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第51話 雑務は山盛り

トナミ海運で、一番大きな会議室に康太達は通された 「今日は自分のPCを持って来たからそれを使う 他のメンバーも、各々勝手な事するから、 捨てておいてくれて結構だ。 食事の用意は、頼む。 この部屋を出る気はない。 雑務は力哉に伝えてくれ その為に連れてきたかんな!」 康太は言うだけ言うと、PCを出して、接続を始めた その横で一生がサポート体勢に入る 榊原は、離れた場所で、自分の仕事をPCを出して始めた 一条は、ドラマのクランクアップまで後一日で、台本を読んでいた 力哉は、康太の側に控えて、タブレットで秘書の心得を読んでいた 静かな部屋にキーボードの音が響き渡る 康太と一生は、物凄い集中力でPCを操作する 回りの音や全てをシャットアウトした瞳の先には…数字の羅列が流れている 昼になると、康太の手が止まった… 「昼だ。腹へった…」と、呟いた その言葉で、力哉はお昼を頼んで来ます。 と、言い会議室の外に出て行った 力哉が呼びに行くと、会議室のドアがノックされ、昼食が運び込まれた 力哉は、秘書から昼食を受け取り並べ始めた PCとは反対側の場所に昼食の用意をした 「何か要るものはありますか? 隣に控えておりますので、何かあれば声を掛けて下さい、と言い会議室を後にした 「さてと、昼食うもんよー」 康太がわくわく良い匂いの方に行く 康太に吊られて全員が良い匂いの方へと向かった 弁当の蓋を開けるなり 「すげぇな、ヒレカツ弁当か 美味そうな匂いだな」と瞳を輝かせた 康太はヒレカツに齧りつき食べ始めた 一条がいただきます!と、手を合わせて食べようとした時 会議室のドアがノックもなしに開けられた ドアに入るなり、女は一条に携帯を向けた 榊原は、それに気付き一条を背中に隠した 「力哉、戸浪を呼べ」 康太が小声で話すと、力哉は内線を押し、戸浪に繋げた 「会議室に…女性が乱入して困ってるんで…」 と告げると「今行きます!」と、電話を切った 暫くして戸浪が会議室に来ると、女性が慌てて逃げようとした 戸浪の秘書がそれを取り押さえた 「昼もおちおち食えねぇのは困る しかもその女は、隼人の写真を取ろうとノックもなしに来た」 康太が言われ、戸浪は捕獲された女性に見た するとその女性は他社の制服に身を包み…どう見てもトナミ海運の社員ではなかった 「君は何故、此処にいるんですか?」 戸浪が女性を、問い詰めた 女性は、トナミの会社の友人から一条隼人が来ているのを聞いて… 写真を一枚撮ろうと押し入った…と、話した 戸浪はこの女性の処分はこちらでやりますので、昼食を、お取りください と、頭を下げた 康太は気を取り直して、昼食を食べ始めた でも一条は、ショックが大きい 康太に迷惑をかけたから… 「隼人、気にするな 食わねぇとオレが食うぞ」 一条は、康太の顔を見て泣きそうになっていた 康太は一条を、抱き締めた 「おめぇは気にしなくて良い さぁ食うぞ!うめぇぞ、食え」 一条は、昼食を食べ始めた 力哉には、どうして一条の写真を取ろうとしたのか…理解が出来なかった 「力哉、タブレット貸せ」 力哉に持たせたタブレットで、康太は一条隼人を検索し力哉に見せた 力哉は、タブレットの人間と…目の前の人間が同一人物なのが不思議だった タブレットの中の一条隼人は完璧で、大人の雰囲気だったから… 「すみません 僕はTVを見ないので知りませんでした…」 「力哉、知らないならそれで良い オレの横にいるのは、オレの子供の一条隼人だから でもな、隼人にはファンも多い芸能人だと、言う事は…頭に入れておいてくれ さぁ力哉も食え」 力哉は、昼食を食べ始めた 一条と力哉は、器が似ている だから…康太は捨てておけなかったのかも知れない 容姿ではない その器が似ているのだ 昼食を終わらせると、康太はお茶を啜った 「一生、午後は外部を片付けて、明日はメインに手を着ける キッチリ2日で、終るな」 一生に今後の予定を立てて言うと 一生も「だな。」…と同意した 「そしたら…やっと逢えるな 親父の盟友、篠崎に…」 「その前に、聡一郎を問い詰める 8月の4日に、清四郎さん達ががうちに来る前に聞かねぇとな」 問題は山積みなのだ… 昼食を終わらせ、午後からの作業を始める 眠そうな一条を康太の横の長椅子に寝かせた 力哉が一条の面倒をみる 午後5時…終業の音楽が流れる少し前に 今日の予定の分に到達し、康太は伸びをした 「さてと、帰るもんよー」 康太は立ち上がり帰り支度すると、各々帰り支度を始めた 力哉は、それを見て戸浪の秘書を呼びに行った 「康太さん…先程はすみませんでした 今、お送りする用意をして参ります… あの…うちの女性社員がTwitterで、会社に一条隼人が来たと…呟いたので… 会社の回りが凄い事になってます 車を地下に回しますので…」 と、秘書は言うと、康太は無用!と告げた 「オレは正面から出る オレの前を邪魔する奴は、薙ぎ倒してオレは行く! 隼人には逃げるような俳優にならせている訳ではない! 車を正面玄関に着けろ」 秘書は飲むしかなかった 会社の失態だ 社員の‥‥危機管理能力の低下は否めなかった 「では正面玄関に車を御用意して来ます!」 秘書はそう言い一足先に駆けていった 康太は正面玄関に着けられた車に乗り込む為に、敢えて階段を使い一階へと下りて行った 静かに怒った康太は…人を寄せ付けないオーラを放っていた 一条を隠すように、榊原と一生は歩こうとすると… 隠さなくて良い…と康太は言った 遅かれ早かれ…私生活に食い込んでくる現実だから… 康太は…一条に現実を教えるつもりだった 康太が正面玄関を出ようとすると… 物凄い人間が押し掛けて来ようとした 康太は立ちはだかりに…【退け!】と告げた 「会社の敷地に勝手に入り込んで迷惑をかける人間など、ファンと名乗る資格なし!」 と、叫んだ 自分達の常識のなさを突かれ… 押し寄せる人の波が止まった 康太が通ると、道が出来…康太は堂々と車に乗り込んだ 榊原は一条を支える様に車に乗せた 一生は力哉を先に乗せて自分も乗り込みドアを閉めた 車の中で、康太は静かに口を開いた 「隼人、お前のファンと野次馬は全く違う 見極めろ! ファンはお前を応援する者だ 大切にしろ でも野次馬は一条隼人見たさに来る輩だ お前が相手をして良い人間ではない 遅かれ早かれ、お前の私生活で対面するであろう事だ! 嫌でも…泣いても… お前は一条隼人以外の何者にもなれない こんな場面は増えてくる だから、逃げるな……解ったな隼人!」 康太は一条を抱き締めた 一条は泣いていた 康太の一条隼人のままではいられない… そんな事は解っていた それでも!それでも…康太と普通の時間を送りたい 「隼人、オレがずっと過ごせれば守ってやれる でもそれは不可能だ だから、今回は荒療治した……泣くな…」 涙で濡れた目で康太を見つめる 「康太……康太…。」 「凄い人気者になったなお前…もっと駆け上がれ もっと高みを目指せ お前の頂上は…まだそんな位置じゃねぇ お前はもっともっと登って行ける」 一条は何度も頷いた 家まで送ってもらい、車から下りると… 悠太が出て来て、四宮聡一郎が退院して来た…と告げた 一生と康太は顔を見合わせた 「今日…退院するって聞いてねぇぞ?」 康太が呟くと 「俺も聞いてねぇぜ?」と一生が返した 取り敢えず…着替えてから行くと、告げた 康太は走って部屋に駆け込み、スーツを脱いだ そして適当に服を着ると、榊原に一条を頼んで応接間に走った 応接間に行くと、四宮聡一郎が座っていた 「聡一郎!退院するなら言え! 何故勝手に帰ってくる?」 「康太も一生も忙しいんでしょ だから、動けるようになったし、帰って来ました」 四宮は、憑き物が落ちたかのように…明るく笑った 康太は、じぃぃぃぃぃ~っと四宮を見た 「康太、僕は聖とよりを戻してはいません 最期にキスしてなかったんで…しただけです 当分は恋人は要りません 康太が僕の生きる最終兵器に四宮興産をおいてったんで、当分は無理です 明日から僕も康太のサポートに回ります」 四宮は背筋を正し、毅然と言い放った 康太は…四宮を抱き締めた 「お前は…もう…解放されたんだ…」 何故そこまで…康太は言葉にならなかった 「康太、僕は自分の意思で君の場所に帰って来ました 囚われたりしてない。自分の足で歩いて 僕は康太の場所に帰って来たんです」 康太は…………そうか。 と、吐き出した その光景を…一条と力哉は、手を取り合って見ていて…四宮は… 一条が増殖したのかと、思った 「康太…僕が入院している間に… 隼人が増殖したんですか…」 四宮は見てはいけないモノを見た様な顔をした 「聡一郎、お前の目には、あれは同じに見えるのか?」 「器は同じ!あれは…もう一人の一条隼人」 康太は 、何も言わずに笑った 一生が、応接間に飛び込んで来て、四宮に抱き着いた 一生は何も言わなかったが…誰よりも喜んだのは…この男だった 「一生、ごめん。」 一生は、四宮の肩を叩くと立ち上がった 「ところで、僕には紹介してもらえないんですか?」 四宮が力哉を見ながら言う 康太は力哉を四宮の前に連れて来ると 「安西力哉だ。オレの秘書になる男だ」 と、告げた 四宮は、力哉の顔をじっと見詰め 「戸波力哉…」と呟いた 四宮の頭の中のPCが力哉のデーターを弾き出した 「聡一郎、戸波力哉なんて人間はもうこの世には存在しない…安西力哉だ お前のデータを書き換えろ」 その言葉で…康太が何故力哉を拾ったか理解出来た 「安西力哉さん 四宮聡一郎です!宜しくお願いします」 四宮は、微笑み力哉に手を差し出した 力哉は、その手を取り握手をした 「康太…今夜は僕が隼人の面倒を見ます 一生は、力哉さんの面倒を見るんで 康太は榊原と、水入らずでどうぞ。」 榊原は静かに微笑んだ 「隼人、明日は仕事か?」 康太が聞くと、一条は頷いた 「聡一郎、今日は隼人を苛めた 慰めてやってくれ」 康太が言うと、四宮は一条に手を伸ばした 「康太に苛められた?」 一条は首をふった 「さてと、飯食って、寝るもんよー 明日で戸浪の仕事が片付く」 康太はキッチンに向かった 康太がキッチンに現れると、悠太が全員のご飯をよそおった 一生がおかずを置くと、康太は食べ始めた 皆も席につき食事を始める 「悠太、明日から力哉に管理の仕事のノウハウを教えてやってくれ その後瑛兄の所に預けるから、一通り教えてやってくれ 頭は良いから、直ぐに覚える筈だ」 康太に言われ、悠太は了承する 食器を食洗機に入れ、康太は榊原と、キッチンを後にした 部屋に帰ると…康太はベットに寝そべった うとうと…眠りそうな康太を、榊原は服を脱がせた 「康太、眠たい? なら抱き締めてあげるから眠りなさい」 榊原も服を脱ぎ、康太の横に寝そべる 素肌に康太の腕が纏わりつく 胸に顔を埋め…康太は寝息を立てて…眠りに落ちた 愛する男の腕の中で眠れる幸せ… この上無い至福の時 榊原の馨りに…包まれ眠る 康太は……夜が明ける前に目が醒めた 榊原は、康太を抱き締め寝ていた クーラーのタイマーが切れて暑かった 康太は枕元からクーラーのリモコンを取ると、クーラーを作動させた 榊原にキスをする 舌が…顎から舌に降りて行く 榊原の胸の飾りを舐め… 臍にキスを落とし 更に下に降りて行く 勃ち上がった性器は無視して… 腰骨を舐めると… 榊原の体が跳ねた 榊原の腕が…康太へ伸ばされる その手を避け、康太は榊原の性器に愛撫の雨を降らせた 「ぁ…康太…君は本当に寝込みを襲うのが好きですね」 康太の脇に手を挟むと、榊原は康太を引き上げ体の上に乗せた 「欲しくなったの?」 康太は頷いた 「じゃあ…僕を受け入れる…お口を、自分の指で解して見せて」 榊原は、康太の指を舐めた 康太に見せつける様に、康太を見詰め 康太の指を舐めた 康太は座ったまま、奥に指を忍ばせた そんな康太をうつ伏せにして、腰を高く上げさせ…康太の指を穴に導いた 康太の穴に、康太の指が忍び込む クチャクチャと、音を立てて…挿入を繰り返すと、赤く捲れた内部が蠢いて見えた 康太の穴を押し開き 「もっと指を動かして…」と、注文を入れた 康太が刹那げに鳴く 康太の指の上に榊原の指を入れて、掻き回す と、康太は刺激を求めて腰を揺らした 「伊織…いくっ…」 康太がねだると、榊原は康太を上に乗せた 下から康太を貫く 康太は榊原に抱き着くが…… 汗で濡れる体が滑る… 康太が育てたぺニスが康太の中を犯す… 一滴残らず康太の中へ注ぎ込み…榊原は果てた 榊原の上で康太は幸せそうに擦り寄った 「ねぇ康太…通販でバイブ買ったから…使って良い?」 康太はふるふる首をふった 榊原は、枕元に手を伸ばし…榊原サイズのバイブを手に取った 康太の体が逃げようとしたが… 押さえつけ…脚を開いた 「ゃ…伊織…ゃめ …」 康太が哀願する 榊原は、まだ開いて白濁を流す…康太の穴の中へ、男性器をした玩具を挿入させた 康太の中へ挿入して、馴染んで蠢いて来た頃 スイッチを入れた ヴぃぃ~ぃ~~~~ぃ~~~ん~ と震え 康太の内壁を犯した 機械的な刺激が康太を犯す 康太は逃げようと腰を動かすと…更に深く玩具に犯された 康太の良い場所を…玩具が擦る 康太は喘ぎっぱなしで… 泣き出した… 榊原は、バイブを抜くと、康太を貫いた 康太の中が締まる 「康太…機嫌を直して…」 抱き締めて接吻の雨を降らせると 康太は榊原に抱き着き…果てた 康太をバスルームに連れて行っても 康太はご機嫌ななめだった 「バイブは嫌だった?」 康太は顔を赤くした 「終わらない刺激は…キツいかんな…」 「康太の下のお口は、美味しそうに食べてたよ」 寝込みを襲った代償がこれだなんて… やっぱ、榊原を拘束して…犯ってやる ……と、次に寝込みを襲う算段をしたのは……榊原は知らない 少し眠り、目覚めた時には…康太はいなかった 榊原は、慌てて身支度をしてキッチンに行った すると…康太はいなかった 悠太に康太は何処ですか? と、聞いたら、瑛兄に拉致られた…と告げた 瑛太では文句は言えなかった 応接間を覗くと…そこに座る二人がいた 応接間に榊原が入って来るのを、康太が気付いた 「伊織…おはよ。」 瑛太は真剣な顔で康太を見ていた 何かあったのは…一目瞭然だった 「何かあったんですか…?」 榊原が聞くと…康太は座れ…と言った 「伊織君、康太はトナミ海運の仕事、受けて来たでしょう?」 瑛太の言葉で…昨日の康太を思い起こす 確かに…康太は飛鳥井で格安にしてやる…と、言っていた 「はい!」 榊原が答えると…瑛太は困った顔をした 「康太が詠んだ設計図と謂うのは、康太の頭の中の絵図を寸分違わす引かないと…意味がないんですよ 今の飛鳥井のビルを建てる時がそうでした 康太が描く未来と違うと…そこでアウトなんですよ」 榊原は、言葉をなくした でも康太は、榊原にタブレット持って来てくれと頼んだ 頼まれ、榊原は康太のタブレットを取りに行った 榊原は、康太のタブレットを持ってくると 康太に渡した 康太はタブレットを操作して、目的のモノを見付けると瑛太に渡した 「瑛兄、今はこんな便利な武器があるかんな! 飛鳥井を建てた時より楽に仕上がる オレの絵図は此処に入れといた 後で瑛兄のPCへ送る それから設計を起こせば良い」 瑛太はタブレットの中のトナミ海運の画像を眺めた 「工事は誰にやらせる?」 「棟梁の本間元三と九頭竜遼一 あれを頭に据えて…飛鳥井の最高傑作を作らせる」 康太が言うと、瑛太は嫌な顔をした 「康太…あの二人は…」 犬猿の仲だ…と、言おうとしたのを康太は遮った 「あの二人は同じ器なんだよ 決して意志を曲げねぇ だから喧嘩になるんだよ! でもな瑛兄、社運をかけてる…だから嫌でも協力しろ! 飛鳥井康太からの指名だ! 絶対に失敗は出来ない仕事だ! 二人で完遂しろ! って言えば、二人は我慢して協力する そのうち互いの器を目にして…実力を認め合う あの二人は好敵手になれる」 だからやれ!と康太の目が瑛太に訴えていた 瑛太は降参するしかなかった 飛鳥井源右衛門の目を引き継いだ者だから 康太の目に…何が見えているのか… 知りたい時がある…その瞳には… 未来を捉える…他のビジョンか写し出されているのだろう… 「遼一は、飛鳥井を支える屋台骨になる アイツは人を束ねるのが上手い 人はアイツの為なら無理を承知で動く 飛鳥井を支えて行くのは遼一だ そこを見極めなければ…遼一は去る 棟梁の座に胡座をかいてたら足元を救われるってのを教えとくべきなんだよ 何かあったら…棟梁を切れ!」 瑛太は…飲むしかなかった 「飛鳥井はお盆返上だ… 今年中に完成させて欲しいと依頼が来ました!」 少しだけ弟に恨み言を言う 「瑛兄…オレが気付いてないと思った?」 最近…瑛太は皆と食事を取る… それは部屋には…家族がいないからだ… 今は孤独な瑛太しか目に写らなかった… 「嫌…お前だからな…」 瑛太は淋しげに笑った 選択肢が…康太優先に働けば…自然と歪みは出るのだ… 朝食を終え、着替えて戸浪の車を待ってると ご近所の兵藤貴史が「何処行くんだよ?」と、聞いてきた 康太はもったいつけて「聞きてぇか?」と、焦らした 聞きてぇから、早く話せ!と、怒ると…意外な名前を康太から聞くこととなった 「トナミ海運の会社に行くんだよ」 兵藤はトナミ海運と、聞き目の色を変えた 「おめぇも行くか?今日が最終日だ 行くなら今日しかねぇぞ」 康太が言うと兵藤は、待ってろ!と言い置き家に帰っていった 「康太…今の兵藤?」 家から出て来た榊原は、兵藤の姿にご近所だったな…と、思い浮かべた 「今日は貴史も来るらしい」 「釣ったんですね…」 榊原が優しく康太を見た 「パクっとな。」 康太は笑った 家の中から一生と、四宮が出て来て車を待つ すると、スーツ姿の兵藤貴史が現れ…二人は絶句した 「今日は何故かご近所の貴史くんが一緒だ」 康太は笑って一生と四宮に言った 「貴史、此方にいるのが、四宮興産次期社長、四宮聡一郎だ 四宮はトナミと共同して…デカくなんぜ」 最初の布石を打て…と、康太は告げてる 兵藤は、四宮の前に直ると御辞儀をした 「何時か君達の役に立てる日が来るのを、待ってて下さい!」……と。 その顔付きは政治家だった 学校で見る兵藤貴史ではなく、日本を背負って立つ、兵藤貴史だった 康太の目には…この姿が見えていたと言うのか… 戸浪の秘書のステップワゴンが到着すると、車に乗り込んだ 秘書の田代は、初めて目にする兵藤に、目を奪われた 康太は気付き、兵藤を紹介した 「兵藤丈一郎を祖父に持つ、兵藤貴史 その姿は父より祖父に近い 近い将来、貴史は日本を背負って立つ男となる! 知り合いになってて損はない男だ」……と。 康太の言葉で秘書の田代は納得した トナミ海運の会社に着くと、康太は無言で歩き始めた 他を寄せ付けない…毅然とした態度で歩く 昨日の会議室に通されると… 暫し休憩 秘書の田代は、珈琲の差し入れを持って会議室に入ってきた 「田代さん 貴史を若旦那に会わせてくれ そして海運の仕事ってのを教えてやってくれ はっきり言って邪魔だ!」 連れて来たのは康太の癖に…散々な言われようなのに…兵藤は、笑っていた 「貴史、日本を支えるトップの海運会社を目にする機会は…そうそうねぇ おめぇの目で、見て来い 政治家は、そんな人の上に立つ おめぇは肌で知って市民の立場に寄り添う兵藤丈一郎の孫だ!思い知れ」 兵藤は、笑って 「んとに、おめぇは手厳しい…」と、降参のポーズをした 田代は「お連れします。ではご一緒に」と兵藤を促し会議室を出て行った 珈琲を、飲み終えると、康太は作業に入った 今日は一生ではなく四宮 生きてるPCの威名を持つ四宮に最後の仕上げを手伝わせる 康太は気の遠くなる作業を黙々と始めた 昼食が差し入れられても 黙々と食べ 食べ終わると直ぐに作業を始め そして最後の砦までたどり着いた 康太は安堵の笑みを浮かべた ホストコンピューターの最後の砦のパスワードは、決めていた 「Rikiya」と打つと ホストコンピューターは、音を立てて…読み込みを始めた 長い時間文字の羅列を長し 最後に画面に「Rikiya」の文字が映し出されると、画面が消えた うぃぃぃんと言う機械音を響かせホストコンピューターが立ち上がる 康太はcheckをすると、総てが康太の思い通りの軌道を描いていた 「終了だ…一生、若旦那を呼んでこい」 康太に言われ、戸浪海里を呼びに行くと、兵藤は社長と仲良く談笑していた 一生は、総て完遂です!と告げると 戸浪は、今行きます…と、腰を上げた 会議室に行くと、康太は立ち上がって戸浪を待っていた 「作業は総て完遂した オレの持てる総ての力を、注ぎ込んだ SYSTEMも分散化した これでトナミの情報漏洩も心配ない 危機状態に陥らねばSYSTEMはこのまま時を刻み稼働する もしも危機状態に突入したとしたら…最終パスワードがねぇと入れねぇ!」 康太の意図を戸浪を…知る事となる 「そのキーワードは、これだ!無くさないように閉まっておいて下さい」 康太は戸浪に作製したSYSTEMとパスワード 総てを書いた書類を渡した それを目にして…戸浪は一筋の涙を流した 戸浪の目にしたパスワードは「 Rikiya 」と書かれていた 戸浪力哉を忘れるな…と言うメッセージなのだろう 「康太君……ありがとう 私は絶対に忘れないよ このパスワードも…力哉も!」 康太は、ならば良い…と笑った 「若旦那、オレがソレを引き合わせた意味も解るな?」 戸浪は兵藤に目をやる 「出逢いは必然的だ この先を築く礎になれば良い…」 康太の目は遥か先を捉えて…先を詠む 兵藤貴史は、祖父をも越える政治家になると、保証したようなもんだった 「若旦那、コイツは、オレの誇りだ あんたの力にもなる時が必ずや来る!」 康太が窓の外から海を眺め、言う 遥か水平線の向こうに未来が見えているかのように… 「さてと、帰るか」 康太は榊原の所まで行って、抱き着いた 「疲れた伊織…」 恋人に甘える姿は子供の様なのに… 見詰める先は…果てしない 榊原は、康太を胸に抱き 二人は…一対の形になる 見ている方が妬ける位に…… 兵藤は、一生と四宮の所へ行き 「暑苦しくねぇかアレ?」と、聞いた 少しだけ嫉妬も含め… 一生は「此処はクーラーが効いてるから良いが…外でやったら俺は殴る!」と、宣言した 四宮は…一生…と、たしなめた 「康太が動かない限り無用だが…あまり暑苦しいと…腹が立つ」 一生が言うと……四宮は「独り者の僻み」…と呟いた 一生がキィーっと怒る 四宮は笑って一生の肩を叩いた 一生は笑って四宮の肩にもたれかかった 「さてと、帰るもんよー」 康太が帰宅を告げると、各々が帰り支度を始めた 戸浪海里は、それを待っていた 「若旦那、この書類を田代に渡せ このSYSTEMのより詳細だ そして下手に入ろうとする輩がいたら…罠が張ってある それら総てが此処に書いてある」 康太は分厚い書類を戸浪に渡した 「戸浪海里さん 飛鳥井建設に仕事の御依頼をありがとう御座いました オレの頭の中の青写真は…これだ」 康太は書類の一番上に…印刷した紙を乗せた そこには…青い空に青く聳え立つトナミ海運の写真があった 窓はガラス張りで、海の碧さと雲の白さが際立って映っていた 海を司る神がビルの中央にオブジェで飾ってあり…海運会社に相応しい面構えだった 「それを飛鳥井の精鋭が作る」 戸浪海里は、何も言う事が出来なかった 「オレの仕事は終わった これからも共に在る事を願って…」 康太は戸浪に手を差し出した 戸浪海里は康太の手を取った 「お疲れ様でした 3日後には白馬でしたね 白馬の飛鳥井の厩舎に行かれるのでしたね」 「あぁ、白馬には若旦那ん所に行った兄弟の馬がいる 秋にはデビュー戦だ」 康太は微笑んだ 「このお礼は何時か君に返します」 「飛鳥井に仕事を入れたからチャラで良いさ。オレも秘書をもらったしな」 「お送りします。また飛鳥井に祖父と伺います」 「あぁ。じぃちゃんも喜ぶ」 戸浪は康太の手を離さすと、出口を開けた 自ら送っていく気だった 康太は戸浪海里に自宅まで送ってもらい… 兵藤は康太の家の前で別れた 何か…濃い1週間で…康太はヘトヘトだった

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