先に進もう

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