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第45話 還る場所
飛鳥井源右衛門は、言い切った
「じぃちゃん、飯食ってからで良いか?
その話し
飯食ったら、話し合いするかんな!
でないと、家からじぃちゃんが出してくれそうもねぇからかんな」
康太はニカッと笑った
その光景を、学校から帰った悠太が見ていて唖然となった
どいつもこいつも…康太には甘い!
「康兄ちゃんは、伊織君と離れる気はないのは、皆解ってるのに、何故無茶を言う
本当に康兄には甘いんだから…」
悠太は、康太の横に座ると机の上に…森の熊印のロイヤルミルクティー2本、置いた
「康兄の好きなのだよ
はい。伊織君のもあるよ」
と、せっせと世話をやいた
…………お前が一番…康太に甘い…と、言う視線を向けられる
「ねぇ母ちゃん、康兄の初恋の人って誰か知ってる?
俺は最近、一生くんに聞いた」
悠太に聞かれ…そう言えば…康太の初恋の人って…聞いたことない
と、全員首をかしげた
「康兄の初恋の人は、伊織君だよ
康兄は、伊織君のストイックさに…片想いしてたんだよ
初恋から恋人になるまでの、康兄の気持ち解る?
康兄は、ずっと伊織君の横に行きたかったんだよ…
憧れて、涙する位…伊織君が好きで…想いを募らせてた…って一生くんが言ってた
伊織君は、康兄の初恋の人なんだよ」
悠太の言葉に家族は唖然となる
「悠太、話しは飯食ってからだ」
康太が悠太を止める
康太は…あまり食べる事なく夕飯を終えた
母親が、もう食べれないの?と聞くと
ずっと食べれなかったから…食えなくなった…と笑った
悠太の買ってきたジュースを飲む姿を見ると、痩せて小さく感じる
………両脇に榊原と、悠太がいるからかも知れないが…康太が細く見えた
康太は榊原の食事が終るのを待って、応接間に行く
何時もの席に座ると…家族が呼ばれ揃った
家族全員が揃って、どうやって話を切り出そうかと思っていると、瑛太が口を開いた
「康太、明日、本当に寮へ帰るのか?」
瑛太が問うと康太は「あぁ帰る!」と答えた
「伊織の仕事がたまってんだよ
オレが怪我したから…だ」
「仕事…?執行部の?」
瑛太が首を傾げる
「それもある
オレが中、高合同桜林祭を打ち出したから、生徒会と執行部は大変なんだよ
しかも伊織は仕事を持ってんだよ
それで今後も食っていけるだけの稼ぎはある」
康太の言葉に家族は唖然となった
瑛太は気を取り直して、榊原に
「伊織……差し支えなければ、仕事の内容を、教えてもらえないか…」
…と、聞いた
榊原は、自分には役者として生きていく才能はなかったけれど
役者を使う目は確かで、脚本家として、今後も生計を立てて行くつもりです…
と、話した
そして、自分は「幸田 飛鳥」と言う名前で脚本の仕事をしています。と、付け加えた
幸田飛鳥
今、一番売れている人気の脚本家
彼の手掛ける世界は、役者を上手く引き立てて
彼の手掛ける作品の世界になりたい…
と、志願する女優が、後をたたない…脚本家だと言うのか…
幸田飛鳥の手掛ける時代劇もまた素晴らしく
視聴率の取れない時代劇を、高視聴率に持っていくのも…幸田飛鳥だった
「今の大河ドラマの脚本家…」
玲香が呟いた…毎週見てる時代劇の脚本家は、頭に入っていた
「伊織、近い将来……君は康太との事をどう考えている?
聞かせてくれないか?
良い機会でもあると思う」
榊原は、姿勢を立たし瑛太を見た
「僕は康太と共に暮らすマンションを大学の近くに買うつもりでした
この先も康太と離れる気はありません
康太と共に子供を育てる覚悟は出来ています」
榊原は、キッパリ言った
「伊織、うちのじぃさんは頑固だ
言ったら聞かないのは、康太と瓜二つ
じぃさんは康太を側に置きたい
そうしたら…君はどうする?」
「そうしたら、生活の場を此処へ移します」
榊原の言葉を受け、瑛太は家族に言う
「康太の部屋では、伊織君は仕事もしずらいだろう
遠慮するなと言っても、遠慮は出る
じぃさん、諦めるか?」
瑛太が言うと源右衛門は、嫌じゃ!と答えた
「駐車場を壊して康太の家を建てる!」
宣言する源右衛門に、康太は、じぃちゃん…と、声をかける
「無茶言うな、じぃちゃん
瑛兄が困る事言うな」
「康太は…わしに子守りをさせてやると…言わなんだか?
わしは楽しみにしている
なのに…たまにしか…じぃちゃんに子供を見せてはくれんと…言うのか…」
飛鳥井源右衛門は泣き出した
康太は困って、瑛太を見た
飛鳥井玲香は決意を決めた
「康太、お前は飛鳥井の子供だ
約束は守れ
その為なら、母はなんだってしょう
お前等夫婦の部屋を作るために
このビルは、改修工事を入れるか
建て直すか決める
どの道、源右衛門はうちの駐車場の採寸を計ってて家を建てるつもりだ
…我は源右衛門の本気を知っている
伊織、君には婿養子に来るような肩身の狭い想いはさせない
だから、源右衛門の想いは汲んでやってくれないか…お願いします」
と、飛鳥井玲香は、榊原伊織に頭を下げた
榊原は、困って…康太を見た
「伊織、嫌なら断れ
無理して決めるのはダメだ
お前の想いのままにオレは着いていく」
康太に言われ、榊原は口を開いた
「僕らは男同士ですが、愛し合っています
男同士ですが…体を繋げ愛し合う現実は…
毎日一緒に生活するなら目に入ります…
そうした時に…嫌悪を持たれるなら…
距離を取りたい…と、言うのが僕の本心です
此処は康太の居場所
僕がなくす訳にはいきません」
榊原は、そう言い…頭を下げた
榊原の言葉の端々から…苦悩が伺える
瑛太は苦笑して、榊原に話す
「伊織君…君は初めてうちに挨拶に来た日を覚えてるかい?
あの日の康太は…凄かった
身体中にキスマーク付けて…あれで君達がプラトニックだなんて…誰も思ってないよ?
嫌悪なんてしないさ
君は康太の果てにいる者
共にあれば良い
さっき母さんは君達の夫婦の部屋…と、言わなかったかい?」
榊原は、瑛太を見た
その瞳から涙が零れ…榊原は深々と頭を下げた
「僕は康太と共にあるのであれば…住む場所は…構いません
康太さえ僕の側にいてくれれば…」
綺麗な涙だった…
家族全員が息を飲む…涙だった
榊原は、榊原で苦悩して、遠慮していたのだ
「夏休み中は此処で暮らせば良い
どうせ8月になったら康太は飛鳥井の厩舎に行く
君も行くと良い
君は康太と共にあれば良い」
瑛太は言い切った
「来年の2月までに、この家をリフォームをして君達夫婦の部屋を用意する
だから、子供が来たら此処で育てなさい
君達が困ったら差し出す手もある
伊織の仕事部屋が出来るまで、この応接間でやると良い」
瑛太が言うと玲香は榊原の前に行き、飛鳥井の家の鍵を渡した
「この家の鍵じゃ
近いうちに榊原の家の方と話し合いをしょうぞ!
康太が白馬に行く前が良いわわな
伊織、よいか?」
榊原は「はい!父には言っておきます」と、礼儀正しく礼をした
話が着いたのを見計らって、康太は立ち上がった
「話しは着いたし
さぁ部屋に戻ろうぜ!
オレは眠ぃんだよ!
オレは寝たら起きねぇぜ…
大人しく添い寝するんなら、構わねぇが
違うんなら早くベットに連れてけ」
康太は榊原の背中に…おんぶお化けみたいに抱き着き急かした
榊原はすみません…と、謝り応接間から立ち上がった
「伊織君…それを背中に背負って行くのかい?」
榊原は、よくある事ですので…と、苦笑した
悠太は、大爆笑した
「康兄、最高!
苦しい片想いの果てに掴んだ男だ!
絶対に離すんじゃねぇぞ!」
と、康太に檄を飛ばした
康太は、おう!と、親指を立てて笑った
「これはオレの愛する男だ
死んでもオレは離さねぇよ!」
と、宣言した
応接間から出ると康太は下ろせ…と言った
が、榊原は部屋までお連れしますよ…と、笑った
康太の部屋のドアを開け部屋へ入ると、鍵をかけた
康太をベットに下ろし、榊原は康太の服を脱がした
「ピアスを入れてあげます」
服のポケットからピアスを取り出し、康太の乳首を消毒した
「入るかな?」
「痛かったら…我慢して」
榊原は、穴を確かめピアスを差し込む
ピアスは、康太の乳首に刺さり光った
臍も消毒して、ピアスを差し込んだ
「痛い?」
「少し…キツい…」
榊原は、我慢して…と一気に差し込み、チップを止めた
左の脇腹には手術の痕が痛々しかった
榊原は、傷痕に舌を這わせ舐めた
「ゃ…ぁっ…伊織…ゃめ…」
「綺麗な体だったのに…」
「ごめ…ぁぁっ…伊織…」
榊原は丹念に康太の体に舌を這わせ
ツンと尖って光る乳首はもっと丹念に…
康太の躯が仰け反る…
でも榊原は、止まらない…康太の脚を開くと
…慎み深く閉じてる穴を舐めた
指を差し入れ掻き回すと…康太の性器は震えて先走りで濡れていた
溢れて…止めどなく…零れる康太のぺニスの先に接吻
皮を捲り根元から、康太に見せ付ける様に舐め上げ…焦らした
「伊織…」
康太は榊原の服を脱がした
上着を脱がすと…勃ち上がった榊原の性器がズボンの中で苦しそうに主張していた
ファスナーを下ろし、ズボンを下着と共に下ろすと…赤黒い榊原の性器が飛び出した
血管が浮き出て…脈打つ性器は…康太同様…
先走りで濡れていた
康太は榊原の性器に手を伸ばすと、舐めた
口に入れるには…大きすぎるソレの先を舐め
…根元から袋にかけて舐め上げる
互いを高みに上げ…限界まで絶える
榊原の性器を舐めていた康太が堪えきれず
………榊原を見上げた
潤んだ瞳が榊原を見詰める…
蒸気した頬が艶めいて…濡れた唇にむしゃぶりついた
康太の脚を肩にかけ、康太の中へ挿入した
待っていた肉壁は榊原を向かえ歓喜して蠢いて…締め付ける
後はもう…夢中で求め…果てるまで…
腰を降り続け挿入を繰り返した
白濁を総て康太の中へ吐き出す…
下痢するから…中には入れないでおこうとしたら、康太は欲しいと言った
榊原のモノなら…一滴残らす…オレは欲しい…と
以来…榊原は、康太の中へ、総てを吐き出す
吐き出した後も、康太は絞り取ろうと締め上げる
再び力を取り戻し、嵩を増しても…康太の中は…決して榊原を離してはくれない
こんな躯に出逢ったら…もう康太以外は抱けない…
榊原は、何度も…康太の中へ総てを吐き出した
榊原の髪から汗が零れ…康太を濡らす
全身汗だくで…絡み合った…
クーラーなんてないにも等しい、激しい波に飲まれた
部屋の中に…はぁはぁ…と、荒い息が響き渡る
康太の躯には…紅い跡が散らばっていた
つい吸ってしまい…首筋は…隠せないかも
「康太…無理させた?」
ずるっと…康太の中から…力をなくした榊原の性器が抜け落ちた
榊原は康太を抱き締めると、回転して躯の上に乗せた
「欲しかった…から、オレも」
榊原は、康太の汗で濡れた体を抱き締めた
「でも伊織…断れば良かったのに…
伊織に気兼ねさせて…住みたくねぇもんよー」
そう言う康太にキス
「僕は君といられるなら…住む所は拘らない
でも毎日お世話になるのは…気が引けました」
榊原がそう言うと、康太は、ホラ見ろ…とボヤいた
「それは僕達が繋がり愛し合うのを嫌悪されたらどうしょう…って思ってたから…
交際を認めてもらえるだけで良かった…多くを望むのは烏滸がましい…と
思っていたんですよ
でも違うのが解りました
僕達を夫婦と呼んでくれた
幸せ過ぎて涙が出ました…」
康太は、伊織…と名前を呼んだ
「夏休み中は此処で過ごしましょう
僕は此処から桜林に行きます
そして、来年からは…此処で暮らしましょう」
「本気か?」
「本気ですよ」
康太は、なら良い…と。榊原の胸に頬を押し当てた
眠りに堕ちそうな康太をバスルールまで連れて行き体を洗い…中の白濁を掻き出す…
シャワーで中を洗う頃には…康太は逆上せてしまう
康太を連れ出し体を拭いうと、榊原も眠気に襲われ…
裸のままベットに入り…眠りに堕ちた…
一頻り眠り…起きると
榊原は服を着てPCを取り出し、電気を灯そうか悩んだ
康太はぐっすり眠っている
榊原は部屋から出て、応接間に行き電気を着けた
康太の特等席に座りPCを置く
瑛太は応接間にはWi-Fiが入っているとパスワード教えてくれたから、パスワードを打ち込んみWi-Fiの受信を確立させ
ポチポチ脚本の仕事を始めた
夢中でやっていると、テーブルにコップが置かれた
えっ…と驚き、顔を上げると…
飛鳥井瑛太が…立っていた
君と、少し話をしようと思い来ました
と、瑛太は言った
応接間に入っても、伊織君は気付かなくて…
凄い集中力だ…と、感心された
瑛太は「邪魔なら去ります!邪魔じゃないなら、少し話をしませんか?」と、話しかけた
榊原は少し待って下さい…と、言い
「脚本を送るので…少し待って下さい」
榊原はポチポチやって、データーを送ると
瑛太に向き直った
「伊織君はCMの脚本は、手掛けたりするの?」
瑛太は単刀直入に聞いた
榊原は、自分の手掛けたりCMの名前を上げ
康太にヒントを聞いて作ってます…と、言って笑った
「伊織君、君は何処かの事務所に所属してるんですか?」
瑛太に聞かれると、榊原は不思議そうな顔を瑛太に向けた
「僕は学業が優先でしたから、フリーです」
「じゃぁうちのCM、作ってみませんか?」
榊原は、えっ…?と、驚愕の瞳を瑛太に向けた
「広報は母さんの仕事です
そのうち頼まれますよ
何なら君の仕事のスケジュールを悠太に管理させれば良い
悠太は、母親の仕事を継ぐ者
君の仕事の管理や表だって君の変わりに受けることも出来ます
悠太には、それなりの管理能力は叩き込んであるので、使うと良い
雑務はなくなるでしょう」…と、瑛太は笑った
榊原は、狐に摘ままれた見たいな顔をして、瑛太を見た
「君の手助けをします
飛鳥井の家を上げて…
君のサポートをします
出来ることは総てして上げます
君は康太の果てにいる者
家族は君を認め受け入れた
これからは遠慮は抜きで本音で行きましょう」
瑛太に言われ榊原は、はい!と答えた
「私は君を中等部の頃から知っています
康太を迎えに行くたびに………
康太はずっと君を見ていた…
そして康太が見ていない時は………
君は康太を見ていた…
康太を迎えに行く私を…康太の恋人だと思いましたか?
凄い目で、君は私を見ていましたね?」
言われ…榊原は、気付いていたんですか?と問い掛けた
「君の康太を見る目には…
執着の焔が灯っていた
康太も…ずっと君に片想いしていた
君達が求め合うのは必然的だと…私は思っている
康太は…君の砦だったんでしょう?
それを壊して康太の恋人になってくれた君に私は感謝すらしている」
榊原は、この人は総てを見てきたのだと実感した
康太の片想いを…見守って来たのだ…
「康太を…ずっと好きでした…
でも康太を僕の欲望で汚して良い存在ではなかったから…僕は逃げた
康太に似ているだけで…身代わりに抱いて…逃げていたんです
だけど…寮に入るって聞いて…僕はどんな職権を使っても…康太と同室になりました…
康太を他の誰かと…と、思うと我慢出来ず、同室になったんです
行くのも地獄…引き返すのも地獄なら…
康太の側で見守ろう…と、決めたんです」
榊原は、辛い胸のうちを吐露する
「康太の長い片想いの終わりを……
一番に喜んだのは私です
康太は君以外に目が行かない
このままでは…生涯…康太は君を思い続けます
生涯片想いは…辛すぎる
君が康太を受け止めてくれて本当に私は安堵しました
君は康太の伴侶です
私は命に懸けて、君と康太を守る決意をしてるんですよ。」
瑛太の言葉に…、榊原は言葉が出て来なかった
瑛太は、長く邪魔をしてしまいましたね
と言い、キッチンから森の熊印のロイヤルミルクティーを渡してくれてから、応接間を後にした
榊原もPCを片付け、応接間の電気を消し
康太の部屋へ帰って行った
ベットに体を滑らせると…康太がしがみつく
…抱き締めると…眠気が来て…眠った
康太…君の住む場所は暖かい陽射しに包まれて
そこいる住人も…
皆…優しくて
涙が出そうに
なってしまう…
朝起きて、制服に身を包む榊原を康太は見ていた…
ストイックに着られる制服姿の榊原を…
見るのが好きだ
康太も起き出してせっせと、桜林の制服に袖を通していた
「康太も学校に行くんですか?」
「おう!一生達があっちにいるかんな
逢いに行く
一緒に行くと目立つから…別々に出るもんよー」
康太の言い分に…榊原は笑った
「別に一緒に行ったって…今更でしょう?
一緒に行きましょう」
「帰りは別々に帰るかんな
伊織は伊織の仕事をしろ
オレに構わなくて良い」
「帰りは、僕も解らないので約束出来ませんが、行く時位一緒に行きましょう」
康太は嬉しそうに笑った
キッチンに行くと、やはり中等部の制服を着た悠太が朝食を食べていた
悠太は、康太を見て…目を背けた
「康兄…その首で学校に行っちゃうの…」
悠太が思わす言う
「おう!気にすんな!よくある事だ」
よくある…事なのね
悠太は、黙った
「そもそも、オレは鏡を見ねぇから…解んねぇよ」
「鏡を見ないって…」
「伊織が総てやってくれるから…
見る必要がねぇんだよ」
悠太は、唖然とした
沢庵をポリポリ、食欲が少し戻って豪快に食う
お茶を啜ると、さてと、学校に行くわ!と、立ち上がり一緒に出て行った
校門まで来ると、康太は片手を上げて校内に消えて行った
康太は、一条の部屋のドアをノックすると
一生がドアを開けて出迎えてくれた
そして康太の姿を見ると
「また盛大に着けたな…旦那」と笑った
四宮は釦を少し上まで止めて…誤魔化そうと目論んだ
昼近くまで一条達とのんびり過ごし
昼過ぎになると、康太は立ち上がって
「ちょっと行ってくるわ!」と、言い部屋を後にした
康太は生徒会室の前にいた
ドアを開けると、生徒会役員は昼休みで
案の定会長の兵藤貴史は、机に肘を着き寝ていた
スースーと、寝息が聞こえる
康太はそっと、兵藤の横に座り膝を組んだ
肘を着いた手が、ずるり…と擦れ
兵藤の頭がガクッとズレて、兵藤は目を醒ました
康太はそんな光景を見て、笑っていた
くすくす…と、笑う声の方を見ると…康太が座っていた
「お前…何でいんだよ!」
兵藤が驚いた顔をして康太を見た
康太は「おめぇが退院したら顔見せろ!
って言ったんじゃねえか!
退院したから顔見せてやった!」と、笑って言った
「最近、サービスが良いじゃねぇかよ」
まさか約束を守ってくれるとは思わなかった
「貴史、お前が言ったんじゃねぇのかよ!
一緒にいる時間を作れ…って
だから、聞いてやってるんだよ
オレはお前のモノにはなれねぇ
だけどお前とは腐れ縁
友としていてやろうと、思った
お前の果てを見てやんよ
だから、お前はオレの前を歩いていけ!」
「お前の前を歩くとロクな事がねぇけど
歩いてやるよ!
その目をかっぽじって見とけ!」
康太は笑った
昼を終えて帰って来た生徒会の役員が、康太の姿を見つけ
「お帰りなさい」コールを送った
昼から帰って来た榊原は、生徒会室の中に康太を見つけ驚いた
榊原の、隣では清家が………
本当に10日で退院したのか…恐ろしや飛鳥井康太…と、呟いていた
「貴史、オレのタブレットの中身を見たいか?
オレの頭の中の桜林祭の絵図を見たいか?」
「おめぇは言い出しっぺだからな!
見せやがれ康太」
「貴史のPCに転送してやんよ
それで会議は今月中に終わる
来月の会議はなしにしてやんよ」
「その真意は?」
「白馬に伊織を連れて行く
すると、執行部部長が不在だと…ちと困るだろ?」
兵藤貴史は、大笑いした
「よし!お前の要望を飲んでやるよ」
康太は嬉しそうに笑った
そして椅子から立ち上がると、兵藤の胸を軽く叩いた
そして生徒会室を後にする瞬間
康太は榊原に抱き着いた
抱き止める、榊原の腕が康太に回る
その様子は至極自然で、2人の関係の深さを知る事となる…
そして康太は体を離すと……
「さてと、帰るわ!」と片手を上げて、出て行った
兵藤貴史は、そんな康太を見送っていた
清家は…凄い執着は…あっちにもあったか…と、納得した
榊原に押されているのではなく…
康太もまた…執着で榊原の所有権を【今】主張した
「伊織…」
清家に呼ばれ、榊原は何だ?と答えた
「お前…今、所有権の発動されたの…理解してるか?」
榊原は、笑って答えない
康太が人前で抱き着く事はないから……
それを敢えて抱き着くのには意味があるのだ
「さぁ会議を始めるぞ!」
兵藤貴史の号令で、役員は静まり返る
兵藤貴史は、康太の執着を見届けた…
決して…兵藤貴史のモノにはならない…
康太は…そう宣言した
ならば、そいつと行けば良い…
お前を、切って進んだのは自分だ
兵藤は、胸を握り締めた
この痛みを…生涯抱えて…
生きて行こう…と
決めたのだから…
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