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第44話 休息②
「清四郎さん、一晩中着いていてくれたんですか?
真矢さんも笙さんも…申し訳なかったです
オレの失態で伊織に心配かけさせた…」
康太は頭を下げた
清四郎は康太に謝らなくて良い…と言った
「君が謝る必要はないです
君が生きていてくれるだけで…
伊織は生きていける…
だから、生きていて下さい」
清四郎の言葉に康太は頷いた
その時、ドアがノックされ一生が開けに行くと
出勤前に康太に逢いに来た瑛太が立っていた
瑛太は病室に入って直ぐに、榊清四郎と家族を見て頭を下げた
「一晩中着いていて下さったんですか?」
瑛太が言うと、清四郎は昨夜康太君の怪我を知ったので駆けつけました…と、瑛太に話した
「しかも…伊織は一言も教えてくれませんでした」
…と、恨み言も少し交えて…
瑛太はそれを笑って聞いた
そして、買って来た大量の「森の熊印のロイヤルミルクティー」を榊原に渡した
「康太、君が言っていた森の熊達が大きな釜で煮込んで作ったロイヤルミルクティーです」
瑛太が言うと、康太は榊原から一本もらい、蓋を開けてもらった
康太は一口飲んで、瑛太に親指を立てニカッと笑った
それを見てから、瑛太は清四郎に向き直り頭を下げた
「本来なら、康太は私の弟
私共が看病をせねばならないのが努め
ですが…伊織君と弟を引き離すのは忍びず、看病をさせてしまい、彼には無理をさせました
お許し下さい」…と、詫びを入れた
清四郎は慌てて、瑛太を引き止めた
「頭を上げて下さい
伊織は康太君の側を離れないのは解っています
瑛太さんには苦渋の決断でしたでしょう
伊織に看病を任せて戴けた…
それだけでも伊織が飛鳥井の方に信頼を受けた証拠
本当にありがとうございます」
清四郎は瑛太の手を取り、感謝の言葉を述べた
一生にも一本、熊が混ぜてた作ったと謂うロイヤルミルクティーを渡し
榊原も飲んでいると…、またノックが響き渡った
今度は一生を押し止め、榊原がドアを開けた
看護師の朝の回診の時間だった
看護師は部屋に入って驚いた…
部屋の中には…榊清四郎 北城真矢 九条笙…
そしてイケメン揃い…目眩がする程豪華で…
その時、ドアがノックもなしに開き
ロケから帰ってきた一条隼人が病室に入って来た
看護師は康太に体温計を渡し、脈を取りそうそうに退散した
「康太…ロケから戻ったのだ」
一条が報告する
康太は「ちゃんと仕事したか?」と、聞き
榊原は一条にも熊が混ぜてた作ったと謂うロイヤルミルクティーを渡した
瑛太は康太の横に行き
「兄は出勤の時間になったから、行くけど
何か欲しいものはありますか?」と問い掛けた
すると康太は
「腹一杯食いてぇな…汁しかないご飯は嫌だ」
…と、涙ながらに語った
意味が解らず瑛太は榊原を見た
すると榊原は、流動食でお粥もお米すらないんですよ…
腹へったって、食べた後に言うから………
困ってるんです…と苦悩を話した
「瑛兄、スプーンで終わる飯は嫌だぁぉぁぁ」と、甘える
「康太…兄はお前に食べさせてやりたいが…
今回ばかりは医者の判断だから…我慢しなさい!
そして伊織君を困らせては駄目ですよ!」
瑛太にたしなめられ、唇を尖らせた
折れるしかないのだ、甘い兄は…
「昼休みに、お前の好きなプリンを買ってこよう」
康太は「やった!」と悦び、笑顔を見せた
じゃあ私は仕事があるので…と
清四郎に言うと、私共も仕事があるのでご一緒します
と言い、病室を後にした
「また来ます!」
と、康太を撫で榊原の肩を叩き
清四郎と真矢と笙は、瑛太と共に仕事に出掛けた
病室に静けさが戻った
康太は清四郎達がいなくなると、部屋にいる全員に「一旦帰って寝てくれ!」と告げた
自分の所為で、無理などして欲しくはないのだ
「康太…本気で言ってます?」
榊原が強い口調で聞くと…
康太は「本気だ」と、答えた
変わりに一生が口を開いた
「康太は自分の所為で疲れていく俺等を見たくねえんだよ
だから言ってんだろ!
隼人の時みたく順番に見れば良いんだよ!」
一人の人間が総てを背負うなんて無理な事なのだ
許容以上のを越えたら……
それは重荷にしかならない…と、康太は言う
自分は重荷にはなりたくねぇ…と
榊原は「じゃあ疲れたら休みます
夜も君さえ寝てくれれば、僕も寝ます
僕は着替えと風呂以外はこの病室から出ません
疲れたら寝ます!それで良いですか?」
と康太に尋ねると、康太は頷いた
朝食の時間になり、ガラガラと台車の音が響き朝食が運ばれて来る
トレーに乗った朝食がベットまで運ばれ…
見るだけで悲しくなる朝食を、榊原に飲ませてもらう
食べはじめて…直ぐになくなり…
またスプーンを食わえた康太が榊原を見た…
「昨日、プリンを買いました!食べますか?」
聞くまでもないが、聞くと…康太はうんうん!の頷いていた
蓋を開けて康太に渡すと
本当に嬉しそうに、康太はプリンを食べた
プリンを食い終わると、一条に
「お前、朝飯前は食って来たのか?」と問い掛けた
一条は、ふるふる首をふった
康太は榊原を見詰め
「食わせてやってくれ…」と頼んだ
「お前ら全員、飯食いに行け
オレは眠る
無理すると10日で帰れないからな
無理はしないから!心配すんな」
康太に言われたら、行かない訳には行かない
榊原は、じゃあ寝ててくださいね……と言い
全員を連れて病院の近くのファミレスに行くことにした
誰もいなくなった病室で康太は目を閉じた
無理をすれば治らない…だから、眠る事にした
悠太は、康太の病室の前にいた
ノックをしても開かないドアに、自分で開けて病室に入った
中には誰もいなかった
そして康太は寝ていた
悠太は、康太の横に行き傷付いた兄を見た
康太の髪に手を伸ばし…触る
頬に手をやると、暖かな体温が康太の存在を確かにしていた…
「悠太…お見舞いか?」
眠っていると思った兄は起きていて…真摯な瞳で悠太を見ていた
「こんな怪我して…
所で皆はいないの?
康兄の場所に何故着いていないの?」
悠太の言葉に「全員食事を取りに行かせた…」と告げた
「皆、寝る間も惜しんで着いていた
明らかに疲れているのに…側を離れない
だから、ご飯位は食べさせないとな
食いに行くように言った」
夜も昼も朝も…榊原は付き添って…
体を壊す前に何とかせねば…と、兄…瑛太が話していた…
そんな榊原を見て康太が平気でいられる筈などないのだと…悠太は、知った
「康兄は何時も無茶ばかりする…」
「それがお前の兄だ!覚えておけ」
悠太は、笑った
康太らしい物言いに、悠太は子供の様に笑った
「康兄…俺は、康兄の守った桜林を引き継ぎ守って行くよ」
悠太は、宣言した
また少し弟は逞しくなった
身長も…かなり伸びて…瑛太に引けを取らなくなるにはまだ少しあるけど
確実に悠太は、瑛太に酷似して育つ
康太は悠太の頭に手を伸ばし撫でた
朝食から帰って来た榊原は、病室に悠太がいて驚いた
悠太は、康太の横に座り子供の様な顔で兄と話をしていた
こうして見ると兄弟なのだと…改めて思う
「悠太、来てたんですか」
榊原が声をかけると、悠太は康太の横の席を榊原に譲った
「伊織君、ちゃんとご飯食べてよ
一生君も四宮君も一条君も、本当に康兄の面倒を見て下さって、ありがとうございます」
と、悠太は全員に頭を下げた
「康兄を頼みます
我が儘だから…この人
母ちゃんが腹へった!って、伊織君を困らせてなきゃ良いんだけどね…って言ってた
ちゃんと我慢しなよ康兄!」
悠太は、少しだけお説教をして学校に行った
康太は…母の予想通りで…
クソ解ってるなら飯の差し入れくらいしろ母ちゃん!と、怒っていた
入院して1週間
康太は起き上がって、トイレ位は1人で行ける様になっていた
ご飯もお粥から、ちゃんとしたのになったが…
そこは病人食、量は少なかった
この日の康太は突拍子もない事を言って一生を困らせていた
「一生、城之内に連絡したら変わってくれ…」
康太が一生に、城之内に電話をしろと言う……
が、もう刃を向ける学校はいないのに
何故城之内に用があるのか…不思議だった
だが、言われた通り城之内に電話を入れ、康太に変わった
「よぉ城之内!お前に頼みがあんだよ」
城之内は、康太の頼みなら何でも聞いてやるから
さぁ話せ…と安請け合いした
康太は唇の端を上げ嗤って
「門倉仁志を此処へ連れて来てくれよ!」と言い放った
城之内は、マジかよーと唸った
「此処へ門倉を連れてこい!」
再度言うと「夕方には連れていく…」と言い、城之内は電話を切った
一生は「何故お前に刃を向けた男を呼ぶ!」と、怒り心頭だった
そんな一生を四宮が止めた
「康太には考えがあるんですよ!
この場に来て、門倉が何かしたら……
僕は殺してやります!
だから一生は黙ってなさい」
康太に全面的に甘いのは四宮だった
康太が決めた事なら何でも受け入れる強者に言われたら…聞くしかない一生だった
「康太…聡一郎があぁ言うなら何も言わん
だけど何故呼ぶかだけでも教えろ」
康太はベットに腰かけると足を組み不敵に鼻を鳴らした
もうパジャマを着て、包帯は見えなかったが
、パジャマの下は包帯が巻いてある
傷は確実に康太に傷付け血を流した…
「門倉は使える男だ
布石を打っておいたら、今後役に立つ
しかもアイツは2年生だ
来年もある
此処でアイツを落とすか今後に使うか……
差は出て来るんだよ
門倉は、従兄弟の相馬に言いように踊らされた…
担がれようが悪かった…
でもアイツはオレと互角か優勢だった…
オレは最後は捨て身に出たから勝てた
捨て身にならなかったら…
今頃はアイツの配下だ」
康太の言葉に…全員言葉を失った
夜7時を過ぎた頃、城之内は門倉仁志を連れて
康太の病室にやって来た
門倉を間近で見ると、背は高く精悍な顔つきをしていた
康太は門倉を見ると、ニャッと嗤った
「門倉仁志!もっとこっちに来い!」
康太が言うと、渋々康太の側に寄った
「飛鳥井康太!
俺がナイフでも持ってたら、お前は確実にトドメを刺されるぞ!」
門倉が吠える
康太はその言葉を笑い飛ばした
「その前に確実にトドメを刺されるのはお前だ!」
康太を取り囲む人間は、康太に刃を向けた瞬間に
門倉の息の根を確実に止める
門倉は、息を飲んだ
「門倉、今回の敗因は何処にあると思う?」
康太が尋ねると、門倉は
「一番最初にお前の動きを止めなかった事だ!」と、言い放った
康太は笑った
「オレの動きを止めたって、動き出した策略は止まらねぇ
お前の敗因はオレ等にはない
お前の乗った泥船にある
何故担がれた?
従兄弟に言いように踊らされたのは、何故だ?」
「アイツは…賢い
1つ上のアイツと、俺は何時も比べられていた
それが嫌で俺はグレた
今回…何時も威張ってたアイツが俺の所へ来た
お前を関東1にしてやるから…力を貸せ…と」
「それで乗るお前じゃねぇだろ…?」
門倉は唇のを噛んだ
「アイツは俺の恋人を人質にしたんだ…」
「それで、泥船に担ぎ出された訳か…
で、恋人は助けられたのか?」
門倉は首をふった
「元々…相馬の女だったんだ
作戦の為…俺に近付け寝るように指示した
俺は有頂天で、彼女の為なら…って思った…
でも総て終わって逢いに行ったら…もう用はないって…」
門倉は、身内からも恋人と信じた女からも裏切られ…ボロボロだった
「門倉、お前には後1年学校がある
お前は城之内のグループと、うちと同盟を組んで来年頭に立て
うちと同盟を結んでいない学校と更に同盟を結んで、抗争のない絶対の立場を手にいれ統一してお前は頂点に立て」
康太の顔を…門倉は凝視した
「冗談は…」
言いかけた門倉を、止め、康太は更に続ける
「人を見極める目を持て!門倉仁史
見極めて人を選べ
人を見極め、人を使えねば…
お前は人には支えられないはぐれ者にしかなれねぇ
お前は此処でトドメを刺すのは惜しい
オレはお前を生かし、再生したい
どうする?門倉」
「俺は今回…勝てる気がしなかった…
あんたが相手なら…勝てねぇわ
そんなあんたが俺を生かしてやると言うのなら俺はそれに乗る!
あんたの期待に沿える人間になる!」
「今回、お前は良い所まで来ていた
だがお前は信頼できる懐刀を、持ってなかった
城之内、お前んとこの佐倉をこいつの刀に差し出せ」
城之内は、了解!と言い
今後に繋がるなら…と康太の言い分を飲んだ
「佐倉は、狂犬だ!
手懐けてお前の懐に入れろ
そしたら、お前の先が見えて来る
お前の将来、此処で躓いたままなら……
お前はクズのままだ
だからお前はそこで止まるな!」
門倉は頷いた
「じゃあ城之内、門倉を佐倉に会わせて、コンビにしろ
後はこいつが這い上がるか堕ちるか…
どっちにしろ、このチャンスをものにしなきゃ先はない!」
康太は手を振って笑った
城之内は、仕方がねぇなぁ!と、門倉を連れて帰って行った
門倉が帰った後一生は…成る程!と、納得した
顔つきも変わって化けたのを見ると、此処で捨てるのは惜しい
「一生、門倉は関東を統一して絶対の安全を築くだろう
悠太が学園を引き継ぐまでの布石にした
オレも大概、悠太には甘いんだよ
戦国の世を渡すのは忍びない…」
康太の言葉に一生は、んとにお前は甘いからよぉ!と怒った
「伊織…人は持ってる器も、許容の量も違う
己から光り輝かける者もいれば、人に手を加えられかければ輝けないの者もいる
門倉は後者だ
アレは、己の力を知らない
コンプレックスで目が見えてねぇ
それを拾って磨いて使うのも…人の役目
何故オレが相馬と神崎を捨てて、門倉を拾うか不思議だろ?」
榊原は頷いた
「人は犯した罪を認めて初めて先を見出す
だが…あの2人は自分の犯した罪は認めなかった
様子を伺っていたが…アイツ等は先に行かず…後ろに戻った
そんな人間に差し出す手はねぇかんな
だから切り捨てた!」
榊原は真贋の康太の目には、人の果てを見る力があるのだと思った
押さえる所は押さえて見ている
きっと…飛鳥井源右衛門は、そうして康太を育て上げ
曲がらないように兄弟で守って来たのだろう…
榊原は、康太をベットに寝かせ大人しくさせた
8日目の朝、医者が回診に来て傷を見て消毒をした時
医者は悔しそうに「坊主……根性で治しちまったな…」と言った
「2日後、退院して良い!
坊主の言った10日で退院させろ!
約束10日目で退院させてやる!」
医者はそう言い、病室を後にした
医者が帰った後、康太はベットの上で親指を立ててニカッと笑った
昼休みに病室に来た瑛太に、後2日で退院だよ!と抱き着き、甘えた
「瑛兄、家に帰ったら沢庵食いてぇ!
母ちゃんの飯をたらふく食いてぇ…」
瑛太の弟は………何年も食ってないかのように…飢えていた
「寿司も食いたいし
牛丼も牛タンも焼き肉もステーキも食べたい…食わせろ」
相当腹が減ってるのか…瑛太の手を噛みついた
榊原が慌てて止める…が
瑛太は気にしなくて良いから…と、康太の好きにさせた
「瑛兄、退院したら、飛鳥井の役割を再開するかんな!
オレはオレのすべき事をする
その前に少し甘えただけだもんよー」
瑛太は、退院したら飛鳥井の役割を果たそうとする康太に
「少し休養してからにしなさい…」と、声をかけるが
康太は首をふった
「オレが入院して…伊織の足も引っ張った
やらなきゃいけねぇ仕事も…停滞させた
これ以上…甘えたら罰が当たる…」
瑛太は…言葉をなくした
「それは、伊織君と話し合いなさい
康太が一人で決める事じゃない」
瑛太は康太の頭を撫でて…帰って行った
病室の一生は、四宮と一条を連れ立ち上がった
「瑛太さんも言っただろ話し合え!
じゃ当分俺等は帰って来ねぇよ
ちゃんと話し合え!
ついでに、部屋に入らねぇようにナースに言っておいてやる!
2時間密室にしてやんよ
旦那…康太は怪我人だ
それだけ忘れんな!じゃっ」
そう言い、病室を出て行った
榊原は康太を抱き上げると、膝に乗せて康太の目を見詰めた
「康太……どうしたの?話をして?」
康太は榊原の頬に両手を添え、キスした
「伊織はオレの為に時間を使った
本当は執行部もお前がいないと…回らないのは知っている
仕事もたまってんだろ…夜中までPC打ってるの見ると…無理させてるな…って感じてた…」
「無理なんか…してない
康太の側にいる為なら…どんな事でも僕はする
康太は違うの?」
「違わなねぇ!
伊織といられるなら…どんな事でもする」
触れる素肌は熱を帯びるのは早い
互いを感じれば火が点き燃え上がる
康太に接吻するだけで…体は康太を欲する
榊原のカタチに絡み付く肉を欲する
榊原は、康太の唇に舌を挿し込み口内を犯した
絡み合う舌が康太の体に火を点ける
康太は慌てて顔を背けた
康太…と、榊原が名前を呼ぶ
触れ合わなかった日々が榊原を欲する
「伊織…ダメ…欲しくなる…」
榊原は康太の体に股間を押し付け
「僕も…康太が欲しくて…こんなんです…
僕は、康太の中でしか…もうイケない
僕をこんなにしておいて…我慢できる筈なんてない!」
「伊織…」
康太は榊原に手を回し抱き締めた
体が榊原を欲する
榊原も康太を欲して勃ち上がる
互いを欲していた
触れば…火が点き…求めあう
「康太が…僕のカタチを覚えて締め付けるから…もう僕は康太の中でしかイケない」
榊原の指が康太の素肌を触る
乳首に触れた瞬間…康太は榊原にしがみついた
「伊織…イッちゃった…」
涙目で康太が榊原を見る
榊原は、康太の服を脱がせ…全裸にすると
康太の口に指を差し込んだ
「舐めて…濡らして…」
言われると指を舐めた
淫靡に濡れた舌が榊原の指を舐める
口から引き抜くと指は康太の穴に挿り込み…犯す
弱い場所をわざと掻き回し…焦らす
康太は声を押さえて、榊原の胸にしがみついた
「伊織…入れて…じゃないと、またイク…」
榊原は、下半身だけ露にして膝の上に乗せた康太を犯した
挿入する衝撃に声が出ない様に、康太は自分の指を噛んだ
指が怪我する…止めると
康太は顔を上げた
榊原は康太に接吻した
康太の喘ぎが、榊原の口の中に飲まれる
榊原は、康太の中で搦み付けられ……締め付けられる
蠢く肉壁が、榊原のカタチに纏わりつく
榊原は、康太の中に…吐き出した
一度吐き出しても…榊原の現金な愚息は歓喜して更に嵩を増す
「伊織…キツい…」
「康太じゃなきゃ…ダメだって解った?」
康太も…榊原じゃなきゃダメなのだ
「伊織…側にいて…ずっと離さないで…」
本音を吐露した康太の中が凄いことになり…
榊原は、2度目の絶頂を向かえた
康太も榊原の腹に3度目の白濁を吐き出した
康太の中から白濁を掻き出し…体を拭いてやる
新しいパジャマに着替えさせ
ベットのシーツを替えた
窓を開け、換気して、消臭ミストを撒いてから…
榊原も服を着替えた
そして、再び康太を膝に乗せて話をした
「康太に触ると…止まらない
こんな僕は嫌いですか?」
康太は首をふった
「伊織と一緒にいたい
でも現実はやらなきゃいけない事が大挙してある」
「それでも……
離れたくはないんです!僕は」
「康太、互いの予定を重ならない様に調整すれば良いって、気が付かなかったんですか?」
「えっ…」
「僕が動けない時は、君が側にいる努力をして下さい
君が動けない時は、僕は君といられるように努力します
そうして僕達は前に進んで行きましょう!」
康太は頷いた
「オレ…忙しい伊織の足を引っ張ったらダメだって…そればかり思ってた
そしてオレは飛鳥井の家の為にやらなきゃいけねぇ事もある。だから…」
「そう言う時は話して下さい
思い込まないで…2人なら解決出来る事もあるんですよ」
康太は… ごめん…と謝った
「体、辛くないですか?
傷を労るつもりが…止まりませんでした
康太に飢えていたから、手加減出来ませんでした」
「辛くないけど…ピアス外されちゃった…ごめん」
「瑛大さんがピアスを僕に渡してくれたので、退院したら嵌めて上げます!」
榊原は、康太にキスを落とし
「君は僕のモノですから!」と、微笑んだ
康太は、激しい運動をした所為か
瞳がトロンとして眠そうだ
榊原にしがみつき眠りに堕ちた
榊原は、康太を抱き締め額にキスを落と下
康太を抱き締め、温もりに触れていると
ドアがノックされた
榊原は「どうぞ。」と、声をかけるとドアが開いた
一生達は、まだ最中だったらどうしょうかと思った…と、榊原を冷やかした
榊原にしがみつき眠る康太に目を落とす
「旦那…無茶させた?」
一生の言い方に
榊原は「……かも」と苦笑した
「ピアス嵌めてやれよ!退院したら……」
「ええ…嵌めてやります」
一生は微笑み…さてと寝るか
と、一条とソファーに寝そべり眠った
榊原は、かなり長い時間康太を抱き締め
ベットにそっと体を横たわらせた
そして布団をかけてやった
一晩中、康太の横に座り頭を撫でていた
康太の退院の日
瑛太は午前中会社を休んで行くと言ったが
自分で帰るから気を使わなくて言い!と断った
「では前日に入院中の費用を払っておきます
気を付けて飛鳥井の家へ帰りなさい!」
と瑛太は言った
康太の入院していた部屋は個室
また飛鳥井の家に…大金を使わせた想いもあった
朝に退院前の検査を受け、問題もなく退院の許可をもらい荷造りをした
服に着替えると…ズボンがずり下がって…
榊原は、思わず目を覆った
「旦那…康太、痩せちまったやん」
一生が呟いた
腰のベルトを締め直し、何とか取り繕い
榊原は、荷物を持ち退院する
病室を出るとナースに
「退院おめでとうございます」と声をかけられた
病院を出て、外の空気を吸うと何だか久し振りに感じた
榊原は、タクシーを停めた
この日は朝から一条は仕事だから…
タクシーに乗るのは4人…ギリギリセーフだった
タクシーに乗り、飛鳥井家に到着すると
康太を待ち構えて家族が出て来た
源右衛門が康太を抱き締める
父と母も康太を待っていた
…………って、仕事は?
「父ちゃん…仕事は?」
康太が聞くと、父は休みました…と笑った
「瑛兄に仕事押し付けてぇ」
康太が怒ると「たまには良いです!」
と笑い康太の荷物を持ち、家へと招き入れ
飛鳥井の家に着き、暫くすると一生と四宮は寮の様子を見に行くと告げて帰って行った
破壊された寮の部屋の様子をずっと見に行きたかったけど、動けずに放置した
でも康太が退院して家にいるなら……
離れても問題はないと踏んだ
飛鳥井の家にいるなら、安心だったから…
榊原も一度どんな状況か見に行くと言い
康太の父が、私が乗せて行こう……と言った
飛鳥井の家から桜林高校は歩いても逝ける距離だったが敢えて清隆は送ると告げたのだった
榊原と一生と四宮は、寮の様子を見に行った
康太は自室で寝転がり、何時しか眠りに堕ちた
眠っていると…頭を撫でられ
康太は目を醒ました
頭を撫でていたのは、瑛太だった
仕事を終らせ家に帰って来たら
榊原も一生も四宮も、寮の部屋が荒らされたから見に行ってきます…
と言って外出中だった
部屋をノックすると…応答はなく
鍵もかかってなかったから、部屋を覗くと康太は寝ていた
「瑛兄…」
寝ぼけ眼で瑛太を見る
「疲れたか?寝ていると良い」
「瑛兄…入院してた病室、個室だったから
またお金を使わせた…ごめんな…」
康太が謝ると、瑛太は…お前は気にしなくて良い…と言って頬を撫でた
「今日は母さんが、お前の好物を作ってくれる
食べたかったんだろ?」
瑛太の言葉に康太は…食べたいけど…食べれないと思う……と答えた
瑛太は…何故?と聞く
「食べれなかった日があったから…そんなに食べれない」
体を見ると、少し痩せた
瑛太は康太を起こすと、膝の上に乗せた
「……軽くなってる…痩せた?」
康太は…仕方ないもんよー…と呟いた
「食べれるだけで良い
好きなのを食べなさい!」
康太が頷くと、瑛太は微笑み頭を撫でた
そして康太をベットに寝かせた
部屋を出て行こうとする瑛太に…康太は
「ありがとう」と告げた
瑛太は何も言わす…部屋を出て行った
康太の部屋を出て、応接間に行こうとすると
清隆と榊原が帰ってきた
一生と四宮の姿がなく…声をかけた
「一生と聡一郎は?」
すると、二人は一条の部屋で泊まるから…
と寮に残ったと告げた
「伊織、寮の部屋はどうでした?」
瑛太が話しかけると榊原は
「壊滅でした……
今修繕工事の真っ最中で…
当分、寮には入れません
まぁ夏休み中なので…
新学期には間に合うそうです」
「夏休み中はどう過ごす予定なんですか?」
「執行部の仕事を停滞させてるので
僕は寮へ戻ります!」
「寮が使えないんだよね?
だったら、此処から通えば良い」
瑛太が言うと、榊原は
「そうもいかないので、暫くは寮の他の部屋を借りるつもりです」と言った
「二人でそれも話し合いなさい」
瑛太は榊原の肩を叩き、側を放れた
榊原は康太の部屋へ行き、ドアを開けた
康太は起きて榊原を待っていた
「康太、寮の部屋を見てきました」
「どうだった?」
「壊滅でした
今、修繕工事の真っ最中です
夏休み中は、寮には残るなら他の部屋を借りる様に話をしてきました」
「此処から通えば?」
「康太…毎日、お世話になる訳にはいきません
執行部の仕事も片付けなければなりませんし…寮に戻ります…明日」
「んじゃあ、オレも寮に帰るわ」
康太はあっさり言った
「康太…」
「伊織の側にいる時間を作る努力をする
離れて暮らすのは嫌だかんな!
伊織が帰るならオレも行く
何処で何をしてても、帰る場所は一緒が良い!
伊織はオレと離れて暮らせるのか?」
「康太と離れて暮らせる筈はありません
でも…退院したばかりの君を連れていくのは…気が引けます」
「伊織、ならお前が此処で暮らすか、
オレが寮に行くしか一緒にはいられない!
オレがいない場所で、お前は過ごすのかよ?」
康太のいない場所…
部屋に康太がいないだけで…
淋しくて仕方なくなる…
共にありたいと思う
康太…
「康太、明日、一緒に寮に帰りましょう
本当は…君に逢いに通うつもりでした…
幾ら飛鳥井の方に許して戴いたと言っても…毎日お世話になる訳にはいきません
だから毎日、君に逢いに来るつもりでした」
「伊織の言いたいのは解る
生活をこの場所に移すには、気が引けるのも解る
だったらオレがお前の望む側に行くしかねぇ!」
「康太…一緒に帰りましょう」
「おう!8月になったら、オレは白馬に行く
それまでにメドをたてねぇと、逢いにも来れねぇ遠距離恋愛だもんよー」
康太は笑う
キラキラ輝いて…笑う
その顔を見ていられるなら…
どんな努力も惜しまない
君といられるなら…
君といられるようになら…
僕は何だってするだろう…
康太を抱き締め、手の中のいとおしい存在を確かめる
「伊織、飯だ
食いに行って
明日の朝、帰ろ
だから、飯食いに行くもんよー」
榊原は、康太を名残惜しそうに離した
そんな榊原の手を引き、康太は部屋を出る
そして飛鳥井のキッチンへ向かった
康太の好物ばかり食卓台の上に並べてあった
キッチンには伊織の椅子も用意して待っていたのだ
椅子に座りご飯を食べると
康太は明日、寮に帰るのを告げた
退院して…翌日には…
もう帰ると言うのか…この子は…
玲香は…まさか、そう出て来るとは思わなかった…
「帰るのは構わぬ
お主の好きにすれば良い
でも康太…一度話し合いの、時間を設けてもらわねばなるまいて!」
「何の話し合い?」
「来年になったら…お主は戸浪の子供をもらうとであろうて!
何処で…その子を育てるのじゃ?」
「オレは伊織と育てる」
「飛鳥井の手を借りずにかえ?」
「母ちゃんは、オレに何を言わせたい?」
「此処に住むしかないと思わぬのか?
子供と寮には住めはせぬ
そしたら、どうするのじゃ?
赤ちゃんを抱えて…お主はどうする気なのじゃ?
お主は…本当に何も言わぬが我等は心配しておる!
家族の心配が何故解らない?」
「母ちゃん、伊織に此処に住めとは…オレは言えねぇ
だったら、オレは伊織と共に行くしかねぇ
幾ら母ちゃんが気にするな…と、言っても…この男は気にする
ならば共に行くしかねぇ」
「康太…」
「母ちゃん、オレの人生の果てには伊織がいる
だからオレは伊織と共に生きたい
それが間違ってるのは解る
親不孝してんのも解る
だけど、オレは伊織を選んだ瞬間から…覚悟は出来てんだよ」
玲香と康太の会話を聞いていて、源右衛門は似た者親子だと痛感する
そしてお節介を焼きたくなる源右衛門だった
「康太…此処はお前の家だ
だがそれを伊織に押し付けられない…と、思ってるんじゃろ?
ならばお前は、その男と共に行くが良い
だがな康太、お前は人の子供をもらうと言った
戸浪は渡すと言った
だったら子育ての場を何処へ移すして家族全員で育てて逝くしかない
何故康太はそれを謂って来ない?と心配しておるのだ…解るな?康太」
「解るよ、じぃちゃん
飛鳥井の手は借りなきゃいけねぇ時もあるだけど、此処では住まない」
「なら、お前の家族が住める部屋を建てしかあるいて?」
「じぃちゃん…無理な事言うな!」
「なら、車庫を潰してお前の家を作ってやろう」
「じぃちゃん!」
「康太…わしはお前の子供の守りをする
それは譲らん
ならば近くに住むしかあるまい
お前は、言った
わしに子守りをさせてやると
ならばわしは、譲らん
お前の血を引いてなくても、意思を継ぐならお前の子供だ」
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